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EP.157



「やぁお二人さん、おめでとう」


周りの人々に祝福の言葉を貰っていたノワールとテレーゼに、エリオットが声をかけヘラヘラと近づいていく。


カーテシーで礼をとるテレーゼを手で制し、エリオットは2人を私達の待つ会場の隅に連れてきてくれた。


私とキティ、それにレオネル、ミゲル、ジャンがそこに集まっていた。


「テレーゼお姉様が本当に本当の私のお姉様になるのねっ!ノワールお兄様、ありがとうっ!」


テレーゼに抱きついて、嬉しそうにノワールを見上げるキティの髪を、ノワールが優しく撫でる。


「お礼ならテレーゼに、彼女が僕を受け止めてくれたお陰なんだから」


そう言ってフワリと微笑むノワールに、キティは嬉しそうに頷いた。


「テレーゼお姉様、お兄様の求婚を受けて下さってありがとうございます」


今度はテレーゼを見上げてそう言うキティに、テレーゼは慌てて首を振った。


「そんな、私こそノワールに求婚してもらえてお礼を言わなきゃいけないのに」


テレーゼがそう言った瞬間、私は我慢出来ずにテレーゼの肩をポンポンと叩いた。


「初恋拗らせ粘着男の求婚を受けただけでも凄いのに、コイツに礼なんて無用よ。

この事を一生笠に着て、尻に敷いてやればいいのよ」


そう言って生暖かく微笑むと、テレーゼはオロオロとしている。

そこにレオネルやジャンやミゲルも口々に口を開いた。



「初恋って実るものなんですね」


「バカ、ミゲル、コイツの場合は草一本生えない不毛の地を耕し続けて最後は力技だから、参考になんねーよ」


「嘘までついて無理やり仲を進展させたんだ。

全く共感出来ん」



レオネルの言葉に、テレーゼは不思議そうに首を傾げながら、ノワールを見た。


「嘘、って何?」


テレーゼからのド直球な質問に、ノワールは真っ赤になって冷や汗を流している。


そのノワールの様子にますます首を傾げるテレーゼ。

その耳元で、私がコソコソと囁いた。


「魔力を循環させる治療だって、必要以上に口づけを強請られなかった?

それ、最初以外全部嘘だから。

1回目で魔力循環は成功していたのに、コイツおやすみのキスがしたいばかりに嘘までついてたのよ」


私の話にテレーゼは目を見開き、瞬間ボッと顔を赤くした。


おやおや。

配慮に足りなかったようで。

でも仕方ないよねー。

本当の事だもんねーーー。


恥ずかしそうに俯いて、顔を上げないテレーゼに、ノワールが焦ったように口を開く。


「テ、テレーゼ、嘘をついた事は謝るよ。

でもどうしても君と早く親しくなりたかったんだ。

その……ずっと恋焦がれてきた君を前にして、抑えが効かなくて……ごめん」


シュンとして不安そうにテレーゼを見つめるノワール。

テレーゼはその手をとって、真っ赤な顔のまま、ノワールの瞳をジッと見つめた。


「あの、私は嘘だなんて思わないわ。

ノワールは確かに私の心を癒やしてくれたのだもの。

だから、そんなに気に病まないで。

でも今度からは私に要望があれば、ありのままに話してね」


ちょっ!

テ、テレーゼさんっ!

そ、それはやばいってっ!


私はテレーゼの言葉にああ〜っと額に手を当て、天井をふり仰いだ。



その私の反応に、不思議そうに首を傾げるテレーゼに、ノワールが妖艶な微笑みを浮かべ、テレーゼの顎を掴み優しく上向かせる。


「分かった、今度からは素直にお願いする事にするよ、ありのままに……」


ふふっと甘く揺らめくその瞳の奥が、獲物を狙う獣のように鋭く光っている。

テレーゼはやっと自分が何かを間違えた事に気がついたのか、目尻に涙を浮かべ、カタカタと小さく震えていた。


会場中を埋め尽くさんばかりのノワールの黒薔薇(幻覚)に、震えながら私達に助けを求めるテレーゼから、私たちは申し訳なさそうに一斉に目を逸らした。


あ〜あ………。

テレーゼ、またとんでもない許しをノワールに与えちゃったなぁ………。


大変申し訳ないが、もう手遅れです。

頑張れ、テレーゼッ!





