突然の求婚
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ユリアが3人を見つめていると、叔父から声がかかる。
「ユリア、このあと執務室に来てもらえるかな?」
「は、はい。わかりました」
………………………
……………
「お嬢様、いったい何の話でしょうか‥‥‥」
「さぁ。わからないけど、なんとなく良い話だとは思えないわね」
「‥‥‥」
心配するばあやを廊下に残し、ユリアは執務室のドアを叩いた。
「入りなさい」
執務室に入り、執務机に目を向ける。
父が書類仕事をしていた姿が浮かび、胸がギュッと苦しくなるのを我慢して、今そこに座っている叔父を見つめた。
叔父の横には継母が寄り添うように立っている。
「叔父様、どのようなご用事でしょう」
「そんなに緊張することはない。まぁ座りなさい」
執務机の前に向かい合うように置いてあるソファーにそっと腰をおろすと、叔父と継母がもう片方のソファーに座った。
叔父は笑顔でユリアを見て話し出す。
「可愛い姪のユリアに良い嫁ぎ先を見つけてきたよ」
「え?私の嫁ぎ先?」
「えぇそうよ。安心してちょうだい。立派な方よ」
継母も笑顔でユリアを見る。
「あの、どなた‥‥なのですか?」
「お前には勿体ないくらいのお方だ。エルジー伯爵だよ」
「‥‥エルジー伯爵?」
ユリアは以前参加した夜会を思い浮かべた。
年の頃は父トマスと同じくらいの紳士が笑顔でユリアに声をかけてくる。
背は高くスラリとした体躯、後ろへと流された黒髪、青空のような青い瞳、整った顔立ち、所謂美男子と言える。
女性受けする見た目通りに、色恋の噂が絶えない人物だった。
そんな紳士がユリアに声をかけてきたのだ。
「初めましてお嬢さん。私はビクトル・フォン・エルジー。エルジー伯爵家の当主だ。お嬢さんのような美しいご令嬢に会えて、私はなんと幸運な男なのだろうか。お嬢さんの名を教えてもらえるかね?」
ユリアは緊張しながらも、なんとか名を名乗り、丁寧にカーテシーをした。
父よりも高位の貴族だから緊張したというよりも、その紳士の視線に緊張したと言った方が正しかった。
やや不躾な、品定めするかのような視線。
初めて感じる嫌な視線だった。
手を差し出されダンスに誘われたが、脚を痛めていると嘘をついて断わる事が出来たのは幸いだった。
「是非とも次回は」と言われ、曖昧に微笑んでなんとかその場を辞する事が出来たのも本当に幸運だった。
要するに、ユリアにとってエルジー伯爵は苦手な人物であった。
出来れば会いたくないほどの。
「あの‥‥本当にエルジー伯爵なのですか?」
「勿論、嘘など言うものか。姪の結婚相手を探していると言ったら、是非とも妻に迎えたいと言われたんだ。そして、このように求婚状が届いた」
叔父のダグラスは一通の書状を手に取り掲げて見せた。
「あの‥‥エルジー伯爵はお父様と同じくらいのお年だとうかがっております。本当に私に求婚されたのですか?」
「勿論、ユリア、君にだよ」
「ええ、そうよユリア。こんな素晴らしい相手はいないわ。年齢差なんて些細なことよ」
「でも‥‥」
「ねぇ?ユリア。もしかして、あの噂を気にしているの?あんなもの気にする事は無いわ」
「おぉ、そうだとも。貴族家の当主ともなれば、珍しくもない」
「そうよ、別邸に愛人を何人も住まわせているなんて大した事は無いわ」
「え?別邸に愛人?それ、本当ですか?」
「あら‥‥この事じゃあないの?」
「私は‥‥女性との噂が絶えない方だなって‥‥」
「あー、まぁいいじゃないか。ユリアを正妻にって言ってくれているんだ。エルザ義姉上とよく似ているユリアを大切にしてくれるさ」
「‥‥何故、ここでお母様の名が?」
「あ‥‥それはな‥‥」
「若い頃、エルジー伯爵は貴女のお母様に求婚していたのよ。選ばれたのはトマスだったけれど」
「お母様に‥‥」
「まぁそういうことだ。だから、心配することは無い。大切にしてくれるはずだ」
「それでも、私、嫌です。まだ結婚なんてしたくありません」
(そうよ、私にはやりたいことがあるんだもの。結婚なんてしたら出来ないわ)
「ユリアももう17でしょう?結婚していてもおかしくはないのよ?」
「そうだぞ。あっという間に適齢期を過ぎてしまうぞ」
「お願いです。お断りしてください。お願いします」
必死なユリアを2人は困り顔で見つめる。
「ユリア、うちは子爵家、あちらは伯爵家。格上の貴族家からの求婚を断るなんて出来ると思うかい?」
「そうよ、伯爵家を怒らせるなんてどうなってしまうか‥‥」
「そ、それは‥‥」
叔父と継母の言うこともユリアはちゃんと理解出来る。
それでも、あの伯爵に嫁ぐのは無理だとしか思えなかった。
-----ガバッ!
「「ユリア!」」
ユリアは突然床に蹲り手をついた。
所謂、土下座だ。
「お願いします。この通りです。私、エルジー伯爵と結婚したくありません。叔父様達に迷惑がかからないようにこの家を出ていってもかまいません」
「ユリア‥‥」
ダグラスは困った表情でユリアを見つめるが、継母ビビアンは腕を組み何かを考え込んでいた。
「ユリア、本当にこの家を出ていってもかまわないの?」
「勿論です!」
「そう‥‥‥ならば私に考えがあるわ」
そう言うとビビアンは妖艶に微笑んだ。
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:*(〃∇〃人)*: