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エピローグ:君達を恐れない、良き隣人と良き友人②


 セルゲイの伯父は魔鉱石商をしている。

 フォスクロードでも指折りの目利きの才を持つが、いかんせん本人が気難しく偏屈で、その気質は客商売などもっての他。

 もちろん、客の前に出るわけもなく、普段は店の裏口から繋がる小部屋のカウンターで、それでも店主をと望む客を対応している。


 表にいる従業員の総数は少ない。

 店主の気質と上手く付き合い、働くまでするハードルは高く、そもそも店主は人を信用せず、新たに雇い入れる事にも消極的だった。


 城下町に構えた店の従業員達は採掘含めた仕入れ、接客、商談補佐、納品配達と全員が全てを行う羽目になっている。


 今や「エンドレス人手不足」と嘆くほどになっていた。


 人手がほしいと頼めば、事業を縮小すると言い出す始末。

 流行り病で一人が寝込めば、しばらく店を閉めると宣言した。


 従業員達は、フォスクロードの鉱山を管理する一族の、別段金には困っていない店主が、鉱石収集の趣味の一環で商いをしていることを知っている。

 突然廃業すると言い出されてもかなわない。金払いの良い雇い主を失うわけにはいかないと、今日も従業員達は、少数精鋭に磨きをかけていくのだ。



「セルゲイ、二人、領外出身者を住み込みで雇うつもりなんだが、住民登録で必要な書類を持ってきてくれ。保証人は俺の名を出す」



 セルゲイは、伯父の店の裏にいた。裏口を入口とするそこだけが、店主の居場所へ繋がっている。


 領主城への納品物を取りに来たセルゲイは、伯父の発言に耳を疑った。


 伯父の交遊関係に何かあれば、従業員から即話が飛んでくるはずであるし、領外出身者で、領民登録もないとくれば、その存在はあまりにも目立つ。


 そんな怪しさすらある者を二人も、あの伯父が雇う気でいる、とセルゲイは唖然とし、



「待った、最近領主城で事故があったばかりだ。簡単に他領出身者を領主城下で働せる、なんてのは通らない」


「通せ。なんのための軍属だ」


「クビになるわ。――で、伯父さんのお眼鏡に叶ったのはどんな人なのさ。せめて紹介してくれよ」


「手持ちの鉱石を売りに店に来る約束させたっきり、会ってはいない。俺が店に戻ったのも昨日だ、しばらくもすれば、顔を出しに来てくれるだろう」


「ま、……った、待った。雇うつもりって言っただろ、その話を相手は知っているのか?」


「知らん。来た時に言う。…………外からわざわざフォスクロードに来ているのなら、十中八九職探しだろう。金と部屋を出す、人が増えれば、うちの者も喜ぶだろうよ」


「そりゃあ職探しではあると思うけど、相手の意向もあるからなぁ、」



 さて、少し怖い話になってきた。とセルゲイは思う。


 この気難しい伯父が気に入ったという二人組。口ぶりから、そう交流はしていないように思える。


 まさかな、と思うが、心当たりがあってしまう。



「伯父さん、まさか前に連絡してきた、“金髪と白髪の、やたら顔の良い旅人”ってやつじゃないよね」


「そうだ。よく覚えていたな」



 頷く伯父を見て、セルゲイは内心頭を抱えていた。


 件の二人は、よりにもよって箝口令の敷かれたその対象である。

 いったい何をしてこの伯父を落としたのかは気になるが。


 求職どころか、二人は現在領主預かりの立場にある。


 それに、人間と竜族だ。民間人の伯父の元に置けるような存在ではない。


 悩ましさを顔に出さず、悩んでいたセルゲイの背後の扉が、ここん、と鳴った。

 セルゲイは伯父が舌打ちするのを聞き、扉の方を見る。そこは裏口だ、偏屈な伯父に用がある者のみが現れる。


 挨拶無く入った男は、セルゲイの存在を確認し、「どうも」とだけ言った。

 伯父の喧嘩相手の一人であり、見覚えのありすぎる、その無気力にも見える目付き、ヴィオ・アリーズだ。



「相変わらず礼儀のなってない若造め」


「挨拶する暇があるなら用件を言え、と言ったのはそっちだろ。――これだ、」



 店内を慣れたように進み、カウンター越し、座る伯父の前に置くのは、魔鉱石が一つ。


 セルゲイには、なんの変哲もないよく見る魔鉱石の一種に見えた。しかし伯父にとって、それは特別である様子。

 鉱石を手に取り、じっとその価値を見定め、値を口にする。



「三十」


「四十だ。磨けば変わる」


「……三十六にしろ。これから“お前の紹介”で、かなり使う」



 その言葉に、ヴィオはにやりと笑った。



「これは、先に俺が二人から買っておいた、あんたの一番欲しがりそうなものだ」


「……くそ、相も変わらず意地が悪い。三十八までしか出せんぞ」


「――ゼロだ。金はいらない」



 あっけらかんと言い放つヴィオに対し、第三部隊に所属する甥を持つ男は、甥の顔を見、魔鉱石を見、言う。



「……口止め料のつもりか。良いだろう」


「交渉成立だな。――セルゲイ、お前が証人だ。お前の

気難しい偏屈なおじさんは、箝口令の対象が人間領から来ていると知っている。が、知らなかったことにしてくれるそうだ」


「どういう、」


「なあにが気難しい偏屈なおじさんだ!お前も気難しい偏屈な若造だろうが!鏡を見て物を言え!」


「うるせぇな、あんたと比べたら俺なんて可愛いもんだろうが」


「可愛いだ?ハッ、笑わせるな。お前が」



「どっちも自他共に認める偏屈魔族だろ。気難しい同士仲良しなのはわかったから、説明してくれ。何故伯父さんが知っている」



「「全く仲良しじゃない」」と同時に言った二人は、舌打ちも同時で、苛立ちを隠さずセルゲイの問いに答えた。



「この鉱石は魔族領のものではない。魔鉱石は土地の魔力で色を変質させるが、この色を出す土地は魔族領に存在しない」


「キオンとシロは、旅の通貨に魔鉱石を用意していた。そしてお前の伯父は、領主城到着前の二人に会っていて、商材の鉱石を見てしまっている」



 セルゲイは納得した。確かに伯父は、領主城までの道中にあった二人に出会っている。



「わかった、……わかった。その時点で知ってしまったことなら、俺もとやかく言うことはない。伯父さんも、この件については絶対に口外しないように」


「ああ。もらうもんは貰ったしな」


「あとは伝言だ。明日、ここに来たいと言っていた。問題ないなら、“うちの部隊の新人二人”には裏口を案内しておく。用件は以上だ」


「わかった」



 別れの挨拶もなく、さっさと店を後にするヴィオと、本当に用件以外に興味がないらしい叔父は、一応は客の立場であるヴィオを見送る訳でもなく。


 機嫌よく、魔鉱石を眺めながらセルゲイに尋ねた。



「セルゲイ、軍属の副業はどうなんだ?第一部隊所属であっても、うちの従業員になれないことはないだろう?」



 魔王を倒した英雄様を諦めきれないらしい伯父に。

 あの第一部隊でありながら全く怯まない伯父に、セルゲイは長いため息をついた。


 もう、そう答えるしかないのだ。



「……本人達の意向次第、だと思うよ……」







 ×××××







 庭園。

 城壁の保守点検のため、壁沿いに歩いていたルカは、ついてきたアリアの蔓に肩を叩かれた。

 遊びというより、何かを知らせたいらしく、蔓は方向を示すように振られている。


 どうやら、庭園に誰か来ているらしい。蔓に誘われるまま向かえば、珍しい人物がそこにいた。


 アリアの蔓にちょっかいをかけられながら、庭園を散歩している。目隠しをしているが、視えているので行動に問題はない。



「アレクさん!」


「城壁の点検中だったろうに、呼んできちゃったかぁ」



 アレク・アリーズ。

 第一部隊に所属する、ルカの先輩だ。


 ルカの記憶では、魔法回廊の件で目を酷使しすぎだと、強制休暇を取らされていたはずだった。

 そんなアレクが、仕事でもないのに日中、出歩いていることにルカは驚く。散歩をするにも、人気の無い夜を選ぶ人だった。



「ルカ~、あの引きこもり出不精が日向にいる!……って顔してるぞ。僕だって昼間に散歩ぐらい……記憶にはほとんどないけど、するし……」


「……シズさんのとこ行きます?」


「医務室送りにされるほどの驚きとは思わなかったよ……まぁ、うん。この辺りには、ルカとアリアちゃんしかいないから、アリアちゃんの様子を見るついでにーってやつかな」



 アレクがそう言うのなら、この付近に人はいないのだろう。

 日差し自体を嫌うわけではないと知っていたので、ルカは納得した。 



「今、アリアは東屋にいるんですけど、そこで少し、俺の休憩に付き合ってくれませんか」


「ん、いいよ」



 休憩を口実に、ルカはアレクを誘う。話したいことがあったからだ。


 ――花の香りが強い。アリアは今、東屋を巻き込むように咲いていた。

 木製の長椅子に、アレクとルカは並んで座っていた。



「しばらく見ない内に、かなり大きくなった。すごいな、この香り、微弱な、治癒魔法に酷似した魔力だ。魔力であるはずなのに、魔力濃度に影響はない。主食は日光と水と魔力だっけ?」


「はい。……魔法回廊の事件の時、アリアの周囲だけ魔力濃度が平時のままでした。アリアはおそらく、汚染された魔力であっても食べます」


「グオ!」



 自分の事を話していると理解しているアリアは、蛇のような蔓をかぱかぱと動かしながら、アレクの手と遊んでいた。

 人でいえば、鼻歌混じりに、というべきか。ご機嫌らしい巨大な花からは、旋律が溢れている。



「生体は報告通り、魔物に近い、ってやつか。うーん、結局、アリアちゃんが何であるかを知るのは、無断で庭園に植えたミラ隊長だけ、なんだよな」


「……アリアはきっと、もっと大きくなる気がします。……俺、心配なんです。魔法回廊の件で、アリアは淀みの魔物と同じ、汚染された魔力を吸収して成長してしまった。だから、」


「領主兄妹に気に入られてるっていう最大の要素があるのに、アリアちゃんどうこうなることは無いって。庭園の敷地で足りなくなれば、城壁壊して庭園を広げるぐらいすると思う」


「……そうですか……良かった……」


「気になるのは、キオンにはアリアちゃんの言葉をわかる、って報告だな。キオンは……ちょっとこう、規格外なとこあるから、なーんにも、わからないんだよね」



 本当に、すごいなぁ、とルカは思ってしまう。

 アレクが言った、キオンのことだ。アリアの言葉がわかることもそうだが、――アレクに人不信の気があるのは知られていた。


 仕事以外で口を開くことはほとんど無く、そもそも人前に姿を現さない。空間把握魔法の特性から表に出ないことが当たり前でもあり、一時期、他部隊から実在が疑われていた程だった。

 ルカは、己が第一部隊で、アレクの後輩で、エリーゼの弟であるから、アレクが早々に警戒をといてくれたのもわかっていた。


 ルカはアレクの姿をじっと見、やっぱり、と頷き言う。



「……きっと、アレクさんの周りに増えたそれは、キオンさんとシロさんのなんだろうな、と思いまして」


「え!!??……え、なんか増えてる!?本当に?」



 ルカが第一部隊にいる由縁は目にあった。ただし、それはアレクと違い、説明し難い、感覚的なものになる。


 ルカは、対面で相手の力量を計る事に長けていた。

 相手が自分の力で勝てるか否かを瞬間的に判断できる。それは他者同士であっても可能だ。

 ルカ自身も、この感覚をうまく説明出来ない。魔力とは似ているようで違う、強さに起因する何かが見えてしまうのだ。

 説明出来ずとも、結果正しいことが証明となる。


 ルカの目に、アレクは、手を出してはならない人、といった印象で映っていた。


 ルカとアレクの関係性を、ルカの目は一切考慮しない。

 実姉のエリーゼですら、絶対に自分を傷付けないとわかっている上で、ルカの目としての機能は、姉を自分を簡単に殺せる者として映す。


 アレクには、この者に何かあれば、後ろから化け物が出てきてしまいそうな、そんな、警告のようなものが 見えた。



「もう、無茶はできませんね」


「……嬉しいんだけどね、なついてくれてることは」



 まんざらでもなさそうに苦笑するアレクから、見たくないと思っていたものが消えていた。


 ずっとまとわりついていた、この人は死ぬだろうな、といった感覚はもうなかった。


 ルカは、アリアを見に来たキオンとシロと少ない言葉を交わしたぐらいで、ゆっくり話をしたわけではない。


 ルカの目は、二人を、自分を殺せる者であると映したが、決して恐ろしいものとは映さなかった。 


 ――キオンは人間である、勇者であると、聞いていたのに。



「アレクさん、勇者って何なんですか。魔族を殺す職業だと教わっていたのに、キオンさんを見てると全然そうは思えなくて」



 魔族領では、人間は恐ろしいものと伝わっていた。その中でも勇者は、魔族を殺すために存在するとも。


 二年前の魔王討伐に勇者が関わったことから、全ての者が恐ろしいわけではないと知ったが、常識とされていた認識はすぐには抜けないものだ。


 ルカの前に初めて現れた勇者は、初対面であるアリアを庇い、自分に友好的でもあり、少しふわふわとしていながら、領主城を、己の先輩を救ってくれた。

 人間とは、勇者とは、ルカはそう悩み、アレクに問いかけるに至っている。



「勇者、資格制らしいぞ。人間領でただ一人、というわけではないらしい」


「誰でも、資格を取れば勇者に、ってことですか?」


「そうそう。一定の強さを勇者協会に認められれば、資格が交付され、晴れて勇者になれるそうで。人間領で最も箔のつく傭兵の称号、とも言っていたかなぁ」



 勇者協会に加盟している国は、協会が保持する傭兵――勇者の派遣対象となる。魔物の討伐から、国家間の紛争まで、派遣された勇者が敵を殲滅する。


 人間領の国は、ほとんどといっていいほど、勇者協会に加盟しているそうだ。

 加盟しなければ、有事の際、その矛先を向けられるのは未加盟国だ。


 そして、有事の理由などいくらでも後付けできた。

 そうして滅んだ国もあると、キオンは話していた。


 現在、人間領で最も力があるとされているのは、国ではなく、勇者協会そのもの。

 例え加盟国であったとしても、その裁量は国王ではなく、協会側にあるといってもいい。


 勇者の資格を持ちながら、その勇者協会に逆らってしまったのが、キオンとシロだった。

 協会の依頼、意向を蹴り、懇意にする国もなく、個人の善悪勘定で動く。



「あの二人、好き勝手にやるからと勇者協会に睨まれてはいたんだけど、放っておいても魔物や悪党の討伐をするだけだから、黙認されていたようなんだ」



 しかし二人は、勇者協会上層部にツテある国と一悶着をおこし、ついに資格の剥奪が決まってしまった。



「ただ、とある国で、二人は少しばかりやりすぎた。その件を免責する条件が、魔王討伐の任、だったってわけ」


「そしてお二人は、見事に魔王を倒してみせたと」


「死んだことにしていたのは、療養のため、だな。人間領での二人には敵が多い。手負いの所を襲われでもしたら大変だ」