「ノワール、遅れてすまん。

婚約おめでとう、やっと捕まえたようだな」


ノワール以外気まずい雰囲気を醸し出す中、凛とした声が聞こえてそちらを振り向くと、珍しく愛想の良いクラウスがノワールの肩をポンと叩いた。


「やぁ、テレーゼ嬢、いや、エクルース伯爵だったか。

俺はクラウス、キティの婚約者だ」


いや、本当に愛想いいなっ!

ってか、ご機嫌じゃねーかっ。

どうした?マジで。


慌ててカーテシーをとろうとするテレーゼを手で制し、クラウスはニコニコでキティに手を差し出す。


その手をとりクラウスの隣に立つキティ。

この2人もすっかり阿吽の呼吸が身に付いたなぁ、などと感慨に耽りながら、身長差ゆえクラウスを見上げるキティの首が悲鳴を上げているのをうんうんと微笑ましく見つめていると、ご機嫌クラウスがテレーゼに向かって愛想良く口を開いた。



「キティの姉となる人なら俺の身内も同じ、お互い直ぐにそうなるだろうし、畏まらないでくれ。

クラウスと呼んでくれてかまわない」


あっ、なるほど。

どこまでいってもコイツの基準はキティって事だな。

親族になるテレーゼによく見られておこうなど、コイツにしては随分こざか……ん、んんっ!

随分気が利いてるな、うん。


流石にクラウス呼びは無理だったのか、テレーゼは恭しく頭を下げ、そのクラウスに応えた。


「クラウス様、お名前で呼ぶ事をお許し頂き光栄に存じます。

この度、正式にエクルース伯爵を拝爵致しました、テレーゼと申します。

お見知りおき頂ければ幸いにございます」


テレーゼの挨拶にクラウスは頷き、キティを甘く見つめた。


「良かったね、キティ、ずっと心配していたから、これで安心出来たんじゃないかな?」


キティに対して話し方が変わる事にまだ慣れない(一生無理)私は、初見で目を丸くしているテレーゼの耳元に囁いた。


「アレは初恋拗らせ粘着モンスターの同類だから、まともに相手しちゃダメよ」


しかし、折角の私の忠告にもテレーゼはいまいちピンときてないようで、途端にニコニコ顔になる様子に、私は諦めたように溜息を吐いた。


これを微笑ましいと思えるあたり、テレーゼは一生ノワールから逃げられないな。



「アレ系モンスターには鈍いくらいが丁度いいみたいね」


ボソッと呟く私に、テレーゼは何の事か分からない様子で首を捻っていた。




「さて、そろそろ僕に、テレーゼちゃんに許しを乞う時間をくれないか?」


エリオットがそう声を上げ、テレーゼの前に立った。

テレーゼは目を見開き、そのエリオットを見つめる。


「テレーゼ・エクルース伯爵。

貴女に大変な無礼を働いた事、遅くなったが謝罪したい。

あの時は本当に申し訳なかった」


そう言って胸に手を当て頭を下げるエリオットに、テレーゼは驚愕して言葉も出ない様子だ。


そりゃ、この国の王太子に頭を下げさせるなんて、テレーゼにとってはとんでもない事だろう。


慌てて辺りを見渡すテレーゼに、私は安心させるように、その肩を叩いた。


「大丈夫、幻影と防音の結界を張っているから。

周りからは私達は楽しそうに歓談しているようにしか見えないわ。

だから気にせずガッツリ謝罪させなさい、ガッツリ」


そう言いながらエリオットの側に寄っていくと、エリオットの足をグリグリと踏みつける。

ノワールもエリオットの側にきて、反対の足を踏みつけている。


「痛い痛い、リアッ、ノワールッ、本当にごめんなさいっ!

