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04:魔法回廊④


 空を駆けたい時は、魔力を足場にするか、翼を羽ばたかせればいい。魔力を足場にする一手間を考えると、飛ぶ方が足場を作る手間を別の手に回せる。


 だが、足場のある地上はどうだろうか。すでに存在する足場では、手足を使うことで自由に駆けることが出来る。

 なれば、不必要となるのが翼だ。かさばる上に大きい、当たり判定も大きい。あまりにも不便だ。


「ゆえに、竜化の段階も考えものだなと。話すことが出来ないという点でも、連携に支障が出る」


 クロツグ・フォスクロードはとてもにこやかだった。声音も普段より二割増しに高い。明らかに機嫌が良い。


 クロツグに担がれたままのイツカは、気付きたくなかったが、気付いてしまった。

 負傷はない、座標(アンカー)はイツカにあり、自力の防御行動が可能。その状態のイツカを、クロツグは片腕が塞がるというのに担ぎ、飛んでくる魔法を打ち消しながら駆け回っている。


「……クロツグ様、僕を使って、遊んでませんか」


「…………あー……、これは、そうだな。その通りだ。すまない、実戦でこうなる事は、気を付けていたはずなんだが」


 言えば、クロツグは顔色を変えた。上がっていた口角は戻り、担いでいたイツカを下ろす。

 クロツグは己の所業を振り返ったらしい。「領主補佐だというのに、俺は」と反省していた。

 悪い癖だ、クロツグには自覚はあった。


 クロツグは、いや、エルティアもそうだ。

 領主兄妹は戦いが好きだった。力押しでの蹂躙より、ハンデ付きで不利になる戦いの方が好きだった。

 相手の知らない攻撃が好きだ、判断を誤れば死ぬような、殺傷能力の高い攻撃がとても好きだ。


 最近は、領境に小競り合いに息抜きと出向いても、まともな攻撃を向けられることがなかった。今日の今までろくにガス抜きをしていなかった。

 今後の課題はさらなる理性の持続だろう、とクロツグは考える。


『イツカ、座標(アンカー)を。私も合流する』


「了解」


 エルティアの通信を受け、場の座標(アンカー)を下ろし、送る。そんなイツカを見下ろすクロツグは「むう、」と悩んでいるようだ。


「遊んでいる、ということは一手で目的を達成出来るような、攻勢に出られる手段がある、そう思わないか」


「はい、僕も、そう思います」


「俺は魔法に詳しくはない。突拍子のない馬鹿馬鹿しい発言になるかもしれんが……魔法回廊の件だ。片方穴が空いているのなら、空いた方から向こう側を、内側から仕掛けるのは可能ではないのか」


