計画
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「‥‥考え?」
「そう。ユリア、貴女、今すぐ出奔しなさい」
「今すぐ?出奔?」
「おい、ビビアン何を」
「私に考えがあると言ったでしょ? エルジー伯爵からの求婚を伝える前に出奔した事にするのよ。求婚を聴いてからの出奔は私達の不手際になるわ。でも、伝える前なら、なんとか言い逃れ出来るんじゃなくて?」
「‥‥まぁ‥‥」
「『修道院に入り、両親の冥福を祈る日々を送りたい』とでも書き置きを残しておけばどうかしら?」
「‥‥そう上手くいくか?」
「いかせるのよ。 で?どうするの?ユリア」
「行きます!修道院。出奔します!」
そう言うとユリアは執務室を飛び出して、自室へと駆け出して行った。
「お、お嬢様。どうされました?」
ばあやのマギーも慌ててユリアの後を追う。
年のわりに動けるマギーであった。
「ばあや、荷物を纏めるの手伝って」
「荷物?」
「うん、私これから出奔するのよ」
「はぁ?出奔?」
「そう、修道院へね」
「しゅ、修道院ですって?」
「お嬢様はまだ17ですよ?何でまたそんな」
「訳は部屋でね」
自室に着くと、ユリアはすぐさま旅行鞄を寝台の上に広げた。
そして、手早く質素な服に着替えてウエストバッグを身に付けた。
マギーは乱れた息を整えながら、ユリアへと近付いていく。
「お、お、お嬢、様。なん、で修道、院なんて‥‥」
「私にエルジー伯爵から求婚状が届いたの。それから逃げるためよ」
「は? え、エルジー、伯爵?‥‥あの?」
「そう、あの」
「そんな、お年が」
「それはいいの。とにかく、早く此処を出ないと。適当に着替えを鞄に詰めてくれる?」
「え?は、はい」
慌ててマギーは着替えや日用品を鞄に詰めていく。
それを横目に見ながら、ユリアは机の引き出しにしまってあった小さな宝石箱を取り出して、そっとウエストバッグへと入れた。
他にも化粧品やら身の回りの物を入れていく。
そう、このウエストバッグは魔法の鞄・マジックバッグだった。
10才の誕生日に父にねだって買ってもらった物だ。
父はどうせならと奮発して容量の大きい物を買ってくれた。
もともとユリアは何かの時の為に、マジックバッグに携帯食料や飲み物、着替えや靴などいろいろ入れてあったので、それが今回は本当に役に立った。
なのに何故、旅行鞄を用意するのか‥‥‥。
それはユリアのある計画の為だった。
以前から考えてはいたが、いつ実行するか決めかねていた計画。
それを実行する時がきたのだ。
ユリアの父親違いの弟、9才になる異父弟のマルクに会いに行く事。
直接会えなくても、遠くから確認するだけでもいい、そんな事をずっと考えていた。
(ちょうどいいタイミングだわ。マルクに会いに行こう。あっ、書き置き)
思い出したユリアは、机に座ると手紙を書き出した。
『 私は修道院に入り、父と母の冥福を祈る日々を送ります。
ユリア 』
(簡単だけど、これでいいわ。いかにも慌てて書いた、って事で)
筆記用具もウエストバッグに入れると、振り返ってばあやを見る。
もう旅行鞄に詰めて終わったようで、涙を溜めた目でユリアを見つめていた。
「お嬢様‥‥」
「大丈夫よ。リモーネ修道院に行くから。あそこなら小さい頃から行っていたから顔見知りの修道女様もいらっしゃるわ」
(勿論、マルクに会ってからの話だけどね)
「‥‥うぅっ‥‥」
「心配しないで、ばあや。私は大丈夫。エルジー伯爵と結婚するより、うんといいわ」
「ばあやはお嬢様の花嫁姿を見とうございました‥‥」
「うん、ごめんね。とにかく、もう、行かないと」
「は、はい」
ユリアとマギーは部屋を出て玄関へと急ぐのだった。
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:*(〃∇〃人)*: