EP.121
クラウスの生誕パーティがつつがなく終わり、週明け、いつもの学園のカフェテラスで、私はキティに神妙な顔で告げた。
「私、皆に自分が転生者だって話そうと思うの。
そうしないと、シャカシャカの危険性が伝わらないような気がする。
……アンタには黙っていたけど、フィーネもシャックルフォードも、シャカシャカに魂を穢されていたのよ。
フィーネは……本当は……」
私がそこまで言った時、キティが静かに頷いた。
「ミアさんだったんでしょ?」
キティの返答に、私は驚いて一瞬言葉を失った。
「……アンタ…気付いて……」
驚愕に声を震わす私に、キティが残念そうに首を振った。
「そうじゃないかなって思った時には、もう全部終わった後だったんだけど……。
もっと早く気付けていたら、私が希乃だってミアさんに話せていたら、もっと何か変わっていたんじゃないかなって……。
でもきっと、無理だったんだよね?
朱夏さんの力は、生まれ変わっても解けなかったんでしょ?」
キティの言葉に、私は残念そうに頷く。
それを見つめていたキティは悲しそうに顔を曇らせた。
「……やっぱり……。
私、前世でもずっと感じていたの。
ミアさんが朱夏さんに何か、大事なものを歪ませられているって。
魂を穢すって表現、確かにピッタリだと思う」
そういえば、希乃だった頃に、ニアニアがシャカシャカに何かされているんじゃないかと、希乃だけが気付いていた。
当時はそんな超常的な事、どうしてもピンとこなかったけど、今なら分かる。
希乃の言っていた通りだったって。
アイツは確実にニアニアを堕としていた。
学校では他に手を出していなかったみたいだけど、多分、それ以外には同じような人間がいたのだろう。
輪廻も出来ず彷徨う魂は、きっとクリシロが救済してくれる。
それでも長い時間がかかるみたいだった。
何故シャカシャカは、そんな事が平気で出来るのか……。
「あのね、変な話なんだけど、私最近、この世界に転生したんじゃなくて、還ってきた、ってそんな風に思う時があるの……。
本当に変な感覚なんだけど……。
それでね、朱夏さんの事も、この世界の何かだって感じる時があって……。
それと同時に、朱夏さんはこの世界にいてはいけない、とも思うの……。
自分でもよく分からないから、上手く説明出来ないんだけど……変だよね、ごめん……」
言いにくそうにそう言うキティに、私はゆっくり首を振った。
「アンタの勘は昔から馬鹿に出来ないから、私は信じる。
多分、アイツは本当は……何処の世界にも存在しちゃいけないものなんじゃないかな……。
よく分かんないけど、そんな気がする。
そんで、この世界と何か関係あるってのは、多分当たりだ。
師匠がアイツを必要としているのは、その辺りに関係してんだと思う」
依然得体の知れないシャカシャカという存在だが、ほんの少し、輪郭だけでも見えてきた気がして、私とキティは黙って顔を見合わせた。
「兎に角、今までアイツに直接被害を受けたのは、フィーネとシャックルフォードだけだった。
それが今回、王宮の人間に手を出されたんだ。
黙って見過ごすのは危険すぎる。
皆にアイツについて知っている事、全部話すつもりだから、いいよね?」
キティに確認を取る為にそう聞いたのだが、何故か指をイジイジして後ろめたそうな顔をしている。
「因みに、アンタの事は話す気ないから、安心しなさいよ?」
私の言葉にキティはハッとして顔を上げ、だが直ぐにブンブンと頭を振った。
「だ、ダメよっ!今の朱夏さんについてもそうだけど、前世の朱夏さんについても、私しか感じ取れなかった何かがある気がするの。
それが重要な事だったとしたら、皆にちゃんと伝えておかないとっ!」
なんか目が潤んでいるが、その小さな頭の中でキティ会議が一瞬で開かれたのは一目瞭然だった。
葛藤の末に皆の為を思って決断してくれたのは有り難いが、キティの事については話せない理由がちゃんとある。
「その辺は私が感じた事として皆に話すから。
アンタは周りに合わせて適当にリアクションしといてよ。
なんならその場に居なくてもいいから。
いい?私は前世でシャカシャカがやった事を皆に全部話す。
アンタの前世である希乃が、アイツに殺された事を話すのよ?
