小さな違和感
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玄関ホールでは、子爵付きの侍従が床に座り込んで肩で息をしていた。
ユリアが駆け寄ると蒼白い顔を向け、立ち上がった。
「ねぇ本当なの? お父様が亡くなっただなんて」
「‥‥‥ユリアお嬢様‥‥旦那様が落馬されて‥‥‥」
俯いた侍従の腕を掴みながらユリアが問いかける。
「落馬?落馬事故なの?落馬事故でお父様は亡くなったの?」
「はい‥‥‥急に乗っていた馬が暴れだして‥‥」
「そう‥‥‥本当にお父様は亡くなってしまったのね。聞き間違いではなかったのね」
「お嬢様!」
ふらつくユリアをばあやのマギーが支える。
何も考えられないユリアの視界に、継母ビビアンの姿が入ってきた。
顔色は悪いものの、気丈な様子で使用人達に指示をだしている。
さすがは女主人、泣き崩れる事もない。
だが、ユリアはどこか違和感を感じた。
ほんの僅かではあったが‥‥‥。
(お継母様、お父様が亡くなって辛くないの?悲しくないの?何故、そんなに強く振る舞えるの?‥‥私が弱いだけなの?)
力が入らず倒れこむユリアをマギーとメイドが部屋まで連れていき、ベッドに寝かせる。
横になりながらも眠れる訳もなく、父トマスの優しい笑顔が浮かんでは消えていった。
母だけではなく、父までも失ったユリアはどうしようもない孤独感を感じつつ、いつしか眠ってしまうのだった。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
‥‥‥‥‥‥‥‥
‥‥‥‥‥‥
それからの子爵家は忙しい日々が続いていた。
クラナッハ子爵家当主トマスの葬儀、諸々の手続きなどを終えた頃には数週間が過ぎていた。
夫人や執事、侍従達は常に忙しくしていたが、ユリアは特にすることもなく、ぼんやりと部屋で過ごしていた。
涙も枯れてきたそんなある日、継母がユリアと屋敷の使用人全てを玄関ホールに集めた。
「ねぇ?ばあや、何だと思う?」
「さぁ‥‥これからの事だとは思いますが‥‥」
「そうよね、たぶん、そうだわ」
皆が集まったのを確認したビビアン夫人は、息子ライアンを連れて皆の前に進み出る。
「皆、忙しいところ悪いわね。皆に知らせる事があるのよ」
そう言った時、夫人の後ろから男が1人現れた。
「皆知っていると思うけれど、あえて紹介させてもらうわ。夫トマス亡き後、子爵位を継ぐこととなったトマスの弟ダグラスよ。皆これからはダグラスによく仕えてちょうだい。‥‥それと、1年後、私はダグラスと結婚する予定だから、そのつもりでいてちょうだい」
-----ザワザワ、ザワザワ。
ホールに集まった使用人達がざわつく。
そんな中、クラナッハ子爵となったダグラスが口を開いた。
「ダグラスだ。兄のようにはいかないだろうが、子爵家をもり立てていけるよう努めるので、宜しくたのむ。まぁ、女主人はそのままビビアン夫人、いや、ビビアンだから皆の生活に変わりは無いから安心してくれ。私からは以上だ」
「皆、もう仕事に戻っていいわ」
ビビアンがそう言うと、使用人達は各自持ち場へと戻っていった。
ユリアは直ぐには動かずに、並んで立っている叔父ダグラス、ライアン、ビビアン夫人を見つめた。
(叔父様はお父様とよく似ているわね。髪色も瞳も同じ色、面差しも似てる。ライアンもお父様と同じ色を持っているから、叔父様とも同じということね。 ‥‥‥ん? ライアンと叔父様ってよく似てる。叔父と甥だから不思議はないけど‥‥‥お父様よりも似ている気がするわ‥‥‥まさか‥‥‥ね‥‥)
ユリアは叔父達3人を黙って見つめるのだった。
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:*(〃∇〃人)*: