一章第四話【序盤の野原】
とりあえず今日一日を乗り越えるためにはモンスターを倒さなければならない。
りょうとミアは街の外へ歩き出した。
外は街と違い野原が広がっており自然豊かだ。
ところどころに野ウサギのようなものや、異世界独特の生き物が歩いている。
「さすがにこの武器は困るよ!」
「錆びた剣と苔が生えた杖だからな」
ミアは怒りをあらわにしている。
少し顔が赤く膨れ上がっており、地面を足で叩きつける。
「全然戦い方知らないんだが…倒せるのか……?」
「まぁ、やるしかないよ……」
俺達は元の世界で戦うこともなく、のうのうと生きている。
戦えるわけがないが仕方がない。
「あ! スライム!」
ミアはスライムの方に指を差した。
スライムは1体で日向ごっこをしているように思える。
半透明な体をプルプル言わせ、まるでわらび餅のようだ。
狂暴的には見えないが、りょうたちを襲ったのはスライムたちだ。
りょうは足を震えながら錆びた剣を手に持ち構えた。
スライムはこちらに気づき飛びながら俺たちの方に向かってきた。
「この杖貸して!」
「わかった」
「とりゃぁぁぁ」
杖がスライムに当たりスライムが散乱した。
倒した後には小さな半透明な宝石が落ちていた。
「綺麗だね! これを売ればお金が稼げるのかな?」
「多分そうなのかも」
「じゃんじゃん倒していこー!」
「街で襲ってきたスライムは凶暴だったのにここのスライムはおとなしいな」
「あ、確かに! さっきのスライムより弱いね!」
「こ、これなら俺でも倒せそうかな」
「あっちにまたスライム! リョウ倒しとく?」
「あぁミアにまかせきりなのはよくないしな。びびってばかりで申し訳ない」
りょうは持っていた錆びた剣を振りかざした。
スライムは思っている以上に柔らかく空気を切っているのかと思うほど感触がない。
スライムは弾け飛び半透明な宝石がスライム分落ちていた。
「リョウ! すごいじゃん!」
「ミアの方が凄いよ」
俺達は純粋に異世界を楽しんでいる。
今だけ漫画や小説の世界のようだった。
りょうとミアは湧いてくるスライムをどんどんたおしていった。
「そうえばなんで杖で殴ってるの? ナイフの方が強いと思うのだが」
「確かに護身用ナイフの方が強いけどなんか杖使ってたらいつか魔法使えそうじゃない?」
「なるほど。今のところ物理だけど」
「あはは! でも最初はそんなもんじゃない?」
「たしかにね。そろそろ街に戻ろうか」
「そうだね!」
りょうは集めたスライムの宝石をパーカーのポケットに入れ、りょうとミアは街の方の歩き出した。
街の住民たちは笑顔でりょうとミアのほうに駆け寄ってきた。
「王様から聞いたよ。あんたら勇者なんだってね。すごいじゃない」
「え、あありがとうございます」
「そんな敬語なんて使わないでちょうだい! 勇者様なんだから」
先ほどの住民たちの態度が手のひらくるくるすぎてびっくりした。
まぁずっと変な目で見られるのは勘弁だから助かったかもしれない。
「えへへみんなありがとう! ところでこのスライムから出た宝石を売りたいんだけどどこかわかる?」
「えぇこっから南の方袋の看板があるからいってきな。」
「教えてくれてありがとう! リョウいこっか!」
ミアはりょうの左手を繋ぎとことこと元気に南の方へ走り出した。
りょうの手は手汗でびっしょりで少してれくさそうな表情をしていた。
「どんなところか楽しみだね!」
「そ、そ、そうだね」
「ん? 顔ちょっと赤い?」
「え、えあそうかな……その……手離してくれないかな」
「え、なんで? 迷子になるかなって! なんかリョウってすぐ迷子になりそう!」
「こ、子供じゃないんだし大丈夫だよ!」
「えぇ身長低いしビビリだし子供見たいでかわいいじゃん!」
「うぅ……低身長……ビビリ……」
「あ、えと……ほ、褒めてるんだよ! あ、ほら! 看板みえたしあれじゃない?」
りょうはちょっとショックを受けてるあいだに売り場についたようだ。
その建物は木造でものすごくおんぼろの家のようだった。
「お、お邪魔します」
「んん? あぁ王がいってた勇者か……いらっしゃい」
「スライムから出た宝石売りにきました!」
「はいはい……えぇとスライムの欠片が十個か。状態は良くも悪くもないな。ほら一つ銅貨一枚で合計銅貨10枚だ」
「ありがとう! けどまだ宿屋のお金足りないね」
「嬢ちゃんここに宿屋なんてないよ。誰もこんな街に誰も来んよ。観光名所もないから観光客もこない。モンスターが弱すぎて冒険者ですら来ない。そんな街に宿屋なんて建ててもすぐ潰れる」
「まじですか……泊まれるとこないのですね……」
「城に泊まらないんだな。あの王だからしかたないな」
「そ、そんな……なんかこの街じゃなくてもいいから一番近い宿屋ってある?」
「ここらへんなんもないから冒険者らしく野宿だな」
「せっかく街にいるのに?」
「まぁ勇者やるんだったら野宿はザラだろ。モンスターも弱いし初野宿にはピッタリじゃないか? 勇者のいた世界のことは知らんがそんなここの世界は甘くないんだぜ」
りょうとミアは宿屋がないことを聞き肩を下ろした。
こういうのは宿屋があって当たり前ではないのか。
王がいる街な癖にどうしてもこんな人気がないのか。