「……ううむ、どうでしょう。僕も詳しく視たわけではなく、出来るか出来ないかは判断しかねます」


「……そうか。ふむ、」



 ――この会話も、領主との通信も、ベルゼートに傍受されていた。

 遊んでいた、というのはその通りで、見ていたのは術者の癖だ。ベルゼート・ネクロの意識が入った魔法生物は、若い魔族をじっと見る。

 外で出会ったのなら、もう少し遊べただろうに、と思った。城内でなければ、と心から残念に思う。


 ベルゼートには、一手で目的を果たす自信があった。

 術者を殺せばいい。未来ある天才の芽を摘むのが、ベルゼート一番の楽しみだった。死に様を思い浮かべるだけで、自然に口角が上がってしまう。

 傍受した通信から、領主もこちらに合流するという。領主の合流はさすがに面倒に思えた。名残惜しいが、遊びは終わりとなる。


 それは、竜族が抱えていたために出せなかった一手だった。戦闘経験の少ない若い魔族の、展開する障壁の癖に合わせたものだ。


 障壁は魔法である。魔法であるなら消せる。

 これまで同じ障壁で防げていたものが、次の一回、同じ障壁で防げるとは限らない。


 強固な障壁を展開出来るからこその驕りか。

 向けられた魔法の感知も早く、その感知距離もわかりやすい。


 どのタイミングで気付き、障壁を展開するか、そのあまりにも規則正しい動きに感嘆すら覚える。それはそれは、なんと合わせやすいことか。


 ベルゼートは笑い、姿を隠したままそっと、その指先をイツカの心臓へ向けた。

 それは、魔力を絞った、細く、しかし速い光線。

 常人には気付かないそれを、やはり、イツカは気付く。

 展開される障壁は速く、光線を弾くはずだった。


「え、」


 イツカから驚きの声がもれる。最初から穴があったかのように、光線は障壁を抜けた。その殺傷能力を維持したまま、イツカの胸に刺さり、突き抜ける、はずだった。


「これだ」


「え……え……!?」


 イツカの前に差し込まれたのはクロツグの手だった。その手のひらで、ベルゼートの攻撃を受け止めていた。


「これも、気になっていた。お前の障壁は速く強固だが、攻撃に気付く距離も障壁展開の速度も実に規則正しい。その規則正しさを利用されることもある。先に言おうか迷っていたが、実戦で見てほしいと思ってな」


 クロツグの手の平は赤く、開き閉じる動作確認のような挙動により、ぼたぼたとさらに出血した。


 イツカは、これは自分の戦闘経験の少なさが引き起こした状況だと、その不甲斐なさと悔しさを飲み込み。


「すみません。……ありがとうございます、二度と、同じ失態はおかしません」


「わかっている。言わなかった俺も意地が悪いからな。……それで、座標(アンカー)は消えたか?」


「……?いえ、まだ残っていますが、」


 イツカの返答に、クロツグは視線を周囲へ一周させた。そして、「仕留めているはずなんだが」と言い、通信を繋げる。


「エルティア。座標(アンカー)が消えていないそうだ」


『変ね。生きてはないと思うんだけど、……クロツグ、イツカ、ちょっと来なさい』


「殺したんですか!?いつの間に!」


「合流すると言っていただろう」


「それはこの場にで、相手の位置は不明のはず、」


『あら、領主城は私の家よ。座標(アンカー)がなくても、異物が城内にいれば感覚的にわかるに決まってるじゃない。ねぇ、クロツグ』


「視覚で捉えられなくても、存在あるならばそこに在る。在るなら殴れる。殴れるなら殺せる。そういうものだ」


「……そういうもの、ですか……」


 ああ、そうだったな、とイツカは思う。

 やれ戦闘狂、脳筋と揶揄される二人だが、常軌を逸したその感覚は笑えないものがあった。味方で良かったと心から思う。


 座標(アンカー)がまだ残ることから警戒は維持しつつ、イツカはクロツグの後に続いた。

 嗅覚に感じた通り、血溜まりと死体と、エルティアがいる。「これ視て」と差し出して見せたのは、血濡れた魔鉱石だ。


「中から出てきたの」


 その中、とはベルゼートの中、のことだろう。

 イツカの目にも明らかに、ベルゼートは絶命していた。人の身は、肩から縦に半分にされ生き残れる作りをしていない。イツカは死体から目をそらし、魔鉱石に集中する。視てと言うならば、使うのは己の目と、空間把握魔法での目であろう。