「ジュード様、どうしてフォスクロードに連れ帰らなかったんですかね……ここなら、人間領よりも安全に療養出来たはずなのに」


「……そうだよな、僕もそう思う。ジュード様だってそうだ。ジュード様の申し出を断ったのは、キオンとシロの方でさ、」


「それは、フォスクロードに、キオンさんとシロさんを狙う人間達が侵入してくる可能性を見越して、でしょうか。俺達に無用な戦いを行わせないために?」


「そうなるなぁ」



 嘘ではない。しかし実情はもっと悪辣だった。


 名誉職である“勇者”は、資格の剥奪をその死でしか行えない。


 剥奪は決定事項だった。魔王討伐を断れば、資格を剥奪するための依頼が全ての加盟国に発布される。


 当時、魔王討伐の任は実質の処刑宣告であり、どちらを選んでも、勇者協会が牛耳る人間領で、二人に望まれていたのは死だった。


 アレクは、ルカにその詳細を明かす事をしなかった。人間領の印象をいたずらに悪くすることを二人は望んでいない、そう思ったからだ。


 ――魔法回廊を壊した後、アレク含めた四人は、キオンとシロから、二年前、魔王を倒した後の話を聞いていた。


 本来、キオンとシロは、魔王討伐の任を断っても良かったのだ。例え指名手配されようが、全て返り討ちに出来る強さがある。

 魔王を相手にするより、人間領で隠れていた方が間違いなく安全だった。


 そうしなかったのは、殺しを嫌ったから。


 向かってくるなら殺すしかない。しかし相手は悪党というわけでもなく、自分たちを討伐する任さえ受けなければ、人を救える者たちだ。その者達を、殺したくなかった。

 ゆえに、魔王討伐の任を受けた。


 ――だから半分、死ににいってるようなものだったんです。俺達に居場所は無かったから。


 そう語るキオンに悲壮感は無く、むしろ二人揃って晴れ晴れとしていたが、話を聞いていたアリーズ四人組はお通夜再来の空気で、アレクはちょっとだけ泣いた。



「……キオンさんもシロさんも、フォスクロードに永住を決めるぐらい、気に入ってくれると良いなぁ」


「そうだなぁ。隣領とのいざこざも、ベルゼートが死んだことでほとんど無くなるだろうし。穏やかに暮らしてくれたらそれでいいんだけど」



 ジュードや死んだ第一部隊との出会いにより、二人は別の道を選んでくれている。


 住民登録をジュードやエルティアは望んでいたが、ジュードの遺言を汲み、二人にはフォスクロードの地を見てもらうことになっている。


 フォスクロードという領を知ってもらった上で、領民となることを決めてもらいたい。それがジュードの願いだった。



「あの……アレクさん」


「ん?」


「キオンさんとシロさんって、第一部隊に所属してくれることになったんですよね」


「一応、仮、はつくけどな。ルカ以来の新人だ。よろしくしてやって」


「……多分これ、アレクさんの視察とか、皆さんの仕事についていくついでに、フォスクロードを見て回ってね、っていう、エルティア様の意も含まれている」


「……そうかも」



 重要な事に気付いてしまった、という顔で、ルカはアレクに指摘する。



「アレクさん、キオンさんとシロさんを連れて視察に出て、今まで通り人のいない夜中に仕事をして、日中宿屋に籠るとか、そんな仕事のやり方をやっちゃう感じですか」


「うっ……!!あー、そうだ、忘れてた、そうか、そうだよな……!…………………………その時は、一緒に出るしかないよな」



 あのアレクが。ここまで絆されている。

 ルカは内心の驚きよりも、嬉しさの方が断然、勝っていた。

 ルカが喜んでいることを察したのか、アリアも喜び鳴いた。



「俺、視察のお土産は、不健康的な肌の白さが日光を浴びて、不が消えた感じのアレクさんを見ること、がいいです」


「僕、ルカのそういう先輩だろうが物怖じせず言っちゃうとこ、嫌いじゃないよ……」



 

「先輩方全員、死んだら許さんぞ、っていう、柔らかいけど底から冷えるような、深い闇みたいな何かが増えてます」



「ってルカが言ってた」


「釘を刺された気分」

「……怪我、見せないようにしような……」

「とんでもないものになつかれちゃったじゃん」




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