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102/219

102.砂漠の大都市レクサイド

炎天下の中、ようやく辿り着いた町――レクサイド。


砂漠の中に突如として現れたその町は、まるで蜃気楼のように見えた。


さすが、大都市と言われるレクサイドだ

人が出入りする門がいくつもある。


門前では、旅人や商人たちが並び、門番による入管チェックが行われている。

そしてついに、カイの番が来た。


「――レクサイドには何用で来た?」

門番の男が、鋭く問いかける。


どう答えるべきか、一瞬悩んだ末に、カイは正直に言った。


「……人を探しに来たんです」


「ほう? このレクサイドで誰をお探しかな?」


カイは少し警戒しつつも、恐る恐る名前を口にする。


「……クルドっていう、人を……」


門番は一瞬、眉をひそめた。

だがすぐに表情を整え、言った。


「……見つかるといいな」


そして、一枚の紙をカイに手渡す。


「これは入場許可証だ。滞在中は常に携帯しておけ。無くすなよ」


「はぁ……」

と小さくため息をつきつつ、カイは許可証を受け取り、町へと歩き出す。


門番の視線が、背後から刺さるように感じる。

クルドという名が、この町で何らかの意味を持つ――

そう直感した。


門をくぐった先に広がる光景に、思わずカイは足を止めた。


「……すごい」


思わず心の声が漏れる。


砂漠のど真ん中にある町とは思えない。

町の中は水と緑に溢れ、鮮やかな植物が揺れていた。


路地には屋台が並び、噴水が涼やかに水音を響かせる。

商人たちの威勢のいい声、笑い声、音楽――活気に満ちた街並みが、カイの目に飛び込んでくる。


(これは……どこから探せばいいんだ?)


町の広さに圧倒され、立ち尽くすカイ。

だが、すぐにひらめく。


「そうだ! ギルドに行けば、なにかヒントがあるかも!」


カイはすぐさま、レクサイドのギルドへと向かった。


到着した建物は、驚くほど大きく立派なものだった。

中へ入ると、その印象はさらに増す。


近代的で洗練された内装。

かつて訪れた他の町のギルドが、まるで田舎の集会所に思えるほどだった。


「すげぇな……」と、思わず見上げる。


キョロキョロと興味津々で見回すカイ。

やがて受付カウンターへと近づくと、そこに立っていたのは――


「また現れた……!」


思わず大声が出る。


「同じ顔だ! これで受付嬢をコンプリートした……!」


そこにいたのは、受付嬢四姉妹のカナリーナ!


しかしカナリーナは、冷たく、淡々と対応する。


「ご用件はなんでしょうか?」


カイは、テンションの上がったカイを無視したカナリーナに、ギルドについてあれこれと尋ねていった。


やがて、ふと思い出して聞く。


「ここって、魔物のドロップアイテムの換金とかしてくれるのかな?」


カナリーナは首を傾げて答える。


「はい。ただし、レクサイドのギルドは王国直轄ではありません。

ここ単独で運営されておりますので、こちらで新たに登録していただく必要があります

そして、登録料金も必要です。」


「なるほど、わかった! 登録するよ」


登録用紙に必要事項を記入し、カイはそれをカナリーナに渡した。

だが――


「……あの、自己申告とはいえ、レベル100というのは、さすがに冗談が過ぎると思いますが」


「(ああ、やっぱそう思うよね。)ごめんごめん、10って書いたつもりだったよ」


「……そうでしたか。失礼いたしました。ではこちらで修正いたします」


(やっぱりこの世界じゃ、100は非常識なんだな……)


この世界では、レベル50前後が限界とされ、100など“酔っ払い”か“頭のおかしい人”の数字だった。


無事に登録を終えたカイは、持ち込んだ大量のドロップアイテムの換金を依頼した。

だが――


「換金には一日かかります」


その量に、ギルド内の猛者たちもチラチラと視線を寄せてくる。

注目を集めながらも、カイは心の中でガッツポーズ。


(よし、今日だけは……!)


「クルドを探すのは、明日にしよう。

今日は――久しぶりに、ベッドで寝られる!」


そう、あまりにも久しぶりの温かいご飯、ふかふかの布団、そして――


「そうと決まれば、まずは風呂だ! シャワーすら浴びてなかったからな!

レクサイドには風呂とサウナがあるって聞いてたんだ。

それを楽しみに、ここまで来たんだから!」


カイの心の声が漏れまくる。


「風呂だ! サウナだ! そして飯だあああああ!!」


カイは満面の笑みでギルドをあとにする。


その背中には、これから始まる新たな物語の気配が、静かに滲んでいた――。

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