もしその希乃がアンタだったってクラウスが知ったら……。
消されちゃうじゃない、シャカシャカ。
師匠が必要としてるってのに、クラウスに消されちゃうでしょっ。
だからね、アンタの話はしない方が、とっても、ものすご〜く都合がいいの。
分かった、お口は?」
私の説明に、キティは慌ててお口にチャックするジェスチャーで返してきた。
「それに、アンタ何か、本当は言いたくない理由があるんじゃないの?」
ピッとキティを指差した指を、目の前でクルクルと回してやると、キティはトンボみたいに目を回し、テーブルにパタリと突っ伏した。
「うう……だって、クラウス様に、私が〈キラおと〉のクラウス様推しだったってバレたら……。
何か、嫌な気分にしちゃうかな……って思って。
ゲームに自分そっくりなキャラが存在していて、しかも私がそのキャラに沼腐ってたって知ったら……。
私……軽蔑されちゃうかも……」
突っ伏したまま顔を横向きにして、キティはウッウッと咽び泣いていた。
いやぁ……アイツがキティを軽蔑?
それだけはあり得ないって言い切れるんだけど。
多分キティは、フィーネやシャックルフォードにゲームのキャラ扱いされた時に、色々思う事があったんだろうなぁ。
それでクラウスに知られるのが怖いと……。
ふむ。
私は一瞬空を見上げると、直ぐにキティに向き直り、キティの顎に手を伸ばすと、その顏をクイっと上向かせた。
そして、艶っぽい低い声でそっと囁く。
「俺がキティの好きだった、その、ゲーム、とかいう物に出てくる王子にそっくりなんだね?
ねぇ、キティ、教えて?
ソイツの何処がどんな風に好きだったの?
ソイツにあって、俺に無いものはある?
君の好きだった物を全部知りたいんだ……。
ねっ?教えて、くれるよね?」
最後に妖しく微笑んで首を傾げると、キティは顔を真っ赤にして、ゾクゾクと背中を震わせた。
「……あっ、なっ、えっ……。
な、何でっ!シ、シシリィだよねっ⁉︎
でも、クラウス様そっくり……!
えっ、憑依っ⁉︎ク、クラウス様っ、そんな事も出来るのっ⁉︎」
アワアワオタオタしているキティに、私は堪え切れずにクックッと笑った。
いやいや、憑依って。
お前はアイツを何だと思ってんだよ。
流石のクラウスでも、キティの側居たさにそこまでは……出来ないよな?
んっ?待てよ……。
アイツなら出来そうな気がする……。
憑依は無理でも、魂くらいは体から抜け出せそうだ……。
ヤベー……クラウス、ヤベー……。
勝手にクラウス妖怪説を立ててしまったが、あり得ないとは分かっていても、そう考えさせてしまうクラウスに、改めて畏怖しつつ、涙目でこちらを窺っているキティに、ヒラヒラと手を振った。
「キティの前世を知ったアイツの反応なんて、
そんなもんだと断言出来るわね。
百パー、軽蔑とかあり得ない。
自分そっくりのキャラに嫉妬しまくるってカオスな状況しか思い付かないわよ。
だからアンタが心配してる事なんて、杞憂にすぎないの、分かった?」
アハハーンと両手と肩を軽く上げると、キティは真っ赤な顔でプルプルと震えていた。
「どうしたの?今度こそ産まれたてなの?」
「ち、違うわーーーっ!」
食い気味に否定されてしまったが、じゃあ、何でそんなプルプルしてんのよ?
「シ、シシリィ、もう二度とクラウス様の真似は禁止よっ!