 目視で確認する。まず、魔力があった、ベルゼートの魔力だ。魔法生物に使われる核石のような印象を受ける。


「ベルゼートは、過去二回、殺したと報告があった者よ。でも、ここに転がっているから、殺せてなかったようね」


 エルティアが提示した情報に、イツカは空間把握魔法を発動、目視で見た違和感を確かめるように、死体を確認した。


「……この死体は……虚、(から)です。死んだばかりにしては、身体に魔力が全く残っていない。まさか本当に魔法生物……?」


 魔法生物なら、核を抜いても尚ガワが残っているのが気になる。エルティアの持つ魔鉱石もまだ生きていた。

 この魔鉱石は、魔法生物の核としてだけでなく、他にも何か仕込まれている。


「魔鉱石も、まだ生きています。魔力が動いている、これは……なんだ、座標(アンカー)……?」


「ふむ、魔法生物の位置共有、知らせる相手が別でいる、と。……壊すか?」


 クロツグの問いに、エルティアは返事を行動で示そうと魔鉱石を握り――イツカは、まばたきの一瞬、魔力が揺らめくのを見た、


「っ、エルティア様!」


 そこになかった腕が、手が、エルティアの腕を這い掴んだ。

 しかしエルティアは動じず、魔鉱石ごと“空間転移してきた”腕から先の存在を、握り砕き切る。ぼとりと落ちた腕はもう動かない。


「クロツグ。すごいわよ、結構痛かったの。私」


 エルティアの掴まれた腕、その袖が内から血で滲み染まっていく。滴り落ちる血にイツカは顔色を変え、治癒魔法を、と開いた口を、エルティアは制した。


「イツカ、今回はいいの。自力でなんとかさせて。……敵からの攻撃で痛みを感じたのは久々で……私今、すごく反省しているわ」


 眉間に皺を寄せ、「油断したわね、私」という姿は、兄とそっくりだった。


 出血はあるが本人から制され、問題ないというような口振り。大丈夫ならば、とイツカも安堵する。


「イツカ、先程のをどう見る。空間転移か」


「はい。身体の一部のみの転移です。腕が切断される覚悟での――いや、この腕、死体と全く同じです。となると、あの動いた死体もそうで、死体を座標に空間転移した……?」


 空間転移、クロツグの言う通りだ。

 イツカは頷き、落ちた腕と死体を見比べ答える。そして、座標(アンカー)を刺されたタイミングから、領主城を囲んでいた障壁が空間転移を妨害していたと察した。


「僕に座標(アンカー)を刺したのはこの死体だと思います。そしてアンカーは術者の意思によるものか、死ぬかしないと消えない。それが消えていないとなると、やはり外部の、」


「魔法生物を遠隔で動かしていた者による、座標(アンカー)。殺した報告はあがるのに仕留められない。これが、本体は別にいる、という話に繋がると」


「……なにが本体は俺達で仕留めます、よ。説明せず結果だけ報告に来るミラといい、これだから第一部隊は」


 第一部隊。エルティアが指すその対象はエリーゼではない。ルカでもない。

 ミラと並べ出されるとすれば――アリーズ出身の四人だ。

 そこに、断片的にきいた情報を重ねる。地下倉庫の魔法回廊、その繋がる先、ベルゼートの情報。


「……この件に関わるのは、アリーズ出身の四人ですか。もしや、あの魔王が創った魔法と、この魔法生物を使う魔族相手に、四人だけで、」


「もう四人じゃないわよ。今は六人」


 あっけらかんとエルティアが言う。


「行ったのか、あの二人は」


「ええ。お父様を帰してくれた二人だもの、あの四人ぐらい、生きて連れ帰ってくれるわ」


 二人。イツカが思い浮かべたのは、金髪と白髪の男女。客の二人、キオンとシロ。イツカには、目に付与されたキオンの魔力が未だ残っている。


 このような、個人の魔力の通しを最適化するような、魔法の性能が数段階跳ね上がるような魔法をイツカは知らなかった。竜の姿で吠え、魔力濃度を散らすような芸当も、また。


「……何者なんですか、あの二人」


 直後、エルティアの答えに、イツカは驚き、そして、納得することとなる。

 

