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135.ドラゴンの胃袋

エルフの森へと帰ってきた3人。

それからすでに1週間ほどが経っていた。


まだ目を覚ます様子を見せないリュシア。

ベッドで眠るその姿は、どう見てもただの少女だった。


それが不思議で仕方なかった、クルド。


ここ一週間、リュシアの横で目覚めるのを待ち続けながら、

レクサイドのグリフォンの巣から持ち出した古文書を読み漁っていた。

(ほとんどはカイがヒルダのもとへ持っていき、ほんの一部だけがクルドの手元に残っていた。)


本を読み、一日が終わる。そんな生活が続いていたが、ある日、リュシアが動きを見せた。


「・・・うーーーーん・・・・」


「どうしたの?目が覚めた?」


どうやらうなされているようだった。クルドの覚醒魔法が中途半端だったのか……

そんなことを考えていると、リュシアが再び動き出した。何度も寝返りをうつリュシア。


心配そうに見つめるクルド。


そんな時、リュシアが寝返りのタイミングでクルドの腕を掴んだ。


「あら、寂しいのかしら?」


少し笑みを見せるクルド。だがその笑みは、次の瞬間に絶望へと変わった。


「いででででで!!!」


その握力は人間の比ではなかった。


「腕がちぎれるぅぅぅぅうぅぅ!!」


ギチギチと締め上げられる腕。


クルドの叫び声を聞き、慌てて飛んできたティリス。


「大丈夫!?クルちゃん!!」


「腕が……ちぎれる……」


なんとかティリスが腕をほどいてくれたが、その跡は真っ青になっていた。

クルドは自分で回復魔法をかける。


「危なかったわ……もう少しで粉々になっていたわよ……」


「しかし、すごい力だよね……ほんとドラゴンなんだね……」


感心しながら寝顔を見つめる二人。

その時だった。リュシアの目がパチリと開いた。


「おお!起きた!おはよう!」


「おはよう……クルド……ティリス……」


「わー!名前覚えてくれたんだ!ありがとう!」


感動する二人。


すると、リュシアが静かに口を開く。


「おなかすいた……」


見つめあう二人。


「そうだよね、ずっと寝てたもんね。さっそくごはん作るね」


寝室から飛び出そうとするクルドを、全力で止めるティリス。


「ん?どうした?」


「いやいやいや!クルちゃんがごはん作るの!?」


「なにか問題あるの?」


「いや、そのなんと言うか……クルちゃんのごはん食べたらリュシア、また寝ちゃうかも……」


怒りに拳をつくるクルド。震える拳。


「そうだね……!私が作るとね……!」


怒りながらも納得したクルド。代わりにティリスがキッチンへと向かった。


「そういえば、好きなものとかあるの?」


質問されたリュシアは少し考えて答えた。


「なんでも食べるよ……でも、好きなのはオリハルコンとか……」


「はぁ!?」


クルドが驚く。


オリハルコンといえば、希少価値の高い金属で、伝説級の武具に使われる材質。

硬さがあり、重量は軽い。そして丈夫。そんなもの、口にしていいのか?

いや、普通はダメだ。でも、ドラゴンなら……いや、それでも!


「ははは、オリハルコンはないけど、美味しいもの作ってくるかねー、ちょっと待っててね」


不思議そうな顔をして頷くリュシアだった。


ティリスは何を作ったら良いのかわからず、とりあえず胃に優しい野菜スープを作ることにした。


運び込まれたスープ。リュシアが不思議そうにスープをのぞき込む。


クルドがスプーンを手渡した。


「熱いから気をつけてね……ゆっくり食べるのよ」


そう言うと、リュシアはスプーンをバリバリ食べ始めた。


慌てる二人。


「それ!食べ物じゃないから!!」


驚くリュシアだったが、結局全部食べてしまった。


新たに用意したスプーンで、クルドが食べ方を教えた。


リュシアはマネをしながらスープを一口、口に入れてみた。


そして、目を見開いた。


「おいしい!!」


リュシアはスープをすごい勢いで飲み干し、お代わりを要求した。

結局、作ったスープを全部飲み干した。


「お、おなか一杯になった?」


「うーーーん、まだ足りないかなぁ……」


「さすが、ドラゴンなのね……」


可愛い顔しても、胃袋はドラゴンだ……。


クルドは、すごい速さで計算を始めていた。


成人エルフ3人分の一日食料×3食×30日分に加えて、

希少金属の粉末摂取が必要になる可能性……保存費、調達費、換金コスト……


――これは……完全に……


「私、食費で破産する……」


ぼそりと漏らすクルドを見て、ティリスは大きな声で笑った。


「くっくっく……“世界最強の魔法使い、食費で破産”!」


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