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転生悪役令嬢シシリアは断罪ルートを回避しない 〜前世最推しを助けるのに忙しいので、革命⭐︎レボリューションはどうぞご勝手に〜  作者: 森林 浴


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EP.66



学園内で命を狙われているキティだが、しかしとても平穏にもの凄く平和な日々を送っている。


平和過ぎて、うっかり命を狙われている事を忘れて過ごしてくれればいいと、皆が動いているからだ。




私とキティは、いつもの様に何事も無く教室に着いた。

が、何だか中が騒がしい。


キティを背に庇い、ゆっくりと中を覗く。

嫌な予感がする。

残念ながら、私のこういう勘は嫌なくらいに当たる。



「あっ、シシリア様っ!」


涙声の女生徒が、蒼白な顔で、私の方を振り返る。


生徒達が、次々と私に気付いて助けを求めるように見つめてくる。


「皆さま、どうかいたしましたの?」


私がそう聞くと、リィナ嬢が涙目で教壇を指差した。


リィナ嬢の指差した先の、教壇の上に、よくよく見ると小さな蛙がちょこんと乗っていた。


よく見る緑色ではなく、赤黒い色をしている……。


瞬間、全身の毛が逆立つような衝撃が私を襲った。

……もちろん、一瞬で全身を巡ったのは、抑えきれないほどの、怒り、だ……。


フィーネ、あのヤロウ………。

一線を超えてきやがったな………。




キティが私の背中からヒョイと顔を出し、教壇の上の蛙を見て、なんだぁといった感じで一歩前に出た。

流石に焦って直ぐにキティの肩を掴み、止めに入る。


「キティ様、絶対にそこから動かないで下さいまし。

良いですが?一歩も動いてはなりません」


いつものおふざけじゃ無い、私の真面目な表情に、キティは驚いて息を飲み、頷いた。


キティにはあれが、毛色の違うただの蛙に見えているのだろう。

ここにいる貴族生徒達は、虫や爬虫類を避ける魔法の施された邸で育っているから、目にした事の無い生き物をただ気味悪がっているだけだ。


だが、キティは転生者。

この世界ではあまり見かけなくとも、前世の記憶であれを蛙と認識して、皆の為に捕まえて逃してやろうと動いた。


背中に嫌な汗が流れる……。


……まさか、フィーネにキティが転生者だとバレたのか?


