第55話 錬金術ってなぁに?②
フィリスは作業部屋に入ると大きな鍋?を火にかけた。
「錬金術はこの錬金釜を使って物を作るの」
あ、鍋じゃなくて釜なんだ...違いがよく分からないけどまぁいいや。
「この中に満たしてある液体は魔力飽和水って言って、水に限界まで魔力を貯めたものね、大体は釜に水を入れて魔石をジャラジャラーって入れて一日放置したりして作るわ」
「割と雑じゃない?」
「人が頑張って魔力注いでも何日もかかるわよ?まぁとにかくこの魔力飽和水を釜に入れて加熱して中に材料を投入して魔力を注ぎつつ出来上がりの姿を強く念じながら混ぜるの...まぁ1度やって見るから見てなさい」
そういうとふは足元に置いてあったバケツの水をジャバジャバと釜に入れ始めた。
「えっ!?大丈夫なのそれ?魔力薄くならない?」
「魔力飽和水は加熱すると弾くのよ」
「...弾く?」
「加熱すると魔力が満ちた水から液体状になった魔力みたいな状態になるの、その状態なら何を入れても混ざらず弾く例えそれが水でもね、ほら」
釜の中を覗き込むと油膜みたいに水と魔力飽和水が分離していた。
「水に油垂らした時みたい」
「この場合比重が逆だけどね、んでこの状態で物を投入して...完成形を想像しながら混ぜ棒に魔力を流しつつ混ぜる」
釜にザバザバとヒルル草をぶち込み最後に瓶も投げ入れ、小さめな船のオールみたいな棒でぐるぐると釜の中をかき混ぜる。
「この状態に物を入れると物質の境目が曖昧になるの、だから完成形を念じて、魔力に乗せて流し込みながら混ぜると...」
ポン!という音がして釜の上で少しだけ爆発したあとの煙みたいなものが出てくる。
釜の中には瓶に詰められたポーションがあった。
「はい完成...今みたいに器を完成した形で入れると想像しやすいわよ」
「だいぶ不思議な作り方なんだね」
「そう?こういう現象が起こるって理解して使えばこんなものよ...それじゃオータムもやってみましょうか」
はい、とあの木のオールのようなものとポーションの材料を渡された。
いきなりやってみよう!で出来るものなのかな?
...まぁ死にはしないしやってみようかな?
「このまま入れればいいんだよね?」
「うん、もう火もついてるし入れて魔力注ぎながら混ぜればいいわ」
「よーし...やってみる」
まず水をザバザバっと入れてヒルル草を投入!
最後に瓶を入れて、あとは完成形...さっきできたフィリスのポーションを想像して念じながら魔力を注いで混ぜる...
ポーション...ポーション...ポーション...
必死に釜の中を混ぜていると急にカッと魔力飽和水が光を放った。
「へっ?」
直後私は爆発に巻き込まれた。
「けほ...けほ...なにごと...?」
「...ぷっ...く...くく...あはは!!」
なんかお師匠様笑ってますけど...
私の錬金はどうなったの...?
釜の中を覗き込むと謎の黒い物体がぷかぷかと浮かんでいた。
「なにこれ...?」
「...くく...ふぅ...そ、それはね失敗した時にできるものよ、使い道がない訳でもないけど、基本的には失敗作ね」
失敗...
これは...
ーーーーーーーーーーーー
謎の物体
錬金術などで失敗すると出来る
なにかに使えるかもしれない...
ーーーーーーーーーーーー
「そんなぁ...」
がっくり、よく見るとちょっとダメージも受けてる。
なんで失敗したんだろう?言われた通りにやったつもりだったけど...
「なんで失敗したのか知りたい?」
「それは...もちろん」
「今のは魔力の込めすぎよ」
「え?もっと少ない量を調整しないといけないの?」
「もちろん、だって魔力飽和水よ?そこに注ぎ続けたら溢れるわよ、だから溢れないようにギリギリで込め続けて混ぜないといけないの」
そう言われるとすごく当たり前の失敗をしてしまった気がする...
「ほら、もう諦める?それともリベンジする?」
「...もちろんリベンジする!」
次はちゃんと魔力の量に気をつけて...
...
.....
その後魔力に気を取られすぎて念じるのが足りなくて失敗したり、混ぜるのが疎かになって失敗したり、また爆発したり何度かの失敗を体験した。
「さぁ、これで出来なかったら次からは材料は自分で用意してもらうからね」
「はい...今度こそ!」
今度こそ絶対に成功してみせる!
材料を投入してしっかり想像しながら魔力を調整、そして混ぜる手は止めない!
ポーション...ポーション...ポーション...ポーション...
たのむ!お願い!完成して!
混ぜ続けること10数秒。
必死に混ぜていると釜からポン!という音が聞こえた。
恐る恐る顔を上げて釜の中を見ると、そこには瓶に詰められたポーションがぷかぷかと浮かんでいた。
次回、禁忌...?
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