6 父の手掛かり
表現の修正等、後から少し修正するかもしれません。
お昼休み。
今日の私は木の上で日向ぼっこの最中だ。この学校に来てからもう半年、いい思い出が多くて我ながら驚く。
まさか、王子の婚約者に教師になってくれ何て言われて挙げ句の果てにはお助けキャラになるなんて。
「まぁ、お助けキャラっぽい事は何もしてないけどな」
今までしたとすれば…
王子の足音が聞こえたら素早くクリスティーナに知せたり(獣人の耳のお陰)
去年知り合った鑑定士を紹介したり(何でも私物を売りたいんだとか)
友達の薬師から貰った薬をクリスティーナに売ったり(婚約の座を狙う令嬢によって薬が盛られるだとか)
…思ったより役に立ってるな。
それに、本当のこの学園に来た意味は父の行方を探す為だ。
しかし、こっちの方は中々進まない。ウメにも協力を頼んだが、そういう類の噂話は聞かないと言われた。
「どうしたもんか…」
木の下辺りでガサっと音がした。
みると、学園の生徒らしき人が2人コソコソと会合をしていた。
「……見つ……か?いや、いい素材……な……」
悪巧みでもしているのだろうか。
しょうもない悪戯ならいいが、タチの悪いイジメや嫌がらせならあまりよろしくはないだろう。
こういう時に便利な耳が私にはあるのだ。
隠していたケモ耳をピョコッと出してさっきの声を聞き取る。
「おい、依頼はどうすんだよ」
「そりゃ行くに決まってんだろ、主人からの命令のようなものじゃないか」
「ケッ、こんな趣味の悪いのを受けなきゃならないなんてなぁ」
「まぁ、獣人を見つけて持っていくだけで金貨500枚だぜ。こんなにもおいしいもんはねえよ」
「んじゃま、行きますか。今回はこの国に獣人が来てるらしいから、そこの辺り狙いでいくか」
そう言って男達は去っていった。今すぐにでも飛びかから無かっただけ偉いと思う。
まさか、獣人攫いを稼業にしている輩がいるなんて…
獣人は一般の人よりも極めて身体能力が高い。それに、魔法を持っている可能性もあるので今までさらう者はいなかった。返り討ちにされるからだ。
それに獣人国の人間は戦後以降、基本国から出る事はない。
外で自分達がどういう風に思われているか知っている為だ。獣人も単体の力は強くても、集団には勝てない。それに、人間よりも集団行動を意識しやすいので、周りの国民からの圧もすごい。
私の父のような例外の獣人くらいしか今は他国にはいないはずだ。
と言う事は、獣人を捕獲している奴らは何か秘策でもあるのかもしれない。それに、私の父巻き込まれている可能性が高い。
◇
昨日の男達の顔は覚えておいた。
私の一つ上、2年C組のレイジ先輩とリュカ先輩だ。
彼らは今、獣人を探している。となると私が捕まって内部に入るのが一番早いのだが、相手を知らない以上下手に手を打てない。
まずは情報収集だ。
クラスの人やクリスティーナに聞いて分かった事は、
平民出身の学生だそうで、成績は中の下だが体育の成績はかなりいいらしい。
街の何でも屋を二人で営んでいたとか。
基本、二人で行動しており幼馴染のような関係らしい。
気になるのは何でも屋だな…
今日の昼休みには、2年生の教室に行ってみよう。
「えーっと…」
2年生の階に来たものの、クラスの配置が1年生と違うので分からない為探さなければならない。
「わっ!!」
「うぉ!!」
つい、キョロキョロしていたので不注意になっていた為に曲がり角でぶつかってしまった。
「すみません」
慌てて頭を下げる。先輩で、尚且つ貴族の可能性が高いので不満を買ってしまうととてもまずい。
「いやいや、こっちも悪かったからさ。嬢ちゃんは大丈夫?」
顔を上げると、そこには私が探していた対象のリュカ先輩がいた。手を差し出してくれていたので素直に受け取る。
「い、いえ大丈夫です」
思ったよりも親しみやすい?のか。いい人そうなオーラを出しているが、逆に怪しくなってくる。
「ん?もしかして、1年生?」
「あ、はい。1年C組のリンといいます」
「リンちゃんか、かわいい名前だね。名字が無いって事はもしかして平民?」
「はい。もしや、先輩も平民なのですか?」
「おう、俺はリュカ。2年C組だ」
その後も少しばかり平民話で盛り上がり、別れた。貴族率の高いこの学園ではやはり、平民同士親しみやすい。
思ったよりも簡単にコンタクトが取れた。
その日の放課後は授業の日だった。
「今日の授業を始めます」
「はい!」
もう何回目かも分からないくらい授業は続いており、何かとトラブル無しで済んでいる。
でも、クリスティーナを王子の護衛が呼びに来た時はヒヤッとしたけど。
「獣人には、人間と違う点がありました。何でしたか?」
「魔力を持てる事と身体能力が高い事です」
「個人差はありますが、基本そうです。しかし、もう一つあるんですよ」
あまり他国では知られていないが、獣人にはもう一つの習性がある。
「番制度があるんです」
「つがい?」
「ええ、運命の相手とでもいうんですかね。番を結ぶとその人としか結婚出来なくなるんですよ」
より詳しく説明すると、
番は、獣人特有のフォルモンをお互いに擦り付ける感じで行うとなれる。そして、一度番ってしまうとその相手以外とは結婚出来ないので、よく幼少期に遊び半分でなった番が問題になったりする。番の解消はかなり難しいのだ。
そして、もう一つ。運命の番というものがある。
運命の番とは、遺伝子レベルで結婚すべきって感じのやつだ。それ以上説明しようとしたらウメの教育上悪い。
「こんな感じかな。強い結婚の誓いって感じだよ」
「そうなんだ、私にもいるのかな?」
「うーん、ウメからは他のフェロモンは感じないから大丈夫そうだけどね…専門家じゃ無いからちょっと分かんないけ」
「そっか。じゃあ、リンにはいるの?」
やっぱり聞かれるよなぁ…。私も番については父伝いだから今はどうか知らないので、もしかするともう勝手に解消されているかもしれないが、いる。
少し、気まずげながら小さく頷く。
「い、いるんですの!???」
「ま、まぁ…」
「どんなお方なのですか?」
ウメから聞かれたはずなのに、クリスティーナがすごい食いついて来て質問攻めにされる。
「幼少期に結んじゃったやつだから……あんま…」
「リンは、その人の事は好きなの?」
小さい子の意図しないグサっとくる言葉が来た。50のダメージと麻痺をくらった気分だ。
「ゔ……好きだよ。一応…」
その後、質問攻めにされる前に無理あり切り上げて終わらせた。
危ない。年頃の女の子には好きな話題だったか。
◇
「あ…!」
授業の終わりにクリスティーナが声を上げる。
また質問攻めが再開するのかと身構える。
「そうですの!リンに聞かれた、レイジ先輩とリュカ先輩についてなのですが」
あ、そっちか。
「思い出したのですが、そのお二人は私の家が推薦してここに来ていますの」
「そうなのか。何故なのかとか分かったりする?」
「すみませんわ…そこまでは。お父様の管轄ですので」
お父様という言葉にウメが反応して嫌悪を露わにする。もしかすると、親子間はあまり良くないのかもしれない。
「すまない、変に深く聞いてしまって」
「いえいえ、大丈夫ですわ。あまりお父様と仲良く無いのは仕方ないので」
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