第11話 「宿がない!?☆リスナー会議で今夜の寝床を決めるサナ」
屋根から降りたサナは、路地の端でぴたりと立ち止まった。
「……あれ?」
視聴者欄がざわつく。
『どうした?』
『フリーズした?』
『天然センサー発動』
サナはきょろきょろと周囲を見回し、首を傾げた。
「私……今日、宿……取ってましたっけ?」
――沈黙、0.5秒。
『取ってないに一票』
『絶対取ってない』
『課金バフの前に宿を確保しろ』
サナ、ぽんっと手を打つ。
「あっ!そうだ!今日、街に着いてすぐ事件でした☆」
治安隊員が遠くから叫ぶ。
「君!宿は――」
「だいじょうぶですっ!今、皆さんに聞いてます!」
『治安隊を視聴者扱いするなwww』
『公式に相談すなwww』
サナは画面(空)に向かって真剣な顔。
「えっとですね……条件としては――
①安全
②安い
③できればご飯つき
④幽霊は……できれば、いない方向で!」
『最後が一番無理』
『この街で幽霊回避は高難度』
『逆にフラグ立ててくスタイル』
コメントが怒涛の勢いで流れる。
『酒場の二階』
『治安隊の詰所』
『教会』
『野宿(課金で守る)』
「野宿!?え、私……段ボールとか必要ですか?」
『異世界に段ボールはない』
『ホームレス配信やめろ』
サナ、しばし悩む。
「でも酒場って……昨日みたいに、また注目されたりしません?」
『もう手遅れ』
『街で一番有名』
『課金無双の子』
サナ、照れる。
「えへへ……有名税、取られませんよね?」
――その時。
『桃DEブー:酒場はやめとけ。目立つ。治安隊詰所の仮眠室が一番安全だ』
コメント欄が、一瞬、静まる。
『急に冷静』
『ガチ恋勢の理性』
『もやし生活の重み』
サナは画面に向かって、ぱあっと笑った。
「桃DEブーさん!えっ、治安隊さんのところ、泊めてもらえるんですか?」
背後で、治安隊長がため息をついた。
「……話は聞こえていた。今夜だけだ。」
『公式許可出たwww』
『詰所公認配信』
『治安隊が折れた』
サナは深く頭を下げる。
「ありがとうございますっ☆皆さんのおかげで、今夜も生存です!」
『生存報告www』
『泊まる場所もリスナー頼り』
サナは歩き出しながら、ふと小声で呟く。
「……ねぇ皆。治安隊さんのベッドって…ちゃんと、柔らかいですか?」
『知らんwww』
『そこ気にする!?』
『天然すぎる』
画面いっぱいに笑いが溢れる中、
無事、今夜の寝床を確保した。




