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101.砂の海

ヒルダとオルガとカイによる作戦会議から、すでに数ヶ月が経過していた。


カイは、ナヴィーク大陸中央部の巨大な砂漠地帯を、町から街へと孤独に渡り歩いていた。

目的地は、レクサイド。

だが、その道のりは決して穏やかなものではなかった。


灼熱の太陽が照りつける砂の海――。

そこに生息する魔物たちは、かつて魔の森で戦ったブラッディウルフほどではないにせよ、侮れない敵だった。


巨大なスコーピオン。

砂で構成された岩のようなゴーレム。

地中から突如として現れるワーム型の怪物たち。


「――またかよ!」


カイは汗をぬぐいながら、次々に現れる魔物たちを切り伏せていた。

これも修行、これもレベルアップのため。

そう自分に言い聞かせながら、地平線の先にあるレクサイドを目指し、前へ進み続けていた。


一方そのころ――

魔の森の奥、ヒルダの小屋では、激しい訓練が日々行われていた。


マリ、ルカ、ミーア、そしてカーク。

四人は、それぞれの得意分野を徹底的に鍛えられていた。

しかし、オリビアの姿はそこにはなかった。


特に注目すべきは、オルガがベンゲルの町から連れてきた、ある“人物”の存在。


かつて死んだとされていたダブルSランク冒険者――

キース・イグナシオン。


死んだはずの伝説的冒険者は、なぜか今、魔の森にいる。

その理由を深く聞く者はいなかった。

ただ彼の強さと経験が、今の自分たちにとって必要不可欠だということだけは、誰もが理解していた。


剣術と体術はキースが担当し、魔法はヒルダとオルガが鍛え上げていた。


マリ・ルカ・ミーアは、日々ヘトヘトになるまで鍛えられ、

カークは、主にキースとの個人戦で心身を磨かれていた。


その日も激しい訓練の合間、ようやく訪れた休憩時間。

マリが、水筒を傾けながら、ぽつりと呟いた。


「もし、フォースドラゴンが復活して……王国や教会と戦うことになったら……

 私、自分の“家”と戦うことになるのかな……」


その声には、不安と葛藤が滲んでいた。


すると、遠慮のないオルガがズバリと返す。


「可能性は高いな。王国側の人間なら、いざ戦争になれば、兵を送ってくる」


その言葉に、マリとルカの表情が一気に沈む。


「……そんなの、やだよ……」


ルカがそう言うと、オルガは少しだけ表情をゆるめ、

「でもさ、今のあんたらじゃ、家族ともまともに戦えないでしょ? だから修行してんじゃん」


と、さらりと言い放った。


しばらく黙っていたヒルダが、静かに口を開く。


「……だが、私たちは“戦争”がしたいわけじゃない。

 召喚を止める、それが第一だ。まだ止められると、私は信じている」


その言葉に、マリとルカは自分に言い聞かせるように頷いた。


「うん……私たちでなんとか、止めなきゃ……」


「そのために、もっと強くならなきゃ……」


それぞれが、決意を胸に刻む。


そしてそのころ――

数え切れないほどの魔物を倒し続けてきたカイの前に、ついにレクサイドの町の門が見えていた。


「やっと……見えたか」


砂煙の中に浮かぶ城壁。

遠くで風車が回る音が、耳に届く。


長き旅路の果てに、ようやくカイは新たな地にたどり着いたのだった。

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