テレーゼちゃんにちゃんと説明したいから、一旦この足退けようか?

ね、一旦退けて、お願いしますっ」


エリオットの懇願に、私とノワールはまだまだ足りないといった顔で、渋々足を退けた。



「あの……これは、一体……」


驚き過ぎて呆然としているテレーゼに、エリオットは落ち着くようにといった感じで掌を向けた。


「今、説明するね」


そう言うと、エリオットは自分の顔を手でゆっくりと撫でる。

その手が外されると、そこにあのオークションを取り仕切っていたあの男の顔があった。


テレーゼは反射的に小さな悲鳴を上げ、自分の口を手で押さえた。

ノワールが慌てて、そんなテレーゼを胸に抱きしめる。


「さっさとその忌まわしい顔を消して下さい。

でなければその存在自体を消して差し上げましょうか?永遠に」


ギラリとエリオットを睨むノワールから冷気が漂い、エリオットは飛び上がりながら直ぐに顔を元に戻した。



「ごめんね、テレーゼ。

今のはエリオット様のスキルなんだ。

顔を変えて、あのオークションに潜入していたんだよ。

君を取引した証拠を確実に掴む為にね。

また怖い思いをさせて、本当にごめん」


テレーゼを気遣うように眉を下げ、真っ青になったテレーゼの顔を覗き込むノワール。

テレーゼはガタガタとその体を震わせ、ノワールにしがみ付いている。


血の気の引いたその青い顔が痛ましく、私は思わず顔を背けそうになるのを必死に耐えた。


テレーゼは今、あのオークションを思い出し、恐怖と闘っているのだ。

テレーゼがエリオットに対してどんな決断を下すにしても、エリオットは全てを受け止めるだろう。


そして、私はそのエリオットを受け止めたい。

……その心を一人きりにしたくは無い。



ややしてテレーゼはまた青い顔のまま、だが強い眼差しでエリオットを真っ直ぐに見つめた。


「王太子殿下、私のような者の為にあのような場所で危険な目に遭わせてしまい、申し訳ありませんでした。

どうか今後はその御身を大切になさり、あのような危険な事は2度となさらないで下さい」


胸の前で手を合わせ、そう懇願するテレーゼに、皆が呆気に取られたようにポカンと口を開いていた。



「常日頃、エリオットを便利な道具くらいにしか思ってないから忘れてたわ。

これが正常な反応なのよね?」


私の言葉に、皆が一様に首を捻る。


「どうだろう?エリオット様と危険が結び付かなさすぎて、もうよく分からないね」


ノワールがヒョイと肩を上げてそう言うのを、テレーゼが信じられないものを見る目で見つめている。



……あっ、そっか。

エリオット、王太子じゃん?

普通、1番危険な場所に自ら潜入しない、よね?

えっ?

そこから?

そこから私達何かおかしいの?


テレーゼを傷付けた事しか頭に無かったが、普通はテレーゼみたいな反応が正常である事に、私達はここで初めて気付いた。



「テレーゼちゃん、僕は見た通り、公式の場でなければこんな扱いだから、君も僕に必要以上に畏まらなくていいからね。

僕の事もエリオットで構わないよ」


とりあえず、テレーゼにエリオットを責める気がないなら、せめて私が代わりにと、エリオットの耳を引っ張っていると、エリオットはメソメソと涙を滲ませテレーゼにそう言った。

