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EP.203


薄っすらと目を開けると、見慣れない天井が見えた。


「……シシリアッ!気が付きましたかっ!」


やけに遠くからミゲルの声が聞こえる。

天井を映す私の視界を遮って、ミゲルの顔が目の前にドアップで映った。


……ああ、治癒魔法をかけてくれてたのか。

その顔を見て、自分が魔力の使い過ぎによるオーバーヒートで倒れた事を思い出した。


「………リオット……は?」


カラカラに乾いた喉から、なんとか言葉を絞り出すと、口にヒヤリとした物が当たり、そこからゆっくりと水が口の中に注ぎ込まれた。

少しだけ注がれた水が口内を潤し、喉に流れていく。


「……僕ならここにいるよ、リア。

お水、もっと飲む?」


姿は見えないけれど、確かにエリオットの声だ……。

私はその声に微かに頷いた。


背中に腕が差し込まれ、ゆっくりと優しく体を起こしてくれる。

ガラスの吸い飲み容器を持ったエリオットが、心配そうに私の顔を窺いながら、またゆっくりと口に水を注ぎ込んでくれた。


ゴクゴクゴクッと喉を鳴らしながら、水を飲み切ると、もっととおねだりするようにエリオットの袖を引っ張った。

直ぐに新しい水が用意され、それもエリオットに飲ませてもらいながら、ゴクゴクと飲み切る。


プハァーッ!生き返ったぁっ!

おっしゃぁぁぁぁぁっ!完全復活っ!


両手を上げて勝利を祝おうとしたが、腕に力が入らず、ピクリとも動かない……。


………アレ?


キョトンとしてエリオットを見ると、エリオットは残念な子を見るように憐れんだ目で私を見つめ、フルフルと小さく首を振った。


「リアは魔力過多状態で、常識を超える魔法を複数、しかも同時に使ったんだから、当分体は動かないと思うよ。

無理せず、この僕の部屋で回復を待とうね……」


そう言うとエリオットは、私にだけ見える角度でニヤァっと笑った………。


ヒ、ヒ、ヒ、ヒィィィィィィィィッ!

連れ込まれてるっ!

また、連れ込まれてるっ!

誰かっ!助けてぇぇぇぇぇっ!



「……シシリア、すまなかった……」


その時、レオネルの声が聞こえて、私は目だけでその姿を探した。

やった!身内おるやんっ!

助けてーーーーっ!

おにぃちゃぁぁぁぁぁんっ!