ほ、本人並みに、カ、カッコ良すぎるから……」
真っ赤な顔で目を潤ませるキティに、あらあら〜ごめんねぇ、と私は口に手をやりプッと吹き出した。
「何だかんだと長い付き合いだから、アイツがアンタに言いそうな事くらい分かんのよね〜。
あと、私がカッコ良いのは前世から分かってた事じゃない?
今更気付いたとか、アンタ本当にリアルに興味無かったのね」
ヤレヤレと若干呆れ顔でそう言うと、キティはううっとテーブルに置いた自分の腕に突っ伏した。
「そりゃ、前世ではよくゲームのクラウス様の台詞をアンタに言ってもらってキャーキャー言ってたわよ?
でもっ、生クラウス様は反則よっ、生クラウス様はっ!」
おい、嘆きつつもアイツをナマモノ扱いしてやんなよ。
痛み早そうだな〜〜。
キティが居ないと直ぐに駄目になるやつな。
やだわ〜〜扱い難しい奴って。
「まぁ、兎に角、私が皆に話してる間、アンタは知らないフリしてればいいの、分かった?」
くれぐれも余計な事言うなよ〜、とキティの鼻の先をチョンチョンしてやると、キティはウグゥっと唸りつつも頷いていた。
「ところで、アンタの方はどうなの?
何だかエリオット様と……その……良い雰囲気に見えるんだけど?」
突然のあり得ない話に、私は優雅に飲んでいたお茶をブゥーーーッ!と勢いよく吹き出してしまった。
「あ、あ、アンタ、何とんでもない事言ってんのよっ!
何で私がエリオットと良い雰囲気になんてならなきゃいけないのよっ!」
流石に聞き捨てならんっとキティに食ってかかると、キティは何故かモジモジして、頬を染めている。
「……ごめん、実は見ちゃって……。
その、この前のクラウス様の生誕パーティで、2人がバルコニーにいるところ……」
「なぁ……っ!」
衝撃的なキティの告白に、私はボンっと顔を赤くして、力無くテーブルにへたり込んだ。
「ごめんっ、本当にごめんっ!
わざとじゃないのっ、それにチラッと、本当にチラッと見えただけだから」
両手を横に広げ、ワタワタと上下に振るキティに、私は念の為、大事な事だけ聞き返した。
「チラッとって、どの辺?」
私の質問に、今度はキティがボンッと顔を赤くして、申し訳なさそうにモゴモゴニヨニヨと答える。
「あの……エリオット様が…シシリィの耳を…甘噛みしてたような?」
口元をニヤつかせながら、明後日の方向に視線を漂わせるキティに、私はもう既に涙目になっていた。
よ、よりにもよって、そこかよっ!
あの変な声出ちゃったヤツじゃんっ!
いぎゃぁぁぁぁぁぁぁっ!
耐えられんっ!
そんなとこキティに見られてたとか、いっそ死ねるっ!
ウグゥっと目尻に涙を浮かべる私に、キティは焦ったように両手をブンブン振っている。
「いやっ、でも、クラウス様が感心してたよ?
あそこで引けるなんて、兄上は聖人か……って」
クラウスも見てたのかよっ!!
殺してくれっ!
もういっそ、殺してくれっ!
真っ赤な顔で涙を流しながら、私は自棄になってキティに聞いてみた。
「……因みにクラウスなら、あの後どうなんの?」
バグった脳が怖いもの見たさに発動してしまった事を、この後直ぐに後悔する事になる……。
「ク、クラウス様なら、えっと……そのまま耳を舐めるかな、執拗に……。
もうダメって訴えても聞いてもらえず、割と凄く、けっこー舐められるかな……執拗に……」
ギャァァァァァァァッ!
想像しただけで身の毛がよだつっ!
何だよっ、それっ!
地獄じゃねーかっ!
何の罰ゲームだよっ⁉︎
いや、罰ゲームを超えてるわっ!
私なら死ねるっ!自信があるっ!
ゾワゾワと鳥肌を立てながら両腕を擦っている私に、キティは何か遠い目をしながらふふっと笑った……。
「そーいうもんなのよ……、普通は。
ヤメテって言っても、勝手に脳内であぁんもっとぉに変換されちゃうみたいよ?
不思議よね?」
顔に影を落とし、ふ、ふふふ……と笑うキティに、私は真っ青になってカタカタ震え続けた。
怖えーーーっ!
クラウスの普通が吐くほど怖えーーーーっ!
ヤバイクラウスヤバイクラウスヤバイクラウスキティニゲテ………。
ガタガタと呪文を呟き続ける私の目の前に、キティはパッと人差し指を立てて、クルクルと回した。
「でも、エリオット様は暴走しないじゃない?
アンタがやめてって言う前に、自分を律してくれてるじゃない。
クラウス様が言ってたけど、エリオット様がおふざけみたいにシシリィにかまうのは、流石にそうやって発散させなきゃ、そんな自分を抑え切れないからだろう、って事らしいのね?
よくアンタにセクハラしてはブッ飛ばされてるけど、本当はもっと凄い事だって出来るし、したいのに、シシリィに合わせて我慢してくださってるのよっ!
はぁ、エリオット様って本当に大人……」
うっとり両手を組むキティに、私はいやいやいやと片手を振った。
アレのどこが大人なんだよ?
口を開けばセクハラ。
顔を合わせばセクハラ。
あわよくばセクハラ……。
ただの軽犯罪者じゃねーかっ!
納得のいかない顔でぶうたれる私に、キティはヤレヤレと肩を上げて頭を軽く振った。
「それもこれも、相手がこの小5男子だからなのよね……。
色恋よりもカブトムシ、クワガタ、サッカー、野球っ!
みたいな……この小5男子のせいなのよ」
腕を組んで、1人納得するかのようにうんうんと頷くキティに、流石に額に青筋が浮かぶ……。
何が悪いっ!
小5男子で何が悪いっ!
皆結局、あの頃に帰りたいな〜って懐かしんで思い浮かべるのは、小5の夏だろっ⁉︎
なら、私が永遠の小5男子で何が悪いってんだよーーっ!
ピキキっと顔面に青筋を立てまくる私に、キティは今度はビシィッと真っ直ぐに私を指差して言った。
「がっ、しかし、貴様は小5男子にあらずっ!
歳に合わない魅惑のボディを持ち合わせた、17歳の立派な成人女性なのっ!
今は正に結婚適齢期真っ只中っ!
2、3年後には嫁入り出来る準備万端であるべき立場っ!
それがいつまでも、小5男子だから色恋なんか分からんわ〜〜なんて、鼻水垂らして虫取り網片手にフラフラしてるなんて、とっくに許されてないのよっ⁉︎
アンダースタン?」
ゴフゥっ!
強めのボディーブローを何発も食らった私は、満身創痍、フラフラになりながらテーブルに突っ伏して真っ白に燃え尽きた。
「……キ、キティ……さん……。
私は……どうすれば良いんでしょうか……?」
ダラダラとテーブルに涙の湖を制作している私に、キティは自分の顎を掴み、う〜ん?と首を捻った。
「そもそもが、シシリィは男女の何にそんなに苦手意識があるの?」
そのキティの笑っちゃうくらいの愚問に、私はガバッと身を起こして勢い良く叫んだ。
「小っ恥ずかしいからだよーーーっ!!!」
木霊が返ってきそうな大声に、キティが咄嗟に自分の耳を両手で塞ぐ。
「小っ恥ずかしい?恥ずかしい、じゃなくて?」
キティからの問いかけに、私はブンブンと頭を上下に振った。
「だって、小っ恥ずかしいじゃんっ!
