表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鬼太郎物語  作者: 金魚姫
1/1

始まり

 昔々あるところに。おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に。桃から生まれた桃太郎は鬼退治へ。


 「ドドーンガッシャーン!」


 「うええ!?」漫画にお菓子、オレンジジュースという最高の娯楽三点セットを楽しんでいたら、いつの間にか寝てしまっていた鬼太郎は、突然鳴り響いた音に飛び起きた。雷が家に落ちたのかと窓を覗き、外を見てみるが、雨が降っている様子はない。空にはいかにも鬼ヶ島という感じのどんよりとした灰色の雲たちしか見当たらない。さっき飛び起きたせいか、オレンジ色の液体がお気に入りの漫画を染め始めていた。慌ててその辺にあるタオルを手に取る。お母さんのお気に入りのタオルだろうが関係ない。その辺にあったのだから別にいいだろう。最悪だ。濡れているのはお気に入りのあのキャラクターのかわいい顔、、。人間物の漫画だから字が読めない。だからお気に入りのキャラクターは顔で決まる。目の下のほくろが特にかわいいんだよなあ。いやいや、そんなことはどうだっていい。さっきの音は外のほうからしたはずだ。タオルを捨てて外のほうに走った。


 「すんませんでした!すんませんでした!ズビッずんませんっしたああ、、」

 そんな声が聞こえて自然と足が止まった。自分の家でこんなに必死に謝っている声が聞こえるだなんておかしい。もっとおかしいのは、これが父ちゃんの声だということだ。あまりにもいつもの父ちゃんに抱いているイメージとは違った必死な声、言葉が父ちゃんの声で聞こえるので、違和感がすごくて仕方がない。父ちゃんといえば、最近同い年の友達が誇らしそうにお父さんを「御父上」と呼んでいるのを見た。それからというものの、自分も「お父ちゃん」から「御父上」に変えてみようと頑張るが、恥ずかしくてできない。この無様な叫び声が、島をまとめている威厳ある御父上なわけがない。やっぱりこの呼び方は格好がつくな。そんなどうでもいいことを考えながら心を落ち着かせ、恐る恐る壁から頭と目だけを出して覗いた。


 「ヒッ」思わず声が出てしまい、慌てて手で口を押えて身をかがめた。家の入口のドアは開けっぱなしだった。真っ先に目に飛び込んだのは赤色と、頭を何度も地面にこすりつけ、土下座をしている父ちゃんの姿。岩陰には4つの不揃いな大きさの影が見えた。よく目を凝らすと父ちゃんの仲間たちがあまりにも惨い姿で倒れている。いや、散乱しているという表現に近かった。中にはいつも家に来るとお菓子やらおもちゃをくれるおじさんもいた。そういえばあの漫画をくれたのもあの人だった。きずいたら吐いていた。気が動転して状況が把握できていないくせに、体が危険だと知らせているようだった。口に残った苦いゲロの味で、少し冷静になったのだろう。さっきまで音だったお父さんの叫び声が言葉に変わった。

「ど、どうか、、息子と妻だけはあ!!すんませんでしたからっっうう」御父上というより、父ちゃんと呼ぶのにふさわしかった。岩陰にいた4つの影の中の一つが父ちゃんのほうへ歩いてきた。

そこに見えたのは背中に旗を背負った人間の姿のようだった。あとの3つの影は人間ではない、動物のようだった。人間なんて漫画でしか見たことがなかったからとても気味が悪かった。角がなくて、なんだか軟弱そうな体をしていた。しかしそんな体とは裏腹に、とても恐ろしく見えたのは体につけた父ちゃん達の返り血のせいだけではなく、余裕ある立ち振る舞いでわからせる強さだろう。

「ふっ。す、み、ま、せ、ん、で、し、た、だろ。これだから鬼は。教養がなってないよなー。」そう言って父ちゃんの頭の上に足をのっけた。

「いますぐその汚い足をどけろ!このくそ!くそ!」そう言ってやりたかった。本当に。しかし夜に一人でトイレにも行けない9才の鬼太郎には無理だった。戦いに行こうにも地面が足を放してくれない。もし動けたとしても行けなかっただろう。いや、行かなかった。鬼太郎は9才だけど自分も殺されて終わるだけだとわかっていた。

 人間は3匹の動物たちと土の上に散らばった父ちゃんたちの宝石、お金を自分たちの船に積み上げた。さっきしたガシャーンという音はこれが散らばった音だったらしい。積み上げているときも、終始にやにや嘲笑うようにして、僕たちを、鬼を、バカにしているようだった。島を出る前に背中に背負っていた旗で父ちゃんの顔を殴った。多分この殴っている人間の顔、殴ったときの音、父ちゃんのうめき声を一生忘れられないと思う。人間たちは旗をその辺に投げ捨てて帰っていった。人間の文字だから読めなかったけど、バカみたいな旗だなと思った。

「とっ御父上!いったいなにがっ!?」僕は急いで駆け寄った。父ちゃんもさっきの姿は見られたくなかっただろうと思い、今駆け付けたふりをした。決して助けに行かなかったことが悟られたくなかったというわけではない。

初めてなので、アドバイスや感想もろもろ、書いていただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