「あの二人は、二年前、お父様を魔王城から生きて帰した者たち。魔王を殺した張本人よ」







 ×××××








 ――『対象座標(アンカー)、接敵まで三十秒』



 先行するリベルは一人だった。目視上では。

 目視でリベルの同行者を捉えることは難しい。しかし、アレクの視野には追従するシロが視えていた。



 ――『僕は追加の座標(アンカー)を刺しに行く、随時共有するからそのつもりで』


 ――『露払いはこっちでやる』


 ――『同じく!』



 アレクは後方で発動した空間把握魔法を広げる。その側にはシズとキオンがいた。



 ――『了解了解~、じゃあシロちゃん、やるぞ~!』


 ――『はい!』


 ――『応援してるぞ皆。……はー、俺も混ざりたい』







 ――数分前。


 ヴィオを除いた全員で乗り込む。そう決まったが、戦闘スタイルの共有が出来ていないという問題があった。


 アリーズの四人はお互いの手を把握しているが、キオンとシロはそうもいかない。

 高位の攻撃魔法を使う者ほど、巻き込む可能性から一人でいるか、慣れた相手としか組めない。


「確かに」と大真面目に頷いたキオンとシロも、その危険性を理解しているようだ。


 続いて、「俺達の戦い方は、きれいじゃないから」と不穏な事を言い出したので、アリーズの四人は「綺麗じゃない戦い方って何!?」「怖い」「どうなるの」『怖いもの見たさある』と口々に言った。


「それに、私は口からビームが出るから」

「射線上は危ない……」


 さも当たり前のように出たビームという単語である。


「まった、やっぱこの、戦闘スタイルのすり合わせを深堀りするのやめよう。気になりすぎて話が進まない気がする!!」


 ビーム発言が気になるが、それは後にでも、生きていればいくらでも聞けることだと、リベルは話を切り、


「俺は突っ込む、そんでアレクとシズは後方。キオンとシロちゃんはどうする?」


 キオンとシロは顔を見合せた。そして、キオンはシロの手を取り、するりと離し、喉に触れ、シロにより表に回された尻尾にも触れる。


 その一連の行動は、何かしらの付与だろう。そうリベルとシズは認識し、アレクはもしや、と勘ぐったが何も言わず。


「私がリベルさんと突っ込みます」

「俺はアレクさん、シズさんと一緒に。前に出る時は宣言します」


「オーケー、ちなみに口からビーム出たりする?」


「出ます。意表を突けるので、有効打になりやすくて」


 照れたように言うが、口からビームとシロがどうしても繋がらない。


 そうして四人は、意識に“ビーム”のいう単語を残しながら、大まかな動きを決め――ついに、接敵となる。




 ――『座標(アンカー)送る、ベルゼート個体に注意』


 リベルとシロの目に映った大量の座標(アンカー)は、数秒後沈黙した。

 雑魚を意識する必要はない、シズが撃ちもらすはずがないと、リベルは信用していた。


 ベルゼートの個体は現在二、どちらも視線はリベルにあった。シロの姿はない。しかし近くにいる。


 敵は空間把握魔法を使う。シロの存在に気付いていないのか、優先順位付けされているのか、リベルに判断はつかない。

 座標(アンカー)も刺される前提で動いているが、刺された感覚がない。というより、すぐ側で魔力が弾ける音がする。刺されようとする座標(アンカー)の妨害を感じたが、アレクにしては音が激しい。


