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127/219

127.それぞれの出発

 レクサイド郊外――どこまでも広がる乾いた砂漠に、カイとクルド、それに召喚された一体のグリフォンがいた。


 強い日差しと風が吹き抜ける中、クルドのマントが静かに揺れる。


 「カイ、もう一度言っておくぞ。さっきの話は、あくまで私の勘にすぎん。間違っても、喧嘩を吹っ掛けるような真似はするな」


 「はい、先生……」


 「私は各地の種族とつながりを持っている。もし戦が始まれば、仲間を連れて必ず戦場に現れる」


 「先生……俺は……いったい何をすべきなんでしょうか……正直、分からなくなってきました」


 カイの声は曇っていた。

 大量の情報と、自分に託された期待。そして、これから起こるかもしれない争い――そのすべてが彼の胸を重くしていた。


 「色々と思うところがあるだろう。しかし今は、争いを回避することに専念しろ。

 それだけでも、大きな一歩になる」


 「……はい。分かりました」


 カイはグリフォンの背に飛び乗り、手綱を軽く握る。


 「それでは先生、またお会いしましょう!」


 その言葉に、クルドはふっと笑みをこぼし、手を高く掲げた。


 「……行ってこい、小僧」


 グリフォンは空に向かって大きく羽ばたき、あっという間に青空の彼方へと姿を消した。


 ――しんと静まり返る砂漠に、風が吹いた。


 「さて……こっちも動くとするか」


 クルドは腕を組み、しばし考え込んだあと、ゆっくりと足を踏み出した。


 「……あいつのところへ向かうか。久しぶりだな」


 そう言って立ち止まり、静かに片手を掲げると、足元に淡い光が集まり、魔法陣が現れる。


 「来い、フェンリル」


 低く呼ばれたその名に応えるように、魔法陣の中心から真っ白な大型の獣が姿を現す。

 鋭い目を持ち、たてがみのような毛を風に揺らすその姿は、まさに神秘の獣。


 「久しぶりだな、ジール」


 クルドは懐かしげに微笑み、フェンリルの首元を撫でる。


 「……ひとっ走り頼む」


 ジールが静かにうなずくように身を沈めると、クルドはその背に飛び乗った。


 次の瞬間、砂を巻き上げて、白い獣とその主は地平線へと走り去っていった。

 空を行くグリフォンとは対照的に、大地を駆けるその姿は力強く、決意を乗せていた。

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