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VTuber皆桃サナの異世界Live  作者: 海木雷


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10/13

第10話 「制限時間つき無双☆課金切れまで全力パルクール」

――残り 2:28。


スキルウィンドウの数字がちくちく減っていくのを見て、

サナは一瞬だけ固まり――


次の瞬間、ぱっといつもの配信スマイルに切り替わった。


「……え、あ、あははっ☆えーっと皆さん、聞こえました?どうやらこのバフ、“期間限定セール”みたいですっ!」


視聴者欄、即ツッコミ。


『期間限定www』

『天然で言うなwww』

『サナさん前向きすぎる』

『残り時間を告知するVtuber』


治安隊員たちが呆然としながら近づく。


「き、君……大丈夫か?今の男は――」


「は、はいっ!えっと……さっきの人、ちょっと影が多めで怖かったですけど……でも皆さんがいたので!たぶん!大丈夫です!」


たぶん、で済ますな、と隊員たちは心の中で叫んだ。


そのとき――


――【強化:残り 2:05】


サナがはっとして、足元を見下ろす。


「あっ!時間減ってる!ねぇねぇ皆、これって……

 私、今のうちに逃げたほうがいいやつですよね?」


『今気づいたのかよwww』

『天然主人公』

『逃走フェーズ入ります』

『サナ、走れ!!』


サナは少し考えてから、うん、と頷いた。


「じゃあ、走りますっ☆治安隊さん、あとよろしくお願いします!」


「え!?ちょ、待――」


言い終わる前に、

サナは光を纏ったまま――


ダッ!!


「速っ!?!?」


治安隊員の視界から、

虹色の残光を引きながら駆け抜けていく少女。


(わ、私……足、速くなってる!?えっ、なにこれ! めっちゃ楽しい!!)


路地を曲がり、屋根を跳び、木箱を踏み台にするたび、コメント欄が実況状態になる。


『パルクール配信www』

『課金アスレチック』

『桃DEブー見てるか!?推しが跳んでるぞ!!』


サナは走りながら、ふと思い出したように空を見上げる。


「あ、そうだ……桃DEブーさん、ほんとに無理しないでくださいね?もやし、栄養なさそうなので……!」


『推しが健康管理してくる』

『ガチ恋勢、泣いてるぞ』

『もやしに卵つけろ』


――【強化:残り 0:45】


サナの光が、少しずつ淡くなっていく。


(あ、これ……そろそろ終わる……)


彼女は屋根の上で立ち止まり、街を見下ろした。


治安隊の灯り、ざわめく人々、

そして――自分を見守る無数の“視線”。


胸が、少しだけ熱くなる。


「……私、さっきまで怖くて……震えてばっかだったのに……」


サナは、ぎゅっと拳を握った。


「でも……皆がいたから、立てました☆」


――【強化:残り 0:05】


最後の光が、ふわりと弾けて消える。


いつもの、少し頼りない身体感覚。


「あ、戻った……。……よしっ」


サナは深呼吸して、にっこり笑った。


「じゃあ皆さん!今日はここまでにしますね☆

 次は……“課金なしでも強くなる方法”、考えます!」


視聴者欄、拍手と草の洪水。


『次回予告www』

『成長フラグ立った』

『桃DEブー、伝説になった日』


そして――

どこか、街の闇の奥。


リグは歯噛みしながら、呟いていた。


「……次は……逃げられねぇぞ……」


だがその声は、

今はまだ、届かない。

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