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全てを救うには勇者が足りない!  作者: 杞憂 優斗
一章【弱い自分】
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一章二話【異世界少女】

 瞬きした瞬間周りのスライムが弾け飛んだ。

 スライムの少女が驚き焦った顔でそそくさと逃げていった。

 黒髪の少女はこちらを見て近づき声をかけてきた。


「ふぅ……溶けなくて良かったね!」


 黒髪の少女は顔についたスライムの飛び散った液体を手で拭き、笑顔を絶やさないでしゃがみこんでジッとこちらを見た。

 一瞬だけ見えた時は黒髪としか認識できなかったが、とても可愛らしい少女だ。

 艷やかなでサラサラの肩より長い髪、きれいな黒目、そして、目がぱっちり二重可愛い。

 服は人生と書かれた黄ばんだ白の Tシャツ、青の短パンに靴を履かず裸足。

 普通ならだっさい服装の可愛い女の子だと思うだけだが、こんな危機的状況で助けてくれたのは女神に見え

る。


「怪我は大丈夫?」


「え、あぁ……大丈夫です。助けていただきありがとうございます」


 りょうは動揺しつつもその姿に見惚れている間に黒髪の少女はりょうのこと心配して慌てて返事をする。

 黒髪の少女は俺の様子を見ながら話し出す。


「ここじゃあまり見ない衣装だね?」


「あ、そっかこの世界じゃそうか……確かにそうかもしれないですね」


「なるほど! あ、スライム! とにかく死なないように気をつけてね!」


 黒髪の少女は笑顔で手を振って逃げそびれたスライムもナイフで切り裂きスライムは弾け飛んだ。

 

「また汚れちゃった……着替えないのに……まぁいっか!」


 黒髪の少女はりょうと違う方向へと走り去っていった。

 

 異世界人すげぇな。ん? 異世界人?

 この世界に入ってから住民の声が聞き取れなかったはず……それはりょうの住んでる世界とこの世界では言語が違うからわからなかったはずだ。

 だけどあの黒髪の少女の言葉がわかった。

 あの服装といいもしかしてりょうと同じ世界……日本からきたのでは?

 確認したかったがもうあの黒髪の少女はいない。

 もしりょうと同じ日本から来たら仲良くできたかもしれない。


「はぁ……やってしまった……」


 りょうはため息をしながらあの黒髪の少女を探すことにした。

 どこの方向に行ったかってぐらいしかなく、住民に聞き込むにも言葉がわからないので聞いても意味がない。

 言語がわかってもりょうをゴミのような目で見てくる目線がいたい。

 りょうは黒髪の少女が走っていったほうこうへ歩いていった。


「お腹すいたな……」


 りょうは昼ごはんをまだ食ってなかったのかお腹がすいてしまった。

 普段ならお腹はそんなにすかないのだが突然、フリオンに似た世界に飛ばされ死にかけたのだからしかたない。

 歩いているうちにフリオンでは有名の噴水にたどりついた。

 この噴水は変わらないんだな。

 噴水のちかくを見渡すと黒髪の少女が笑顔で兎と(たわむ)れていた。


「……あ! さっきの人だよね? やっほー!」


 黒髪の少女はりょうから喋りかけるまえに喋りかけてきた。


「あの時は助けていただきありがとうございました」


「いやいや全然いいよ! スライム思ったより強くてびっくりした!」


「あの、突然なんですけど聞きたいことがあるのですがいいですか?」


「? どうしたの?」


「この世界の住民ではないですよね?」


「え?! よく分かったね! も、もしかして転移してきた人!?」


「俺は日本から来ました。あなたも日本からですか?」

 

「そうだよ! 私もだよ! まさかほかにもいたなんてびっくり!」

 

 きてみてよかった。

 でも日本から来た転移者がくるなんて、正直びっくりした。

 ほかの被害者がいるなんて。

 黒髪の少女は異世界に来てこんなスライムだらけの状況にあって最悪な状況だと思う。

 だが、りょうにとっては死にかけたとはいえ同じ日本人がいて安心した。


「はい……突然、世界に飛ばされたばかりで……あのとき助けていただきありがとうございます」


「そうなんだ! 私も突然飛ばされてびっくりしたんだよね! そんなお礼言わなくても!」


 黒髪の少女は明るく会話をする。

 とにかく境遇の人を見つけて安心した。


「もしよかったら一緒に行動しない? 私一人で不安だったし!」


 普段の俺なら初対面の少女についていくのはためらうがだが助けてくれた救世主だし同じ日本人なると話はべつだ。


「いいですよ。同じ境遇の人がいて安心しました。」


 そう答えると黒髪の少女は目を輝かせて笑顔で両手で俺の手を触った。


「本当? ありがとう! ありがとう!」


 キモいとは思うがこんなことされたら、陰キャのりょうは勘違いしてしまうではないか。

 そんな気軽に触るのは辞めていただきたい。

 変なやつに騙されないか心配なぐらい元気で明るい。

 まるで子犬のようだ。

 黒髪の少女の心配をしつつ、噴水の前で二人で喋った。

 黒髪の少女はどんどん話しかけてくれる。

 無言は無言で厳しいのでとても助かった。

 

「ええと、名前いってなかったよね? 始めまして私の名前はミア! よろしくね! あなたの名前は?」


「俺の名前は、内木ないき りょうです」


 ミアは少し不思議そうに聞いていた。

 そんな変な名前ではないとおもうのだが。

 心配しつつ、ミアは話し続ける。


「リョウでいいよね! そんな丁寧に話さなくていいよ! 同じ日本人だし!」


 初対、尚且つ俺と街を救ってくれた救世主に敬語を外すなんて出来なかったがミアが外してと言ったので外す。


「わかった。じゃあ敬語外しますね」


「敬語使ってるじゃん! だめだよ!」


「あ、そっか……ご、ごめん」


「リョウは真面目だね!」


 ミアは兎を撫でながらニコニコと喋った。


「へへ〜ナイフ持っててよかった!」


「よくナイフを持ってたな」


「護身用なんだよね!」


「え? 護身用? ここにくる前から持ってたの?」


「うん!」


 ミアが持っていたナイフはサバイバルナイフのようで刃の部分が赤紫に輝いている。

 照れながらナイフを見せつける。

  騙されそうと思ったが騙したら命がなさそうだ。

 銃刀法違反に引っかかりそうなナイフだが、ミアのおかげで助かったのでこれ以上突っ込まないようにした。


「これからどうしようか。金は持ってないし、言葉が分からないから助けてもらうこともできない」


「うーん」


 そんな事を話していると近くの人がミアに声をかけた。

 住民が紙袋いっぱいのパンをミアに渡す。

 何を言っているかは分からないが、スライムの事でミアに感謝をしているように見えた。

 それにミアはニコニコの笑顔でお礼を伝わるるようにお辞儀をしている。  


「パン貰ったやった!」


「それはミアが街の人を助けたからな」


「そんな大したことはしてないけどね! リョウ! あそこの噴水の近くのベンチで一緒に食べよ! お腹すいた!」


「いいけど俺も食べていいの?」


「いいの! みんなで食べたほうがおいしいし、仲間だからね!」


「本当に?ありがとう」


 笑顔でミアは噴水のベンチに指を差した。

 住民がミアにあげたパンなのに俺が食べるのもおかしな話だが、ミアがいいなら俺もお腹空いてるし一緒に食うことにした。


 りょうとミアはベンチに腰をかける。

 ミアは紙袋からパンを出し、フランスパンより長いパンを半分こした。

 半分にしたパンを俺に渡す。


「あはは、半分にしてもこのパンでかいね」


「そうですね。二人で食べ切れるか心配」


「でも美味しそうだよ? あーん」


「なんであーんするんだ! しなくていいから自分で食べれるから」


「そっか……わかった。ごめんリョウ……」


「なんかご、ごめん」


「ミアの気持ちは嬉しい。いただきます」


「何これうま!」


「口に入れるの早」

 

 ミアはパンを細かくちぎって口の中に頬張る。

 少し欠片がでかいのかハムスターのように口が膨れていた。


「んーんんん!」


「食べてからでいいから。」


「み、水ほしい……ごほっ」


 急にゲーム世界に飛ばされたとは思えないほど微笑ましい光景になっている。

 さっきまでの出来事はなかったかのように。

 これからの事はわからないが今はこのパンを噛み締め味わう。

 こんなのんびりしていていいのだろうか。


「このイヤリングシンプルで可愛いですね」


「もう、また敬語! そんなに気つかっちゃう?」


「あぁ……ごめん」


「謝りすぎ! まあ慣れだよね! このイヤリングは……私の恩人にもらったもの! いいでしょ〜」


 ミアはイヤリングを触りながらりょうのめのまえに見せてきた。

 イヤリングは黒く輝いておりシンプルながらも綺麗だ。


「いいね。てか恩人ってどんな人?」


「私の恩人は明るくて楽しい人! 私、親に気持ち悪いっって……言われて捨てられてみんなに酷いことされて居場所がなかった私に居場所をくれた方……まぁとにかくいい人!」


「酷い……こんな辛い思いしてたんだ。なんかごめん」


「いいよ! 今が幸せなら一番! 恩人がいるしリョウも一緒にいるから!」


「ありがとう。ミアと同じ、恩人は明るくて楽しい人なのいいね」


「恩人に似てるかな? えへへへ」


 ミアは両手を顔に添えてニマニマと喜んでいた。

 そうとう、ミアは恩人のことが好きなのが伝わった


「ミア、あの鎧の人こっち見てるような……」

 

「なんか私たちの方に近づいてきてない?」


 ミアが見ていた方に鉄の鎧を着た二人の男がいた。

 とうやらこちらに近づいてきているようだ。

 ガシャガシャたてながら歩いてき明らか俺達の方を睨んできた。


────おい、そこの黒髪の二人異世界人か?


「異世界人なら返事をしろ!」


「は、はい!」


 ミアが急いで返事をした。


「ゼントル王様が待っている!」


「城に案内する! ついてこい!」


「い、痛っ」


 りょうは抵抗したが鎧の男は力強くりょうたちはどうやっても逃げられない。

 クソっ自分にもっと力があればどうして何もできない無能なんだろう。

 

 あのスライムの時だってりょうは何もできなかった。

 死にかけたところをミアが助けてくれた。

 そして今、鎧の男に手を掴まれミアを守れない。

 女の子一人守れない男なんて、ダサい。

 ミアを守れるほどの力がれば、りょうはなんにもできない。

 ミアのように明るく喋ることもできない。

 ミアのように強くない。

 ミアのように優しくなれない。

 なんでなんでなんもできない。

 そんな自分は嫌いで嫌いで仕方ない。


 自分なんて死ねばいいのに。

  

 抵抗は虚しくパンを食べてるのに容赦なく二人の鎧が俺達の腕を力強く掴まれ馬車のような乗り物に乗せられた。

 

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