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9 休日の早朝




『僕、獣人国に帰らなきゃいけないんだって』

『え、帰っちゃうの?』

『うん。もう、あまりここには入れないんだって』


耐え切れなくなった涙がポロポロと落ちる。


『やだよ、行かないで』


幼い私はどうしようもない駄々をこねる。


『ごめんね、でも絶対に君に会いにくるよ』

『会いに…?』

『うん。そしたら、結婚しよ』

『結婚?』

『そう、パパとママみたいになるんだ』

『じゃあ、ずっと一緒に居られる?』

『うん!』




今日は久しぶりに昔の夢を見た。

何も知らずに約束をしてしまった、私の番との幼い頃の記憶。

結局、その後私の番と会う事は無かった。私は、周りに獣人がいないし思い人は今でも初恋を引きずり続けてる人間だから、番関連であまり困った事はない。というか、番があるせいで恋愛一つ出来ない。どうせ、好きな人ができても結ばれる事は出来ないのだから。


今日も母への手紙をポストに投函しに行く。


そう。あれからも色々と他にないか考えてみたが、結局クリスティーナが断罪されるのを今更阻止するのは難しいだろうという結論に行き着いた。

王子が断罪をこの時にするという事は、バックに王が着く見込みがあるからに違いない。でなければ、自分の王位継承権が消えるだけだ。

どのみち、断罪を阻止した所でクリスティーナがこんな国で幸せになれる事は無いだろうし。


私の考えには、まず裏の王子の協力が必要なのだが…


「どうにかして裏の王子と会えないか…」

「僕がどうしたんだい?」

「わっ!!」


急に後ろから声をかけられてびっくりする。

振り向くと、裏の王子がニコニコしながらいた。


「裏の王子ですか。驚かさないで下さい」

「ごめん、そんなに驚くと思ってなくて」

「こんな時間にどうしたんですか?めっちゃ早朝なんですけど」


今日は学校が休みの日の早朝5時だ。


「いやぁ、偶々体を使えれてね〜って、君そういえばかなり雰囲気が変わるんだね」

「そうですか?」

「流石に分かるよ。もう一人の僕は分からずに君をナンパしてたけど」


そうか、今日は学校じゃないからバレッタと普通の靴を履いているんだ。裏の王子は分かったみたいでよかった。


「でも、この前の時私の事を男だと言いましたよね?」

「いや、分かってたよ!ただ、もう一人の僕が君の事を勘違いしていたのを知っていたからそういうフリをしただけで…ちょっと一瞬分からなかったけど…」


いや、結局男だと思ったんかい。別に良いけど、全然気にして無いから良いけど。


その後、とりあえず私のポスト投函までついて来てもらってから近くの公園のベンチに座った。


「あー、クリスティーナに僕の事言った?」

「言いましたよ。かなり困惑してました」

「そりゃそうだよねー」


うんうんと頷く。

正直、めっちゃ話しやすいな、この王子。


「そういえば、丁度聞きたいことがあったんです。裏の王子が表の王子を操作する事は出来ないんですか?」

「ん〜、難しいなぁ。でも、出来なくはないよ。言うと、僕がもう一人の僕に話かけて誘導する事が出来るんだよね」

「表の王子は今の王子に干渉出来ないんですよね」

「そうそう。元の体の持ち主が僕だからか、僕が主導権を握っている時は彼は寝ているらしいんだよね。だから、今の事もこの前の事も彼は覚えていない」


何ともご都合主義だ。こちらとしてはラッキーだな。


「なら良いですね。実はお願いしたいのですが、断罪を避けたとしてもクリスティーナは幸せになれないと思うんです。私もウメも、クリスティーナには幸せになって欲しく思っているんです。私達を案じるよりも。」

「そうだね。僕が言うのも何だが、幸せになって欲しいよ、彼女には特に」


王子の顔はとても悲しそうに歪んでいた。

確かに、今までクリスティーナがもう一人の自分に酷い事をされているのを自分ではどうしようもできなかったのだろう。表の王子が裏の王子の言う事を聞くとは思えない。


「それなら早いですね。実は…クリスティーナの断罪内容を変えて欲しいんです」


でも、あいつが話を聞かないとも限らない。




王子と別れて、寮に帰る。


「今日はやけに霧が濃いな」


そういえば、昨日誰かが明日は濃霧だと言っていた気がする。

突然、体がブルっと震える。

獣人の実体験からすると、身の毛がよだつ時は何かしら良くないものを感覚が感じ取った時だ。


「まさか…いや、そうだ!!」


急いで身構える。まだ、朝6時、人は殆どいない。

こんな日は確かに好都合だ。


ー獣人の捕獲には


そう思った瞬間、後ろから手で口をおさえられてしまった。



「ごめんな、嬢ちゃん」


そう言う声を聞いたのを最後に意識を手放した。












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