何か甘い言葉とか囁かれてさ、女の子扱いされてさ、こう、ゾワゾワ〜って、ひぇ〜ってなるんだわ。
ガラじゃないもんっ、全然私のガラじゃないっ!」
ギャーギャーと言い返すと、キティが煩いとばかりに耳に指を突っ込んでいた。
「……そんな事より、エリオット様がお側にいる時は当たり前にシシリィの腰やら肩やらを抱いているんだけど……あれは気になんないのね……」
何だか呆れたようにボソッと呟いたキティの言葉を、頭に血が上っていた私は聞き逃してしまった。
「は?何か言った?」
問いかける私に、キティはブンブンと頭を振り、作り笑いを浮かべる。
「コホン、つまり、小っ恥ずかしい事をされる側になるのが耐えられないのね?
じゃあ、小っ恥ずかしい事をする側になればいいんじゃない?」
キティの妙な提案に、訳が分からず私は首を捻った。
「いや、だからね?アンタ前世でよくやってたでしょ?
王子様から俺様系、純粋男子とか、頼まれるままに色々。
あの時は特に小っ恥ずかしい感じは無かったわよ?
むしろ嬉々としてやってたじゃない。
される側が嫌なら、する側になれば良いんじゃない?って事」
キティの提案にやっと頭が追いついた私は、ハッと鼻で笑って足を組んだ。
「つまり、男相手に男役をやれって事?
ハッ、バカらしいっ」
何を言い出すのかと思えばこのお嬢様は。
いよいよ腐った脳が耳から漏れ出したのかと心配する私をよそに、キティは至極真面目な顔でバンッとテーブルを両手で叩いた。
「良いじゃないっ!エリオット様ならノリノリで喜んで下さるはずよっ!
アンタに普通の男女のお付き合いが無理なら、オリジナルでやっていくしかないじゃない?
別にこうしなきゃダメだなんて決まりは無いはずよ。
アンタはアンタに合ったやり方で、男女の関係を進めればいいのよ」
キティの力強い言葉に、思わずおおっと感心した私は、いや、確かにありかもな、なんて思ってしまった。
そもそもが、やられっぱなしなのが気に入らなかったんだよな。
私がやる側になれば、万事オーケーかもしんない。
ううむ……。
唸りつつも、頭の中でショタ(趣味)エリオットが、両手を縛られ(趣味)涙目で真っ赤になっている姿を思い浮かべてみる……。
「……うう〜ん、ショタなら、何とか…ならなくも……」
「ノーショタッ!デカの方でっ!」
すかさず反論された私は、ええ〜っと嫌な顔で頭に思い浮かべたエリオットをデカに変えてみる……。
うん、キツい。
デカはキツい。
無理があるんだが?
「はいっ!そこですかさず鬼畜な一言っ!」
何故か私の脳内を見透かしたかのようなキティの言葉に、むむむっと眉間に皺を寄せ、頭に思い浮かべたエリオットの顎を掴んでみる。
『……リア……もう、やめて……』
涙目で私に向かって許しを乞うエリオット。
『あら?アンタの体はそんな事言ってないみたいよ?』
ふふっと笑うと、エリオットは目尻に浮かべた涙をツーと流した。
『も……許してぇ……』
……ショタじゃダメ?
これ本当にショタじゃダメ?
ううう〜っと頭を抱えて悶絶する私に、キティがボソッと呟いた。
「エリオット様がお相手ってとこを素直に受け入れている時点で……もう既にアレだって気付かないかな……普通」
しかしそのキティの呟きを、またもや聞き漏らしてしまった私は、苦悶の表情でギッとキティをふり仰いだ。
「何っ?何か言ったっ⁉︎」
私の眼光に怯えながら、キティはフルフルと頭を振ると、爽やかに空を見上げて、鈴が鳴るように澄んだ声で答える。
「別に、ただ、エリオット様、よくここまで頑張ったなぁ……って」
今っ!頑張ってんのは私だよっ!
キティの明後日な称賛に、ガルルッと噛みつきそうになりながら、その後も私はうんうん唸りつつ、デカエリオットで何とかならないかとアレやこれや頭の中をフル稼働させたのだった……。
………あれ?何でこうなった?