レオネルはベッドの端に立ち、こちらを気遣わしげに見つめていた。


「お前に無理をかけてしまった……すまなかったな。

エドワルド捕縛の為、お前が見つけてくれた場所に騎士と兵を向かわせた。

近日中には捕らえる事が出来るだろう。

全てお前のお陰だ………」


何だかレオネルが小さく見えて、私は胸が……痛みはしなかったけどな。

いいんだよ、エドワルドの事は。

王都で目撃されたエドワルドが、まさかあんな場所に身を隠していたなんて、誰も思わないだろうし。

各主要拠点に在中している魔道士や魔術師の転移魔法を使って、素早く移動できる王国の騎士や兵士とは違うんだ。

普通の人間なら、徒歩であそこまで移動するには3ヶ月はかかる。

途中、休憩や宿泊を入れれば、日数はもっと増えるだろう。


指名手配中のエドワルドが、何か乗り物を使うとは考えにくい。

本当に徒歩で移動していたなら、その道中で必ず騎士や兵士に捕まっていただろう。


それなのに、リゼに目撃されたのを最後に、奴の足取りが煙のように消えたのは、十中八九、魔族であるアビゲイル・ゴードンの仕業だ。

そんなもん、ちょっとくらい無理しなければ見つけられない事は分かりきっていた事だ。


前世の知識でなら、といっても、私だって前世はただの女子高生。

専門的な知識は分からない。

聞き齧った知識でどこまでやれるかは分からなかったし、自分の魔力量だけでは所詮机上の空論だった。

だからこそ、誰にも話せず躊躇していた訳だが、こんな事ならさっさとやってみりゃ良かったと後悔しているところだ。

せめて、エドワルドがリゼにあの胸糞悪い呪いをかける前に、やっていればと後悔してもしきれない。


そんな訳で、実は謝りたいのは私の方だった。

まぁ、思っていたより体への負荷がヘビーだったんで、私の実力ではもう2度と使わないだろう禁じ手になったが。



「……リゼの事も、お前に言われてやっと目が覚めた。

彼女の気持ちが落ち着いて、整理が出来るまで、もう私からは接触しない。

ただ……やはり私は彼女を諦めきれない。

こんな事になっても尚、いや、だからこそ、彼女を強く欲している。

彼女を、己れの欲という名の〝責任〟で縛りつけようとした事を強く後悔している。

今度こそ、お前の言う通り、彼女を口説いて振り向かせてみせる」


まだ少し戸惑いがちではあるが、マシな顔になってきたな、よしよし。

怨念のようにリゼに取り憑くよりは、よっぽどマシだ。


私は震える手を何とか持ち上げて、サムズアップで応えた。

レオネルはホッとしたように、肩の力を抜く。


「さあ、皆さん。シシリアはもう大丈夫でしょう。

後はしっかり食事を取って、ゆっくり休めば直ぐに回復する筈です。

私達はこれで失礼致します。

エリオット様、どうかシシリアをよろしくお願いします」


そう言って頭を下げるミゲルに、全力いい顔でサムズアップするエリオット………。


ちょっ!おいおいおーーーーーいっ!

まさかこの状態の私をこのサイコパス犯罪者に任せるつもりじゃないよねっ!?

よく見てよく見てっ?

この何事か妄想して緩み切った顔をっ!

このままじゃ、何されるか分かったもんじゃねーよっ!


皆、一旦止まってっ!

ミゲルを先頭に本当に出て行こうとしないでっ!

お願いしますっ!

行かないで下さいーーーーっ!


………私の願い虚しく、皆はパタンと扉の閉まる無情な音を残し、本当にエリオットと私を残して出ていってしまった………。


嘘だろ、おい………。


絶望に顔を青くする私に、エリオットはニタァと笑い、両手をワキワキしながらこちらに迫ってきた………。


「さぁ、リア、たぁっぷり看病してあげるからねぇ………」


ヒィィィィィィィィィッ!

やーらーれーるーぅっ!

お助けーーーーーーーーーーーーっ!!


ガクガクと震える私を、エリオットは涎を垂らしながらハァハァ言って、自主規制レベルの顔で見つめていた………。







「はい、リア、あ〜〜んっ!」


エリオットが差し出すフォークに刺さった肉に、私はガッシと喰らい付き、フンッと引き抜くとワッシワッシと咀嚼した。


「あぁんっ、リア、ワイルドぉ〜〜」


うっとりと見つめてくるエリオットに、フンっとデッカい鼻息で返す。


いちいちうるせーーーっ!

いいからもっと肉よこせっ!肉っ!

ガンガン肉食って、体力取り戻したらこんなところサッサッとオサラバしてやるぜっ!


エリオットはせっせと私の口に食事を運び、私はそれに喰らいつく。

通常の三人前を食べ尽くし、やっと私は人心地ついた。


プハァーッ!

今度こそ生き返ったっ!

やっぱ肉は万能だなっ!

即エネルギーに変わる感がヤバいっ!

それと、美味いっ!


せっせと私の食事介助をしていたエリオットは、既に食後のお茶の用意をしている。

ふむ、どうなる事かと思ったが、普通に便利だ。

エリオットの淹れてくれたお茶を、ズズーーッと音を立てながら飲み、甲斐甲斐しいその姿を見つめた。


……コイツの事だから、弱った私にこれ幸いと、なんかしてくるかと思ってたけど。


ニコニコ幸せそうに、私の身の回りの世話をしているエリオットは、どうやらそれだけで満足らしく、余計な事をしてくる気配は無い。


「ねぇ、湯に入りたいんだけど」


そんなら便利に使うのみ、と私はエリオットに要望を突き付けた。

エリオットはハッとしたのち、モジモジしながら頬を染める。

だろうな、貴様の考えている事など手に取るように分かるわっ!


「し、仕方ないよね、リアは動けないんだから………よし、僕がリアの体を隅々までしっかり」


「メイドを呼んで」


チッと舌打ちと共に冷徹に言うと、エリオットはガーンッと膝から崩れ落ちた。


よし、じゃねーよっ!

当たり前だろうがっ!


ギンっと私に睨み付けられて、エリオットはシュンと大人しくメイドを呼びに行った。

そもそも、部屋に何故メイドが控えていないのか。

貴様が人払いしている事はバレてんだよ。

いちいち貴様にあれしろこれしろ言わなきゃいけないじゃねーか。

なんならいつ湯に入りたいと私が言い出すか、ずっとソワソワしてたのもバレてんだよ、バーカッ!



メイドの手を借りて湯に入り、サッパリして寝着に着替えたところに、タイミング良くエリオットが迎えにくると、まだうまく歩けない私を軽々抱き上げて、ベッドに寝かせた。

シーツも綺麗に取り替えられていて、いやぁ、気持ちいい、さっ、寝ようと思っていると、何故かゴソゴソとエリオットがベッドに潜り込んでくる。


「………貴様、何のつもりだ?」


コオォォォォッと熱い息を吐く私に、エリオットはギュウッと抱きついてきた。


「こんなチャンス、この僕が逃す訳ないでしょっ!」


瞳孔パッカーンさせて、見るからにヤバい状態のエリオット………。

ダメだ……コイツがこうなったら、もう何を言っても無駄だ……。


「何かしたら、今日がアンタの命日だと思いなさいよ」


フンッとエリオットに背を向けると、明らかにご機嫌な雰囲気を醸し出しながら、エリオットは私を後ろから抱きしめた。


「んふんふふ。僕、幸せ〜〜」


ハァハァと変態的ないつものやつがうるせぇぞっ!

さっさと寝ろっ!


もうエリオットの事は気にしないで、さっさと目を瞑ると、ギシッとベッドを軋ませて、エリオットが上半身を起き上がらせた気配がした。


エリオットは優しく私の髪を撫でながら、哀しそうな声を出した。


「……無茶しないでって言ったのに、こんなになっちゃって」


そのエリオットに薄目を開けて、私は小さく頭を下げた。


「………ごめん」


自分のやった事で、皆に心配をかけた事は分かっている。

特に、エリオットに………。

私だって、無茶をしたかった訳じゃない。

でもあれくらいしないと、魔族が関わっていたエドワルドを探し出せなかった。

エリオットだって、それを分かっているから、私を責めたりしないのだろう。

だけど、凄く心配をかけてしまった。

詫びでは無いが……比較的大人しくエリオットに看病されているのは、少しその辺申し訳無いと思っているからだ。


「責めてるんじゃ無いんだ……リアのお陰でエドワルドを捉える事が出来た。

国民を守る王太子という立場から言えば、君に感謝している。

だけど、君を愛する1人の男としては、目の前で愛する女性が傷付く姿は……耐えるのが難しかったよ……。

君を失ったら、僕はもう生きていけない。

君無しでは、僕は駄目なんだ。

君の魂を追う為に、この生を終わらせるだろうね、全てを捨てて。

…………失望したでしょ?」


クスッと自虐的に笑うエリオットに、私はブスッとして答えた。


「失望するわね。自分の責務を捨てて、女を追いかけるなんて、立場のある男のする事じゃないわ」


目だけでギッと睨み付けてやると、エリオットは哀しげに睫毛を揺らした。


「……そうだよね、でも僕はきっとそうする。

だからリアは責任重大なんだよ。

今日みたいな事は、もう2度としないでね」


泣きそうな様子で声を震わせるエリオット。

相変わらず重いが、その重さにも良い加減慣れてきた。


「ねぇ、アンタはレオネル達みたいに私を閉じ込めて自分だけのものにしたりしないの?」


何となしに聞いてみると、エリオットは目をカッと見開き瞳孔まで開いた。

こえーよっ!

何だよっ!


「……リアを、閉じ込めて……あんな事やこんな事を、ま、ま、ま、毎日……。

クッ、想像しただけで昇天出来るっ!」


マジかっ!

そんなんで昇天してくれるなら、どんどんしてくれっ!

ガンガン想像して、早く召されろっ!


「ハァハァ、沢山ランジェリーを取り揃えなきゃ、コスプレ衣装もっ!

毎日着せ替えごっこして楽しむんだぁ。

あ、あと、リアに似合う高級な拘束具も用意しなきゃね……」


瞳孔パッカーンのまま、ブツブツ呟く内容に、私はゾゾっと鳥肌を立てた。


何だよっ!私に似合う拘束具ってっ!

んなもん無いわっ!

ど阿呆っ!

ランジェリーとやらもコスプレ衣装も誰が貴様の前で着るかっ!

いや、だからって裸じゃないぞ?

裸でいるって意味じゃ無いからな?


駄目だっ!これ以上コイツに好き勝手な想像を許していたら、コイツが昇天する前に私が召されるっ!


私は指を2本立てると、エリオットに振り向き様にズビシッとその両目に突き刺した。


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ーーーーっ!

目がぁっ!目がぁっーーーーーーーーっ!」


広いベッドをゴロゴロしながらもだえ苦しむエリオット。

やかましいっ!その目を潰しとけば、私のランジェリー姿とやらも拝めんであろうっ!

ヌハッハッハッハッハッ!


……しかし、コイツの妄想も全く進化しとらんな。

良い年して知識が稚拙でいっそ可哀想になってくる………。


「私が馬鹿な質問したわ、いいからもう寝るわよ」


目を抑えてシクシク泣きながら、エリオットは私にピタリとひっつき、また後ろから抱きしめてきた。


後ろ頭に当たるエリオットの厚い胸が、ドキドキと音を立てている。


「ちょっと、煩いわよ」


不機嫌にそう言うと、申し訳なさそうなエリオットの声が返ってくる。


「ごめんね、大好きなリアとこうしていると、ドキドキが止まらないんだヨォ」


その答えに私はチッと舌打ちをした。

そんな落ち着かないなら、別で寝ろよ。

廊下とかで。


相変わらず何がしたいのかいまいち分からん奴だが、その速い胸の鼓動を聞いていると、何故だかウトウトしてきて、私は欠伸をすると目をゆっくりと瞑った。


心地よい眠りに誘われながら、エリオットの優しい声がやけに遠くから聞こえるような感覚がした。


「おやすみ、リア。良い夢を……」


おでこに柔らかいものが押し当てられる感触がしたが、眠たさで体がピクリとも動かない。


スゥッと眠りに落ちながら、次に起きたらエリオットを先ずは滅しておこう、と心に誓った。












夜の帳が下りた、王太子の部屋。

その寝室のベッドの上で、悩める1人の青年が苦悶の表情を浮かべていた。


「……うう〜ん」


彼の隣で寝ている女性は、乱れた寝着で、彼の体に巻き付くように眠っている。


艶かしい生足を彼の腰の上に絡ませ、肩までズレた寝着のまま、両腕で彼の首に抱き付いていた。


豊満な胸を押し付けられて、彼は苦しげな声を漏らした。


「………これ、何て苦行……?」


誰に言うでもないその呟きは、夜の闇に溶けていった………。











眠りからゆっくりと覚め、細く目を開けると、何故か前屈みになったエリオットが、コソコソとどこかに向かっている後ろ姿が見えた。

奴が寝室から出ていってから、ムクリとゆっくり起き上がる。


「うう〜んっ!」


のび〜〜っと上半身を伸ばし、プルプルと体を震わせる。

うんっ!よしっ!


ピョンっとベッドから飛び降りて、屈伸してみる。

よしっ!体の調子が戻ってる。

今度こそ、完全復活っ!


その場でピョンピョン飛び跳ねていると、どこかに行っていたエリオットが、ガチャリと扉を開けて戻ってきた。


「よっ!世話になったわね。

お陰で体の調子が戻ったわ」


スチャッと片手を上げて挨拶すると、エリオットはウッとか言いながら、また前屈みになっている。


何だよ、腹でも冷やしたか?

ちゃんと掛け布団して寝ろよ。

寝相悪いなぁ。


ハッと鼻で笑うと、エリオットは真っ赤な顔でプルプル私を指差した。


「リ、リア……お願いだから、胸元を……胸元をちゃんと……」


股を押さえながら震えるエリオットを怪訝な目で見て、次に自分の胸元に視線を移してみると、流石にポロリはしていないが、豊満な私の胸がファ〜ォしている。


………なんだよ、面倒くさい生息子め。

たかだかこれくらいでキャッキャッ騒ぎおって。


「何よ、これくらいの谷間なら、強調してるドレスだってあるじゃない」


無駄に乳を強調したがるこの世界の服を見慣れている奴が、何言ってやがんだ、はんかくせぇ(馬鹿、の意)。


ケッとバカにして笑いながら、乱れた寝巻きを直していると、ツーと鼻血を流しながら、エリオットがイヤイヤするみたいに頭を振った。


「ガッチガチに武装されたドレスとは違って、無防備な胸チラがどれだけ青年の下腹部を直撃するかっ!リアは理解が足りていないっ!」


うるせ〜なっ!

だから今直しただろーがっ!

レオネルにしろ、エリオットにしろ、マジで生息子めんどくせーーーーっ!


……あっ、レオネルはもう生息子卒業したのか………。


それに気付いた私は、憐憫の目でエリオットを見つめた。


「アンタ、私の胸チラで鼻血出してる場合じゃないんじゃない?

年下の又従兄弟にまで先越されちゃって……。

アンタ、マジでどぉすんのよ?」


呆れた口調の私に、エリオットは鼻にティッシュを詰めながらスンとした顔をした。


「……それをリアが言う?

じゃあリア、例の古代魔具の呪いをうけてきてよ。

死ぬか、僕の純潔を散らすか、選んで?」


割と真顔なエリオットに、私も真顔で答えた。


「迷わず死を選ぶっ!」


一切の躊躇なくそう答えると、エリオットは膝からガクーーッと崩れ落ちた。

そのまま両手で顔を覆い、天井を仰ぐ。


「僕だけNoラッキースケベーーーーッ!」


悲壮なエリオットの叫びを無視しながら、私は朝のラジオ体操を始めていた。

やかましいな〜〜〜。

そもそも私なら、そのまま獣の姿になれるっつの。

命とか落とさない自信しか無いわ。

何なら良いところで呪い跳ね返して、なんちゃって獣人になってみせるわ、気合で。


フンっと鼻息を吹き出すと、エリオットが手の隙間からこちらをチラッと見ているところだった。


「……ちなみに、僕がその呪いにかかった場合は?」


恐る恐ると言った感じでそう聞いてくるエリオットに、私はニッコリ微笑みながら、ゆっくりと近づいて行き、跪くエリオットに合わせて腰を屈めると、ポンポンとその肩を優しく叩いた。


「迷わず逝け」


自分の髪を耳にかけながら、優しくそう言うと、エリオットはまたしても両手で顔を覆い、天井を仰ぎながら叫んだ。


「目から入ってくる情報と耳から入ってくる情報の落差に脳がバグるよ〜〜〜っ!

デットオアデッドーーーーっ!」


だから、やかましわっ!

朝からうるせーーーーーーーーっ!





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