テレーゼはそんな私達を呆然と見つめつつ、頭を下げる。


「か、過分なご配慮感謝致します。

尊きお名を呼ぶお許しを頂き、恐悦至極にございます」


やはり急にエリオット呼びは出来ないのだろう、テレーゼは冷や汗を流しながら声を震わせていた。


テレーゼにとってエリオットは、この国の王太子であり、一貴族であり臣下である自分がいずれ仕えるべき尊き存在なのだろう。



「テレーゼ、貴女を見ていると心が洗われるようだわ。

だからって私には無理だけど」


今度はエリオットの脇腹を何度も殴りながらそう言う私を、テレーゼは目を丸くして見ていた。

密かにノワールがその私の拳を氷で包んで強化している。



「あの、私はもう、十分ですから、や、やめて、シシリア……。

流石に居た堪れないから……」


オロオロするテレーゼを、エリオットが救いの女神様っ!と両手を胸の前で組み、潤んだ瞳で見つめている。

私はそのエリオットに憎々しげに舌打ちをした。


そんな私達を見つめながら、不思議そうに首を捻るテレーゼに気付いたエリオットが、ふふっと笑ってテレーゼの瞳を覗き込んだ。


そういやコイツ、オークションの時も必要以上にテレーゼの瞳を覗き込んでたな。


息を呑むテレーゼに、エリオットは照れたように頬を染める。



「君の瞳の色が、僕の恋焦がれる人の髪の色に似ているんだ。

演技だったとはいえ、余計に不躾に見つめてしまって本当にごめんね」


そう言って眉を下げるエリオットの肩越しに、テレーゼが私をじぃっと見つめている。


何だろう?

何か髪を集中的に見られている気がするが………?


ややしてテレーゼは何かに気付いたように、ハッと口元を押さえた。

そのテレーゼに、エリオットが軽く片目を瞑り、自分の唇の前に指を立てる。


なんなんだ?

いや、今はそんな事より。



「顔が近いのよ、テレーゼにまた何かしたら今度こそ滅するわよ」


エリオットの耳を引っ張ってテレーゼから引き離す私を、テレーゼが微笑ましそうに見つめてている。


おや?

何か勘違いしてない?


テレーゼは隣のノワールを見上げ、ふふっと笑った。


「お二人とも仲が宜しいのね。

シシリアは未来の王妃様だったのね」


当然のようにそう聞くテレーゼに、ノワールは首を振った。


「いや、シシリアは第三王子の婚約者だし、エリオット様はご婚約者様が病気で身罷ったばかりで、そのご婚約者様を偲び、むこう一年は新しく婚約者を迎えないと宣言したばかりだよ?」


ノワールの言葉に、テレーゼは口をあんぐり開けて、言葉を失っている様子だった。


そのテレーゼにノワールはなんて事ない口調で続ける。


「シシリアを利用したい人間が彼女を離す気が無いし、更にそれを利用したい陛下の思惑もあるんだ。

今のところ、エリオット様の堪忍袋のお陰で現状維持出来てるけど。

そろそろ陛下の御身が危ぶまれるところだね。

エリオット様が本気になれば、陛下を失脚させるくらい容易いだろうし。

シシリアは自分の事でそんな面倒くさい事になりたくないから、エリオット様をうまく制御してるよ。

ちなみに病気で身罷ったと公表されたエリオット様のご婚約者様は帝国でピンピンしてるから、心配しないでね」


ノワールの説明に呆然とするテレーゼに、ノワールは困ったように頭をコテンと傾げた。


「僕の伴侶になると必然的にその辺のややこしい事情に巻き込まれてしまうかもしれないけど、全然テレーゼが気に病む必要はないからね。

基本、放置しておけば、自分達で何とかするはずだから」


事もなげなノワールに、テレーゼは納得出来ていないようだったが、それでも頷いた。


ま〜ね。

何か色々とややこしくて面倒くさいけど、自分らでなんとかするから、本当に心配要らないよ?

ゴルタールを捻り潰せば、フリードなんか蟻んこみたいなもんだし。

余裕ですよ?


だからそんな神妙な顔しなくていいんだってば、テレーゼ。





その後、私達が皆でワイワイと楽しそうにしている光景を眺めていたテレーゼは、つられるように楽しそうに笑っていた。

そんなテレーゼにノワールが目を細める。


「騒がしくてごめんね、でも皆といたら退屈はしないよ」


優しくそう言うノワールに、テレーゼが微笑み返す。


「ノワール、私を見つけてくれてありがとう」


そのテレーゼの言葉に、ノワールはゆるく首を振った。


「ううん、遅くなってごめんね。

だけど、例えテレーゼが大陸を超えた更にその先、世界の端っこに身を隠していても、必ず見つけ出して僕のものにしたと思うよ。

お礼を言ってもらうような事じゃないんだ。

シシリアに言われたでしょ?

初恋を拗らせた粘着男だって。

あれ、何も間違ってないからね?

ふふふっ、僕に見つかった事を後悔しないでね、テレーゼ」


そう言って瞳の奥を甘く揺らめかすノワールに、側で聞いていた私達に悪寒が走った。


いやいやいやっ!

相変わらず怖いなっ!

粘着男の称号をアッサリ受け入れた上にいちいち言ってることが重いっ!

それ、テレーゼ、後悔しかしないやつっ!


そう心配する私をよそに、テレーゼは何故かうっとりとノワールを見上げながら、顔を真っ赤に染めて、ノワールの手をギュッと握った。


「……しないわ、後悔なんて。

私はずっと貴方の側にいたいの。

私を見つけてくれたのが、貴方で良かった……。

ノワール、大好きよ」


ノワールの瞳を真っ直ぐに見つめ、信じられない事を言うテレーゼに、ノワールは花が綻ぶように微笑んだ。


「ありがとう、テレーゼ。

僕も君を一生離すつもりはないからね。

愛してるよ、これからも、ずっと……」


甘い囁きと共に、ノワールの顔がゆっくりとテレーゼに近付いていき、そして2人の唇がそっと重なる………。


う、うわぁっ!

チューだっ!

生チューだっ!


めちゃ至近距離でまじまじと見つめる私の腰に、エリオットが腕を巻き付けグイッとじぶんに引き寄せると、目だけでメッと諌めてきた。


何だよ、いいじゃん。

生チューくらい。

2人のイチャコラの為に今まで頑張ってきたんだぞ。

アリーナで鑑賞する権利くらいあると思うが?



ややしてゆっくりと唇を離し、これからの幸せを誓い合うように微笑み合う2人に、私は流石に胸焼けをおこしながら思わず呟いた。



「リア充、爆破しろ、と言いたい」


近距離でジッと2人を見つめていた私が、無表情でそう呟くと、テレーゼは跳ね上がるようにノワールから身体を離した。


「あっ、リアジュウ、な、何かしら?」


慌てて私に向かって真っ赤な顔を向けるテレーゼに、相変わらず私を後ろから抱きしめながら、エリオットがニッコリ微笑む。


「リア獣だよ、リア獣。

リアは人がイチャラブしていると、獣になって爆破するんだ」


エリオットの言葉に目をまん丸にして驚くテレーゼに、ノワールが呆れたような溜息を吐いた。


「テレーゼ、まったく気にしなくていいよ。

シシリアはたまに変な呪文を呟くけど、特に害はないから。

エリオット様、独自の解釈でテレーゼを混乱させないで下さい」


ノワールの説明に、テレーゼは不思議そうに首を捻っている。



まぁ、私の前世の事情を知らないテレーゼには、確かに謎の呪文に聞こえるかも知れないが………。



誰が獣じゃっ!

そんで私が爆破する側かよっ!


調子に乗って後ろから、私の髪をクンカクンカ嗅いでいるエリオットの足を、思い切り踏み抜いて、大理石の床にめり込ませつつ、肘で鳩尾を手加減なく打ち抜くと、エリオットは悶絶しつつも、それでも私の腰に回した手にガッチリと力を込めて離さなかった。


段々と耐久性の上がってきているエリオットに、身体強化をもっと鍛錬して練度を上げねば、と私は心に誓った。






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