王が住んでるから賑わってたりするもんだと思うが。
「ん? 嬢ちゃん杖を持ってるってことは魔法を使いたいのか」
「そう! 魔法憧れなんだよね!」
「そんな勇者の嬢ちゃんこの初級魔法の書かれたメモがあるんだがいるか?」
「え! いいの?!」
「呪文を知らないと魔法なんて撃てないからな。銅貨十枚でいいぜ? 呪文書は本来、金貨数十枚だが特別だからな?」
「ほとんど金がなくなるけどミアが強くなれるなら払うよ。魔法どんなのかみたいし」
「えぇ……いや、いいよ!いいよ!」
「俺たちが強くなるには必要だ。またモンスター倒そう」
「まいど! またこいよ」
「ありがとうございます」
りょうとミアは売り場を出てまた街の方まで歩いていった。
「えぇ……っとなんだこれ読めん」
初級魔法の書かれたメモはりょうには読めない言語で書かれていた。
言語変換機の機能には相手が喋る声がわかるようにはしてくれるが文字は変換されるわけではないようだ。
文字が読めないと意味がないじゃないか。
「あーまぁなんとかなるよ!」
ミアはスライムに紙を見ながら呪文を唱え出した。
「ワンウォーター!」
ミアの持っている杖の先に水の塊ができていく。
水の塊の周りはどんどん水に変わっていく。
手のひらサイズの水の塊がスライムに向かって飛んでいった。
スライムは弾け飛び、スライムのは破片が散乱する。
「やった! 魔法だしてスライムをやったよ!」
無邪気に笑うミアの姿は可愛らしい。
先ほどたくさんのスライムを殺した時はこんなに喜んでなかったのに、まるで初めて倒したかのような反応だ。
「どうやって魔法をうったんだ? なんも読めなかったんだけど」
「なんか〜それっぽいことをいってみたらでちゃった!」
ミアが魔法の言葉を発していた。
もしかしてゲームと同じ名前の魔法だから言えたのだろうか?
言葉も浮かんでくるなんて、すごいものだ。
俺も杖があれば魔法がうてるのだろうか?
「もしかしてミアって……」
「あ! また、スライム! 今度は二体いるよ!」
わらわらとスライムが集まっていく、街の様なことにはならないように素早く倒していく。
さっきよりスライムを倒す効率が良くなってきてりょうとミアはパキパキと倒せるようになってきた。
もしかしたら自分もミアみたいに魔法が打てるのでは?
ミアが呪文を唱えてるから呪文の言葉がわかる。
ミアに杖借りて魔法だしてみようかな。
「ミア、ちょっと杖借りてもいい? ミア魔法見てたら俺も魔法使ってみたくなって」
「いいよ! やってみて!」
ミアはりょうに杖を貸し、スライムに杖を向けて呪文を唱えた。
「ワンウォーター……ってあれ? なんもでないんだけど」
りょうの杖から水魔法がですはずが水一滴もでずにスライムにはいっさいダメージがはいってなさそうだった。
「うーんもしかしてリョウにはこの魔法合わないのかも」
「俺って魔法適正ないのか。まじかぁせっかく異世界きたのに」
「水魔法が合わないだけだからほかだったら使えるんじゃない?」
「そうなのかなぁ。魔力がないのかも」
「あーまぁそれもあるかもしれない!」
「じゃあ無理か……」
「まだ魔法を諦めるのもはやいよ!」
「いや、俺魔法唱えなくていいよ。俺は剣で斬るよ。魔法使い二人はパーティ的にもバランス悪いしね」
「たしかに! どんどんバシバシ倒していこ!」
モンスターを倒しているうちに外は夕方になっておりそろそろ暗くなりそうだった。
「そろそろ夜だね! 泊まるとこないし野宿だ!」
「そうだね。焚き火しないとだよねどうしようか」
「あっちに森あるからそっちで木とか回収しよ! 暗くなる前に木とってこないとね!」
りょうとミアは焚き火のための木を手に入れるために森の中へ入っていった。
森は木が生い茂り木でさっきより暗く感じた。
「新しいモンスターだ。兎のようで可愛いけどモンスターだよな。倒さないと」
りょうが見たのは少し普通のウサギより大きく、おでこに長い角が生えている。
可愛いと思ってもモンスターなので両者なく倒そうとする。
ミアが魔法を出そうとする瞬間────
「痛い、痛い痛い痛い!!」
ミアの右足に兎の角が刺さりミアの血がポタポタしたっており、流れている。
地面が赤く染まっていく。
兎の角は白かったのが血で赤く染まっていた。
りょうはミアの怪我をみて叫びそうだったが声すらでなかった。
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。
剣を振り出したいが怖くて腕と足が動かない。
ミアは叫び、この世で味わえないほどの声を出している。
兎はミアの足に刺さった角を抜きこちらに走って俺の左足にも角が刺さった。
痛い痛い痛い痛い痛い熱い熱い熱い熱い熱い熱い。
言葉に表せないほどの痛さふらつきながらも俺は立つ。
痛みに耐えながら剣を持ち、力を振り絞ってりょうの足に刺さっている兎を剣を振りかざす。
死んだのか兎はピクリともしなくなった。
それでも痛いのは変わらない。
ミアは倒れているがまだ息はあり、足の部分が熱い。
りょうは足を引きずりながらミアを運び森の外に出ようとした。
だが力が抜けてりょうも倒れてしまった────