いや、それは恐らく、無い。


キティは完璧にこの世界の令嬢として振る舞っている。

フィーネ如きが見破られるはずがない……。


だとしたら、考えられる事は、一つ。


あ〜の〜女ぁ………。

無差別かよ………。


目の前が真っ赤に染まるほどの怒りが込み上げてくる。

これほどの怒りはいつぶりだろうか。

思い出したくもない、あの忌まわしい記憶に繋がる程の怒り……。


私は最初から、あの女を許す気などなかった。

だが、大人しく道化を演じているうちは、別の道も考慮してやろうかと思っていたところだったが……。


フィーネ、お前の行き着く先は、もう一つだ。

自分の招いたその先で、我が身を呪っても、もう遅いという事を知れ。




私はキティの側を一歩も離れず、素早く教壇を魔法防壁で包み込んだ。

そして、空間魔法を展開し、密閉型の小瓶を取り出す。


その小瓶を浮遊魔法で教壇の魔法壁内に進入させ、蛙を浮かせると小瓶の中に入れ蓋を閉めた。


私が蛙を確保すると同時に、教室中から歓声が上がった。



「シシリア様っ!ありがとうございますっ!」


「あんな恐ろしい生き物、初めて見ましたわっ!」


「私もです、あれは魔物ですの?」



騒めくクラスメイト達に、キティはやれやれといった感じで肩を上げている。

あれをまだ、ただの蛙だと思っているらしい。


ただの蛙に大騒ぎするクラスメイト達に、皆様箱入りね〜とか思っているのだろうが、今回はそれで助かったのだ。


誰もあの蛙に触れず、きっちり距離を取っていてくれたから、犠牲者を出さずに済んだ。


私からしてみたら、箱入り様々ってとこだ。


私は蛙を捕まえた小瓶を、慎重に空間魔法に収納する。


私の空間魔法を物欲しそうに見つめるキティだが、悪いが私は今それどころでは無い。


私は、怒気をはらんだ瞳で、強く何もない空間を睨み付けていた。



ヒュゥーーーーッ……。

隣でキティが肺の奥まで空気を細く吸い込んだ音がする。


怖がらせているようだが、今はそこまで配慮が出来ん、すまん。




フィーネはこの教室の、たぶんキティの机の中にでもあの蛙を仕込んだのだろう。

そこは後で記録魔法で確認すればいい事だ。


蛙が大人しくそこにいれば、難なくキティを亡き者に出来る。

だが、蛙が動いて別の場所にいく可能性だって十二分にあり得る。


確実性に欠ける愚策だが、あの女には関係なかったのだろう。


運良くキティを殺せればラッキー。

他の人間が間違って死んでも、それはそれで、その人間の運が無かっただけ。


あの女のそんな頭の中が、透けて見えるようだ。


私はギリッと奥歯を噛み締めながら、思わずボソッと呟いた。


「……あの女」


私の、静かに怒りを募らせていく様に、キティが地震が起きたのか?ってほどガタガタ震えている。


未だかつてない私の殺気にあてられて、キティは今にも気絶しそうなくらい、ビビり散らしていた。



「……シシリィ、あの女って、どっち?」


恐る恐るといった感じのキティに、私はぱっと表情を緩めて、誤魔化す様にヒラヒラ手を振った。


「まぁ、どっちでも一緒一緒。

勝手にホイホイ引っ掛かってくれて、本当楽だわ〜」


腰に手をやり、左手の甲を口にそわせ、オーホッホッホと高笑いする。


見よ!この正統なる悪役令嬢スタイルッ!

この見た目だからこそ様になるのだっ!

同じ悪役令嬢でも、キティには真似できまいっ!


キティがやっても、ハイハイ、悪役令嬢ごっこでしゅか?楽しそうですね〜?

と、あやされて終わるもんなっ!

ぷぷぷっ!


しかし、こんな事では誤魔化されなかったらしい、キティは先程までの私の異常な様子に、不安そうな顔をしていた………。









「テメーらっ!答え合わせの時間だっ!」


バンッと勢いよく生徒会室の扉を開け、そう叫んだ私を、皆が何事かと振り返る。


ちなみにキティは今日、王妃様とのお茶会の為、生徒会は欠席。


その穴を埋めるが如く、1人用務員が紛れ込んで、呑気にお茶を飲んでいた。


すかざすエリクエリーが私の後ろから飛び出して、エリオットを通せんぼする。


それにシュンと肩を落とし、メソメソしているエリオット。


態度がうっとおしいぞ。

デコちゅーの恨みはこんなもんじゃないからな。



「やれやれ、お前は淑女らしく出来ないのか?」


こめかみを押さえるレオネルに、そんなんどうでもいいわ、と睨んで返す。



「答え合わせとは、この学園に潜り込んでいる準魔族の事ですね。

私達はその者の正体の記憶を消されていますが、そろそろ思い出してもいい頃合いなのですか?」


ミゲルが冷静に分析するが、そろそろもへったくれも知るかっ!

私は怒髪天ついてんだよっ!


「まぁ、そろそろ追い込んで化けの皮を剥いでもいいかもね。

この学園の膿を綺麗に洗い出してくれたし。

罪状もたんまりあるしね」


私の様子に何かを察したのか、エリオットがすぐさま同意してくれる。



「答え合わせなど、ジャンに聞けば終わる事だ」


クラウスの言葉に、ジャンが目を丸くして自分を指差した。


「俺?俺は、ただの勘だけどさ〜。

あの、フィーネって男爵令嬢じゃないかと思ってる、けど……?」


確証はない、本当にただの勘のようだが、途端に皆がジャンに向かって拍手を送った。



……なるほど、この中で1番のにぶちんのジャンが正解するって事は、皆はそれより早くフィーネに辿り着いていたって事だ。


うん、効率いいな。



ジャンは何となく馬鹿にされている事を感じ取ったのか、口を尖らせてぶーたれている。



「それで?何があった?」


勘のいいクラウスが早速何事かを感じ取って聞いてきたので、私はチラッとエリーを見ると、エリーは小さく頷いて、例の、レノア・ヤドヴィカの死因についての資料をクラウスに渡した。


流石に人数分用意出来るような内容ではないので、現存する貴重な資料だ。


クラウスが怒りで握り潰さないよう警戒していたが、クラウスは一読すると他人事のような顔で、バサッとレオネルに投げただけだった。


それを慎重に受け取ったレオネルが資料を捲ると、ノワール、ミゲル、ジャンも横から覗いている。



「……なるほど、準魔族であるフィーネだからこそ用意出来た凶器、という訳だな」


レオネルがそう冷静に判断している横で、ミゲルが両手を組んで祈り始め、ジャンが真っ青になっている。


ノワールは顎を掴み、何事か思案しているようだ。


「で、今日これが私達のクラスに仕込まれていたわ」


私は空間魔法から、例の蛙を閉じ込めた小瓶を取り出し、顔の前に持ち上げた。



瞬間、皆が顔色を変えて、それを凝視する。


レオネルとミゲルが、資料にあるレノア・ヤドヴィカを殺害した小さな魔物の絵と見比べ、息を飲んだ。



「なるほど……見せろ」


クラウスがこちらに向かって手を伸ばしたので、そこを狙って小瓶をポーンッと放り投げた。


「ちょっ!おまっ!!」


ジャンが悲鳴のような声を上げたが、クラウスはそれを難なくキャッチすると、自分の顔の前に持っていきしげしげと眺めている。


「ふ〜ん……」


呟くと、興味を無くしたかのように、こちらにポーンッと放り返してきた。


「ちょっ!だからっ!」


また悲鳴を上げるジャンを尻目に、今度は私が難なくキャッチした。



「問題ない、それくらいならキティに渡したネックレスで充分だ」


無表情でそう言うクラウス。


あー、アレね。

SSGR級の、アレな。


そっか、それの事をすっかり忘れていた。

頭に血が上りすぎてたな。

ふむ、これは反省せねば。



「ですが、キティ様は無事でも、他の誰かが被害に遭うかも知れなかったのですよ!」


ミゲルが怒りを滲ませ声を荒げる。


そうだ、それだよ。

皆がSSGR級の守護アクセサリーを身に付けている訳ではない。

むしろそんな代物身に付けているのはキティくらいなものだ。


今日、誰の命も失われなかったのは、ただ単に運が良かっただけ。

実際、凄く危険な状況だった。




フィーネは人の命を何とも思っていない。

ゲーム上のモブくらいにしか思っていないのだ。

モブの命がいくら失われようとも、露ほども心が痛まないのだろう。

あの女は、レノアをその手にかけた頃から、何も変わっていない。

気に入らない者を殺して、平気でのうのうとしていられる人間なのだ……。



そんな人間の行き着く先を、私が見せてやるよ……。


その首洗って待ってな、フィーネ。


ニタリと1人笑っていると、ジャンがビクッと体を震わせていた。


何だよ?失礼な奴だな。



「まぁ、フィーネも一線を超えてきたようだし。

師匠と共同開発している魔族の力を無効化する術式が完成したら、前に私が話した作戦を決行するわよ!」


グッと拳を握ると、ジャンが嫌そうな顔で私を横目で見る。


「マジでやんのかよ〜〜あれ。

俺、本当に嫌なんだけど……」


情けない声を出すジャンの背中をバンバン叩いて、闘魂注入しておく。


「そん時には演技指導してあげるから。

アンタもちょっとはそういうの出来るようになりなさいよ!

貴族なんて化かし合いの世界じゃないの!」


私の言葉にジャンは、うえ〜っとますます情けない声を出した。




「そうだ、キティを冬祝祭に誘おうと思っているから、そのつもりでいてくれ」


不意にクラウスがそう言い出したもんで、皆が驚いてクラウスを一斉に振り返る。


「えっ?こんな時に?なに?王宮でディナーとか?」


一応聞いてみるが、案の定クラウスは首を振った。


「いや、貴族街に誘うつもりだ」


いや、だから、こんな時に?

お前らにあんまフラフラして欲しくないのだが?


苛立ちを込めてクラウスを睨みつけていると、クラウスは少し下を向く。


「キティは街に降りた事がないんだ。

今年の冬祝祭で、キティの好きなあの本に出てくる登場人物達の氷のオブジェが飾られるらしい。

キティなら、凄く喜んでくれる気がして……」


頬を若干染めてそう言うクラウスに、私は目をカッと見開いた。


「何それっ!私も知らなかったわよっ!

そんなの、キティ絶対連れて行ってあげるべきだわっ!

やるわねっ!クラウスッ!」


私の称賛の言葉に、クラウスは無言で頷いた。


こいつ、キティの事となると、途端に動きが速くなるわね。

日頃はやる気なさすぎて、ほぼ動かないのに。



「いやぁ、仕方ないね。

それなら当日は僕らも護衛を兼ねて影から見守りつつ、祭りを楽しまなくちゃね」


はしゃぐ用務員……。

いや、お前は関係ないから。

いい加減、執務に戻れってっ!



「王太子と王子が揃って街に祭り見物ですか……?

ふざけた事を言わないで頂きたいっ!

貴方がたに何かあったら、この国はどうなると思っているんですがっ!」


とうとうレオネルを本気で怒らせた2人は、その後ガミガミねちねちレオネルに叱られていたが、クラウスはまったく聞いていないし、エリオットなんか途中でコピーと入れ替わっていた。


あっ、この国ヤバい……。

残った私達は、遠い目で窓から覗く空を眺めていた…。








「仲直りして下さい!」


エリクエリーの通せんぼの向こうで、エリオットが土下座をしている。



……誰かコイツに、王太子としての威厳を叩き込んでくれ……。


あっ、あのニースさんでも無理なんだから、誰にもそんな事無理か……。



私は溜息を吐きつつ、エリクエリーの前に出た。


「いいけど、2度とあんな事しないでよ!」


厳しい声でそう言うと、エリオットは嬉し涙を流しながら、こちらに突進してきた。


「リア〜〜〜ッ!」


ガシッと私の足にしがみ付き、わんわん泣いている。


「もう二度としないよ〜〜っ!」


いや、してんだよっ!

今っ!

今っっ!!



泣きながらエリオットは私の足にスリスリ頬ずりをしている。


「……アンタ…いい加減にしなさいよ?」


懲りるって事を知らないのか、この男は。


「ごめんっ!でもっ!久しぶりのリアだからっ!

もうちょっとっ!さきっちょだけっ!」


瞬間、エリクエリーがエリオットをメキョッと思い切り踏み潰した。



己はセクハラワードを出さなきゃ気が済まんのかっ!




「その辺に捨てておいて」


エリクエリーに踏み潰されて、プシュ〜ッと煙を出しながら白目を向いているエリオットに、私は冷たい目を向けてエリクエリーにそう指示した。


エリクエリーは2人でエリオットを抱え、どこかに消えて行く。




もういっそ、本体その辺に埋めといて、コピーをニースさんが操った方がこの国は安泰じゃなかろ〜か。



そう考えた私は、次にニースさんに会ったら、必ずそう進言しようと心に誓った。





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