 ――出し惜しみせずにいられるのは助かるな、


 リベルは思う。そして魔法を展開した。対象範囲はベルゼートの手首から先。



 ベルゼートは向けた指先から魔力が消失するのを感じた。

 同時に、魔力を流した分だけ消失することも把握する。魔法は魔力ありきのもの、奪うではなく消失だった。

 微か微少でも必ずそこに存在する、魔力あるこの世界で、魔力の存在そのものを無くす空間を作り出すとは、


「――面白い魔法を使う」


 ベルゼートは笑った。驚異的な魔法だが、小範囲だ。

 座標(アンカー)を対象として遠距離を可能とし、広範囲に展開しているのなら、すでにそうしているはず。

 魔法である以上、自分を範囲内には入れられないとも予想付けた。

 そして、対峙する距離で初めて発動を可能とする。手を狙ったのは、魔法を使う者としての手癖を狙ったか。


 ベルゼートは、魔法を受けたと認知した数瞬でリベルの魔法を理解していた。ゆえに、隙は数秒もなく。


 だが、数瞬で十分だった。

 リベルはその手が吹き飛ぶのを見た。シロだ。


 そして、シロの口が開かれる――リベルは、ベルゼートの個体二つが直線上にあると理解し、障壁を出すであろう範囲の魔力を、その一瞬のみ、無効化した。


 熱量を持つ魔力の塊が、今放たれた。


「……すご、」


 ビームだ。本当にビームが出た。リベルは戦闘中でありながら目を丸くした。


 障壁展開速度が裏目に出たベルゼートは、リベルの一瞬のみ魔力消失により、シロの攻撃をまともに受けることとなった。


 直撃したベルゼートの上半身は半分抉れているが、しかし倒れず、シロの首に掴みかかる――が、それを見ていたリベルが許すはずもなく。


 リベルの動きをわかっていたかのように、シロは己に伸びる手を無視し、同じく攻撃を受け損傷するが倒れない、ベルゼートの別個体に突進する。



 ――『転移、くる』



 アレクによる警告。

 リベルは、切断面から露出した魔鉱石を見て舌打ちした。


 ――これが死体への空間転移、座標(アンカー)になっていたのか、すぐ燃やすんだった。


 場面が切り替わるように、五体の揃ったベルゼートが現れる。


 魔法は、魔力を収束させ発動される。

 人は魔法発動時、手や足など、身体の先、点を軸に魔力を収束させる、そのようにイメージする。

 リベルの魔法は、魔法使いの、どこに収束させるか、その手癖から魔法の発動を妨害するものだった、が。


 無論、身体の何かしら以外に魔力を収束させることは可能だ。リベルが魔法を視線で行えるように、ベルゼートもまた、行える。


 リベルも、この程度の魔法で抑え込めるとは思っていない。だがこれは、戦闘において、魔力が消える消えないの選択を押し付ける魔法。

 苛ついてるだろうよ、とリベルはベルゼートを挑発的に睨み返す。


 そして、ベルゼートはリベルの挑発する視線を認識し、たが、その目に焦りが混ざった。

 シロにより仕留め燃やされたベルゼートの別の個体が投げつけられたからだ。しかし、障壁がある。衝突音、障壁に阻まれ潰れ、ずるずると落ちる死体。直後、その衝撃音を上回り、障壁の強度すら越える衝撃。


 砕かれ粉々に消滅する障壁の向こうには、まるで狂った獣、理性の消えたような目をしたシロがいる。


 拳から血をにじませながら、無理やり障壁を砕いたシロが間近に迫っていることを知り、ベルゼートは初めて顔を歪ませた。ついに気付いたのだ、覚えのあるシロの魔力をどこで知り得たかを。


「……お前は、お前達は、まさか!」


 驚きから、意識をシロに持っていかれたベルゼートは、リベルの魔法への警戒を怠ってしまった。



 ――『見付けた。あとは全部、殺してくれ』



 アレクの静かな宣言に合わせるように、障壁も、攻撃魔法も全て発動前に消滅させられたベルゼートは、シロの手により機能を停止した。


「リベルさん、私、行きます」


「わかった」


 視界に共有された新たな座標(アンカー)が離れていく。リベルの返事を受け、シロの姿はまた消えた。










 ――『リベル、キオンも行った』


 ――『了解~』


 キオンも追ったと伝えたシズは、俯いたアレクを見た。その表情から、何か視たと、しかし通信に流せないと察したアレクは、その肩を叩くように手の甲を当てる――接触通信だ。


 『なにか視たのか』


 『あいつ、サーシャ先輩の目を、戦利品として見せつけてきた』


 それは、第一部隊に所属していた、アレクと同じ空間把握魔法を使う女性の名だ。

 二年前に魔王城に行き、戻らなかった人だ。その目を潰し殺したと、ベルゼートは自慢げに言った。そうアレクは語り、そして。


 『キオンは、サーシャ先輩も知っていた。あの目が、誰のものであるか知っていたんだ』


 アレクの中で、情報が繋がろうとしていた。

 キオンがアレクに言った、“二度目は嫌です”。


 あの時重ねていたのが、同じ部隊に所属していた女性であったのなら。そうで、あるならば。


 アレクは、空間把握魔法に便乗し同行するという芸当を見せたキオンを思い出した。


 あの、怒り狂う様を、思い出していた。






 


 

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