114.王家の墓
三日間の過酷な移動の末、カイとクルドはついにその場所へとたどり着いた。
目の前には、見渡す限りの砂漠。
焼けるような陽光と、風に運ばれる細かな砂粒が、肌を容赦なく刺してくる。
そんな中、砂丘の上にそびえるように、それはあった。
「……でかっ」
カイが思わず声を漏らした。
巨大なグリフォンの石像の頭部。
わずかに見えるその“くちばし”と“片目”だけで、像の全体像がとんでもなく巨大なものであることが分かる。
「ほとんど埋まってるなぁ……」
「そうだ。あの像の真下に、王家の墓があると記されていた」
「ってことは、この下を掘るしかないってことですか?」
「……まぁ、方法が他にあれば、そっちのほうがいいがな」
カイは砂に足を突っ込みながら、地面をポンポン叩いてみる。
「うーん、掘るって言っても……スコップ持ってませんけど?」
「おい小僧、魔法使えるんだろうが。**“掘削魔法”**くらい使えんのか?」
「えぇ!? 聞いたことないっす!」
「じゃあ今、覚えろ」
「なんという無茶ぶり……」
クルドはカイの額に指をあて、すっと魔素を流し込んだ。
「今から教える。『ディグル・アース』。これは土系魔法の基礎だ。
一点集中で使えば、掘削用のドリルみたいに地面を崩していける」
「やってみます……ディグル・アース!」
カイが叫ぶと、彼の足元からぐるぐると回転する土の柱が出現し、地面を掘り下げていった。
「おおっ!? なんか回ってる! 削れてる!」
「方向だけは間違うなよ。真下だ。グリフォン像の真下だぞ」
「任せてください!」
――十数分後。
直径2メートルほどのらせん状の縦穴ができあがっていた。
「ふぅ……疲れた……」
「お前、便利になったな」
「どういう意味ですかそれ……」
穴の底には、なにやら平らな石床が現れていた。
「これだな。墓所の入り口だ」
カイが土埃を手で払うと、そこには古代文字で記された封印式があった。
「うわ……なんかすごく面倒そう……」
「気を抜くな。これは“魔法封印”だ。墓の中に入ろうとする者を拒む結界だ」
「どうやって解除を?」
クルドはにやりと笑った。
「お前が、王家の声を聞く者ならば……自然と開く。さあ、触れてみろ」
「また、それですか……」
不安になりつつも、カイはそっと封印式に手を当てる。
すると、静かに地鳴りのような音が鳴り――
封印式が、ゆっくりと青白く光り出す。
「開いた……?」
「……ほう。やはり、お前は“選ばれている”ようだな、小僧」
そこには、重厚な石扉が現れ、その先には地下へと続く階段が口を開けていた。
冷たい風が下から吹き上がってきた。
「……本当に墓だな、これ」
「そして、おそらく……普通の墓ではない。覚悟しておけ」
カイは、聖剣ポチの柄を握りしめ、深く息を吸った。
「行きますか……王家の墓に」