3.悪役令嬢、十三歳
「可哀想に、政略結婚だなんて」
そんな会話が、私の耳に飛び込んで来た。場所は私の勉強部屋と呼ばれる場所で、バルコニー付きの大きなガラス張りの扉があって、ピンクのラメが入ったカーテンが掛けられている。真ん中に猫脚のテーブルがあり、ピンクのレースがかけられた白色のソファーがテーブルを挟むようにして置いてある
「私だったら嫌だな~、自由に恋愛出来ないじゃん」
「だよねー、いくら御家の繁栄の為だからってさ。わざわざガイル様に会わせたりする?」
「あれ、旦那様が仕組んだんだっけ?ガイル様に惚れない女の子はいない、とかって言ってさ」
少し開いた扉からそっと覗いて見ると、侍女二人が部屋の中で会話をしていた。おそらく、掃除中での私語であろう
(可哀想………ですの?私が??)
確かに、侍女に言われた通り自由等無かった。国の内政や礼儀作法やダンス等の勉強の数々…。それらは全て、ガイルに見合う女の子になる為にしていた事だ。だがそれが、日に日にマデリーンを追い詰めていっている事に気付いていたが、気付かないフリをしていた
(何をするにしても、余裕なんて無いですわ!!)
そんな状態が続き、やがてそれが侍女に対する暴言や暴力、ガイルに近付く女の子に対する陰湿な虐め等に繋がった
(あの子に八つ当たってしまった………!どうして?こんな事をしたい訳では、無いですのに……!!)
陰鬱な感情を持って街で買い物をしていた時、ちょっとした騒動があった。酔っ払いの男が女性に絡み、騒いでいた。自警団も到着していない状況の中、一人の男性が女性と酔っ払いとの間に立った
「悪いが、女性が迷惑をしてるんだ。解放してやってくれないか?」
間に立った男性は、羽織袴姿で買い物袋を手に持っていた。髪の色も黒くて短め、髭の一つも生やしておらず、見た目40代ぐらいであった
「うるせぇ!てめぇは引っ込んでろ!!」
「そうも行かない。女性は迷惑しているし、通りを行き交う人達も、君に迷惑をしている。飲み仲間がいるのであれば、娼館に行けばいい」
「つべこべうるせーんだよ!」
そう言うと、酔っ払いは近くに転がっていた鉄パイプを掴み、男性に殴り掛かって行った。沢山の悲鳴や声が飛び交う中、男性はその鉄パイプを掴み、首に手刀を打ち据えた
「!!」
そのまま酔っ払いは地に倒れ付し、男性は羽織り合わせ目を直した。鮮やかなその一連の動作に、マデリーンは胸を打たれた
(凄い……!私も、あんな事がしてみたい)
そう思ったのと同時に、
「あの!」
男性を呼び止め、
「私を、貴方の弟子にしてください!!」
そう言っていた




