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ラスボス育成観察録  作者: 不破焙
第弐號 閃滅翠聖/葬蒼凶機
35/50

伍頁目 龍園

 〜〜()()内・とある屋敷〜〜



 水面を揺らす蓮の花。

 鮮やかな桃色が、手入れの行き届いた池に立つ。

 窓に映るその景色を眺めるだけでも、

 気を抜けば時間を忘れてえしまうほど見所がある。

 がしかし、屋敷内の人間で

 そんな余裕が残っている者は一人もいない。

 誰もが慌ただしく、右往左往に踵を返す。



「急げ急げぇ! 本当の多忙はここからだぞ!」


「物資は……不足無し! 良し、会場に移せ」


「各国の賓客も続々来ている! ()()()()――」



 体を突き動かすのは焦燥感よりも高揚感。

 程よい緊張がやる気を活性化させ、

 屋敷の従者たちを優秀な歯車に変えていた。


 そんな彼らを指揮していたのは、茶髪の男性。

 うっすらと蓄えられた顎髭はもみあげまで繋がり、

 口元だけを見れば武人のような漢らしさがある。

 だが肌艶と髪質はむしろ若者のソレであり、

 ウェーブの掛かった前髪を弄るその姿からは

 立場上存在しないはずの気さくさすら感じられた。


 その気さくさに誘われるように、

 一人の女従者が彼の側に立つ。

 そして静かに頭を垂れた後、

 彼女は端的に報告のみを口にする。



「オラクロン大公ビクスバイト様が

 先程無事『龍園』に入られたとの事です」


「? 予定よりもずっと早いですね」



 瞳の中に僅かな驚嘆の色を浮かべつつも

 同時に端正な顔立ちの男は

 やはり整った笑顔と共に身を翻した。



「馬を。大公なら流石に僕が直接出向かないとね」


「ハッ、仰せの通りに。侯爵殿()()



 〜〜〜〜



 風神を祀る村を出立してから早十六日。

 旅の開始から数えれば三週と三日が過ぎた頃。

 公国の馬車は長閑な平地を進んでいた。


 涸れた川を近道にするという作戦は見事功を奏し、

 あれ以降目立った事件に遭遇する事は無かった。

 そして遂に川の道で進める限界に達した彼らは、

 当初の道順とは些かブレてしまったが、

 目的地へ繋がる行路に数日早く合流していた。



「いくよ? 『トゥラ・ク・オイズァル』」



 大公用の馬車内でベリルが風神の名前を呟く。

 それは本来呼んではならない魔物の真名。

 名前を言えば、忽ち青い裂風に斬り裂かれる。

 だがそれは純正な人間ならばの話。

 人と魔物の半血であるベリルからすれば、

 その名は自身の腕に裂風を呼び出す、

 言わば召喚呪文のようなものと化していた。



「ほら見てギド! これ使えそうじゃない?」


「魔物であれば風は吹かず、人であれば致命傷

 しかし……ふむ? 君ならではの特権ですね」


「しかも消すのも簡単! 予想外の収穫だった」



 どこか高揚したように、

 ベリルは裂風の消滅を実演し得意気に語る。

 するとそんな浮かれる少年とその保護者に

 今度はいつになく目付きの悪い大公が

 ジッと睨みを利かせながら語り掛けてきた。



「呪い、という奴か? それは?」


「はははっ!

 呪いがこんな簡単に剥げたら誰も苦労しませんよ!」


「……新技とするかどうかは貴様の勝手だが、

 代理隊長。それはあまり無闇に使うなよ?」


「え?」


「『何故?』などと言えば蹴るぞ小僧

 貴様は問題無くとも他の者はそうでは無いのだ

 貴様が技名として風神の真名をバラ撒けば、

 事情を知らぬ第三者が誤爆しかねん」


「……!」



 この時ベリルは相反する二つの感想を持った。

 一つは納得。確かにそうだ、と共感する気持ち。

 もう一つは不満。風神の真名で死ぬのは人間のみ。

 魔物にとっては脅威など欠片も無く、

 何よりもそいつが勝手に呟く方が悪いだろう、と

 やや自分本位な気のある感想を抱いていた。

 しかし少年はそのどちらも口にする事はせず、

 上っ面の了承を伝えるために軽く頷く。


 それを大公がどう受け取ったのか、

 ベリルに判別する術など無い。

 だがそれ以上追及する気も失せたらしく、

 大公は吐息一つで話題を変えた。



「貴様らを呼んだのはそんな事のためでは無い

 ……丁度良い。そこの窓から外を見てみろ」


「ん?」



 促されるまま外を覗いてみれば、

 そこには地平線の彼方まで広がる巨大な農園と、

 そこの作物に与えるために整えられた

 美しい水路を跨ぐ精巧な石橋が見て取れた。


 次いで視線を僅かに遠方へと向けてみれば、

 今度は人の賑わいが活発な街の様子も伺える。

 オラクロンほど技術は発展していないが、

 それでも異国情緒溢れる街並みからは

 確かな生活の息吹が感じられた。


 無論どちらもさほど特徴的という訳では無い。

 しかしベリルは既に大公の意図する所を

 かなり正確に読み取れていた。

 少なくとも今この瞬間に見える景色からは、

 噂に聞く落ち目の帝国()()()を見出せ無かったからだ。



「……あの村とは比べ物にならないね」


「ここは既に『龍園』だからな」


「龍園?」


「そうだ。帝国には古くから()()()()があった」



 帝国のルーツは北限開拓軍。

 彼らが諸王国を取り込み領地を拡大した事で

 今の帝国の基礎は築かれた。

 その際、初代皇帝は自らの領地を

 神秘的なエネルギーの流れる霊域と称した。

 それこそが首都を中心に広がる帝国の直轄地。

 龍脈の上に築かれた文化圏。即ち『龍園』だ。


 しかし帝国史の大部分は征服と拡大の歴史。

 その領土も龍園の中だけでは完結しない。

 歴代皇帝たちの指導の下巨大化した領地は、

 帝国の八割をその他大勢の僻地とした。

 龍脈の恩恵を受けない、即ち『園外』である。



「『龍園』と『園外』……」


「両者の格差問題はそのまま帝国の歴史に繋がる

 貴様らをこちらに呼んだのは

 そういった前提知識を共有するためだ

 部隊を率いる者として、実情を()()学べ」


「フフ。陛下はベリルの勉強に協力的ですね?」


「有益である内はな」


(……っ、この二人は相変わらずだなぁ)



 互いに戦友だとは微塵も考えていないのに、

 利益を共有出来る協力者だと割り切って手を結ぶ。

 まだまだ子供故に仕方が無い事とはいえ、

 感情で動く事の多いベリルにとっては

 やはり二人とは視点も一歩引かざるを得ない。


 加えてこの時の少年の脳裏を過ったのは、

 まだ見ぬ帝国の中枢権力者たち。

 いくら落ち目の国とはいえ、その首都は

 権謀術数渦巻く魔境であると聞き及んでいる。

 大公オスカーも帝国出身者であると考えると、

 同じくらい厄介な人間が複数人いても

 何ら不思議な事では無かった。


 つまるところ、ベリルは適応する必要がある。


 相手の腹の中を探り、

 それでいてこちらの手の内は極力見せない。

 貼り付けた笑顔で嫌いな相手と向き合い、

 必要な時にのみ魔物の本性を見せる『狡猾』さ。

 帝国首都にて立ち回るためには、

 否、これからの世に潜伏し続けるためには、

 今のベリルは無私である必要があった。



(大丈夫……ギドみたいにしてれば良い)



 それはかつてシェナを失った時にもした決意。

 そしてこの十年で多少は上手くなった偽りの舞踏。

 ターク・オイズという久方ぶりの同類との接触で

 どうやら少し気が緩んでしまっていたようだが、

 それを自覚し、少年は瞳を凍て付かせた。



「お気遣い感謝します、大公陛下」


「……ん」



 別にどうと言う訳でも無く、

 大公は頬杖をついたまま唇を振動させて応答した。

 すると今度は、親衛隊長のガネットが口を開く。



「陛下。帝国首都が見えてきました」


「「――!」」


「もうか。予想以上に早く着いたな」



 そう言うと大公は徐ろに窓を開けた。

 最低限の警戒心からなのか、

 外に顔を出す所までは行かなかったが、

 それでもいつになく懐かしむような様子で

 彼はこれから進む道の先を視界に入れ続けていた。


 またそんな彼に釣られるように、

 ベリルも頭を傾け景色を望む。

 すると地平線の先よりそれは現れた。

 巨大な城壁。鮮やかな赤屋根の街。

 浮かぶ提灯に彩られた人間の都――



「あれが、帝国首都……!」


「名を『ラクア』。帝国最大最古の都だ」



 〜〜帝国首都ラクア〜〜



 第一印象は『とにかくデカい』。

 それは先の田園風景を見ても感じていた事だが、

 とかく広大な土地を有するチョーカ帝国では

 建物も道も、景観以外の用途が無い噴水ですらも

 小国オラクロンとは比べ物にならないほど

 巨大にしてかつデザイン性に富んでいた。

 あえて悪く言えば()()()()()()とも言える程に。

 そしてその「あえて悪く」をギドは

 何の躊躇いも無く口にした。



「随分と煩雑な街ですね~?」


「煩雑、か。まぁ言い得て妙としておこう

 帝国はそのルーツからして多文化国家だ」



 諸王国から寄せ集められた北限解放軍。

 そして彼らが諸王国を征服して出来た国。

 それこそがチョーカ帝国であり、

 八千年に及ぶ征服と興廃の歴史が

 その多民族的な在り方に拍車を掛けた。

 首都の景観にもそれは顕著に表れ、

 区画を跨ぐ毎に街の様子がガラリと変わる。



「――けど全体のバランスは崩れてない

 全部計算されて造られてるんだ……!」


「ほぉー?」



 やや興奮気味なベリルの言葉に、

 大公はいつになく感情を揺らして反応した。

 持て余したスペースを大胆に使った建築は

 匠の工夫と遊び心満載といった様子。

 特に目を引いたのが遠方に見える迎賓館。

 聞けばこれから数日ベリルたちも泊るという

 その場所は、まだまだ距離があるにも関わらず

 既に少年の心を強く刺激していた。



(す、すごいなぁ……!)



 齢十五の少年にとって、

 何もかもが巨大な街はそれだけで好奇の的。

 特に昔から魔導機構(マシナキア)弄りや絹織物など、

 機能性、デザイン性を問われる物事に

 強い興味関心を持っていたベリルにとって、

 八千年続いた帝国首都の洗練された荘厳さは

 最早劇薬の如く五感を激しく共振させる。


 そしてそんな少年の横顔を、

 大公オスカーがいつもの瞳で覗いていた。



「随分と色めき立っているな?」


「はっ……!」


「迎賓館までの移動もこのまま馬車だ

 悪いが散策に出掛けるのは後日にしろ」


「べ、別に必要ありませんから!」



 気持ちを見透かされたのが悔しくて、

 そして何より自分が人間の街に

 興味を抱いた事が嫌でそっぽを向く。


 無私を決意したのはつい先程の話。

 だというのにベリルは見慣れぬ街の様子に

 いつになく浮かれてしまっていた。

 年相応、と言えば聞こえは良いのだろうが、

 人類への復讐を望む彼にとってそれは

 決意を鈍化させる不純物に他ならない。



(惑わされるな、憎悪を思い出せ――)



 強く念じて、再び瞳を曇らせる。



 ~~迎賓館~~



(かっけえええええええええええ!!)



 インスタントな冷酷さは

 目的地到着と共に一秒で吹き飛んだ。

 少年の瞳に宿ったキラキラは止められず、

 一歩エントランスの中に入ってしまえばもう

 先程まであった嫌悪感も思い出せない。



「元々宮殿だった所を改装した場所だそうで

 ……私たちの部屋はこの先ですね」


「――! う、うん……」



 それでもどうにか正気を取り戻し、

 ベリルはギドと共に用意された部屋に入る。

 だがそこもまたかなりの絶景で、

 少年はウズウズと体を小刻みに震わせた。

 出来る事なら今すぐにでも

 眼前の柔らかベッドに飛び込みたい。

 飛び込みたい、が――



「……ごめんギド。ちょっとロビーに出てくる」


「おや?」


「大丈夫。迎賓館の外には行かないから」



 遅まきながらも魔物の仔は

 湧き上がる感情を自制し部屋から出る。

 そしてしばらくトボトボと力無く歩くと、

 一階まで一望出来る吹き抜けの

 手すりに自重を乗せてその心身を休めた。

 まるで留木にとまる鳥のように。



(こんなんじゃダメだなぁ……)



 未来の魔王として、もっと冷酷にあるべきだ。

 大好きだった姉を喪った悲しみを抱いて、

 もっと狂気に呑まれるべきだ。

 十年前ならその理想に近いメンタルでいれた。

 けれども時の流れがそのバランスを崩し、

 あの村で見た光景が憎悪の焔を弱体化させた。



(シェナ……モルガナ――)



 その時、ベリルはまず自分の目を疑った。



「え?」



 次いでそれが幻覚で無いと悟ると、

 両目を擦って『その姿』を凝視する。

 彼が見つめるのは迎賓館の一階。

 中から外へ出ようとする人間の後ろ姿。

 それは長いベージュの髪を靡かせた女性。

 ほんの一瞬の目撃であったが、

 ベリルは思わずその人物の名を呼んでいた。



「モル……ガナ?」



 気付けば少年は一階に向けて走っていた。

 人間の眼しか無いこの場所では

 それが最短経路であるのが口惜しい。

 それでも魔物の仔は今出せる全力を以て

 モルガナと思しき女性を追いかけた。


 そんなベリルの後ろ姿をジッと、

 仕事の手を止めオスカーは見つめていた。



 ~~~~



 その人物は、

 記憶の中のモルガナと比べても

 いくらか血色が良いような気がした。

 加えて本物のモルガナは機械技師として

 普段から作業着を身につけていたのに対し、

 迎賓館から出て行ったその人影は

 見た事もないような正装だった気がした。


 他人の空似。十分有り得る。

 何よりモルガナは十年前に死んでいる。

 チョーカ帝国にいるはずが無い。

 そんなはずが無い。だというのに――



(モルガナ……!!)



 理性というストッパーは今この瞬間、

 少年の心を止めるまでには至らない。


 迎賓館の外には出ないという約束すら

 一瞬にして反故にして、

 少年はただただ目的の女性の背を追った。



(角を曲がった! 見失う……!)



 途中の階段など全て跳び越えて、

 厚顔無恥にも道行く人の股下を掻い潜って、

 モルガナらしき人物が消えた路地へ、

 ベリルは滑り込むように飛び込んだ。

 そうして顔を上げてみると――



「!?」


「今日も大した収穫じゃねぇなぁ!」

「魔物が減って、まさか困るとはなぁ……」

「とにかく! さっさと報酬を貰いに行くぞ」


「ここって……」



 それは多くの武装した人間が出入りする場所。

 富豪や村人たち依頼を受けて、

 報酬を得る事で生きている者たちにとっての

 受付兼憩いの場。即ち――



「冒険者ギルド……!」



 思わずベリルはその場からの逃走を図る。

 何せ冒険者ギルドは聖騎士団に次いで

 明確に魔物と敵対関係にある組織。

 オラクロンにいた頃から、

 自ら彼らに近付くような事はしなかった。


 その徹底してきた習慣が反射的に働いて、

 ベリルは来た道を戻ろうと振り返る。

 が、そんな彼の進路を阻むように、

 ベージュの長髪をした人物は立っていた。



「っ!? モルガナ――!」


「? モルガナ? なにそれ?

 てか君だれ? ――()に何か用?」


「!?」



 よくよく見てみれば、

 そこに居たのは髭の生えた男性だった。

 服装には冒険者ギルドを表わす紋章が複数。

 明らかにギルド側の人間だ。



(見間違えた!? こんなおっさんと!?)


「紛失物ならまず依頼を出しな坊主

 俺が一緒に書類書いてやるから」


「い、いや僕は別に……!」


「遠慮すんなって、ほれ行くぞ!」



 善意が暴走しているのか、

 男は半ば強引に少年の腕を引いた。

 ギルドの中がどうなっているのか、

 入った事が無いから分らない。

 分らないからこそ未知が恐怖を駆り立てる。



「いや……待って、待――」


「――そこまでです」



 ベリルを引っ張る男の腕を、

 更に別の男性が掴んで止める。



「怖がっていますよ、可哀想に」



 割り込んだのは、緑の目をした茶髪の男性。

 うっすらと蓄えられた顎髭はもみあげまで繋がり、

 口元だけを見れば武人のような漢らしさがある。

 だが肌艶と髪質はむしろ若者のソレであり、

 ウェーブの掛かった前髪を弄るその姿からは

 どこか気さくさすら感じられた。



「ここは僕に免じて退いてくれませんか?」


「こ、()()様……!?」


(侯……爵……?)


「帝国万博まであと僅か……

 ――嫌がる少年に無理矢理依頼を出させた

 そんな悪評。僕らも困ります」


「え!? 坊主、嫌だったか!?」


「ちょっと……いや少し……いやかなり」


「もうオマエの顔は見たくない、だそうです」


「そこまで言って無いですよね!?

 いやぁしかし無神経が過ぎたのは事実か!

 モルガナって物? 人? の事はいいのか?」


「……ぅん、もういい」


「そうかぁ、悪い事したな坊主……」



 そう言うと男は茶髪の何者かに

 何度も何度も深々と頭を下げると、

 何かあればいつでも頼れよ、とだけ

 快活な笑顔と共に言い残して去って行く。


 その間も茶髪の男はずっと、

 呼吸を荒げたベリルの手を握ってくれた。

 何故だか不思議と、それだけでも

 心が落ち着いてくる事を少年は知覚していた。

 やがて全力疾走と窮地からの脱出という

 ダブルパンチで高まった鼓動も収まり始め、

 ようやくベリルは感謝の言葉を捻り出す。



「あ、ありがとうございます……おじさん誰?」


「おじさんかぁ……ハハ、まぁそんな歳か……

 どう思います? ビクスバイト大公陛下?」


「――確か三十代前半でしたか?

 不躾ながら、そう呼ばれる御歳でしょうな」


「え!?」



 いつから見ていたのか、

 路地の日陰から黒衣のオスカーが姿を見せる。

 そしてベリルを自分の側に引き寄せると、

 半ば強引に大公は少年の頭を押さえ付けた。



「痛ッ! なにを!?」


「礼を欠くな小僧。高貴なる御方だ」


「? 大公よりも侯爵の方が偉いの?」


「ははは! 確かに僕の方が下だ!

 賢いお子さんですね!」


「遠縁の者です。貴族生活に疎い故何卒、

 ご寛恕賜りますようお願い申し上げます

 ――オリベルト侯爵殿()()


「え? 殿下……?」


「そうだ。この御方は

 ネーロ・(ツァイ)・パウロ・フル・オリベルト殿下

 帝国の――皇族に名を連ねる御方だ」


「!!」



 慌ててベリルも頭を下げて、

 そして好奇心から再び顔を上げてみる。

 そこにはやはり立場上存在しないはずの

 気さくさのような物が感じられた。



「この子の名前は?」


「べ、ベリルです!」


「そうかベリル君。良い名前だね!」



 そしてオリベルトは再び

 ウェーブの掛かった前髪を弄りながら

 少年と旧知の大公に笑顔を向けた。



「会えて良かった。オラクロン大公国!」


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