6 アン
アンside
出ていちゃったか。
私がここ保健室の担当先生に就任してからは、平和な毎日だった。
生徒たちの中には、たまに軽い傷をしてここにくる子もいたがそれ以外は暇だった。
学校に出勤しては、ひたすら本を読む。やることがないのだ。
しかし、3年前から急に毎日のようにボロボロになって私を訪ねる子が出来た。
初めての時の姿は忘れられない。
ガラッ、私がいつものように本を読んでいる保健室の扉を開ける音が鳴った。
「どうかされましたか?」
私は本にしおりを挟みながら尋ねる。
しかし、返事はなく、私の方に近づいてくる足音だけが聞こえてきた。
不審に思った私はすぐに顔を上げた。
「えっ!」
私の方に向かって歩いてきた生徒を見て驚愕した。
ボロボロになっていたのだ。
全体的に切り傷が出来ており、魔法を食らったのが痣になりそうな傷がたくさん見つかった。
「ちょっと、どうしたの!」
私はすぐに生徒の方に向かいヒールをかける。
私が声をかけても生徒は返事をすることなく下を向いたままだった。
こちらを見てくれないので、私は顔を覗き込んだ。保健室を利用した生徒は記録しなくてはいけないからだ。
そして、顔を見てすぐに分かった。
騎士団長スカイの息子、ロコだった。
彼は、学校では有名人だった。
私が知っている生徒は、王族、位が高い貴族、そしてこのロコぐらいだった。
ロコが有名な理由は、騎士団長の息子、平民というのが大きいかもしれない。しかし、私たち教師の間には優秀ということで認識していた。
彼は対戦の授業で誰にも負けたことがない、というのは学校全体が知ることだった。
以前、上級生に騎士団長の息子ということで絡まれしまったらしいが、全員返り討ちにした。
それで彼の名前は全学年の生徒、それから教師にも伝わった。
程なくして対戦の授業を担当している先生がロコに敗れたといううわさが広がっていた。その教師は自分が強いというのが分かっていて、とても傲慢な教師だった。
もちろん、教師の中では1,2番目を争うほどの実力だった。
教師の中には、彼に真実を確認する人もいたようだがはぐらかされたそうだ。
何が原因でロコと教師が争ったかは知らないが、それでロコに喧嘩を売る生徒はいなくなった。
その彼がボロボロになっていた。
「あなたロコ君よね。どうしたの?」
目立つような傷がなくなったのでヒールをやめて質問をする。
「・・・。」
彼は何事もなかったかのように立ち上がると入ってきた扉の方へ歩き始めた。
私は彼の手を掴んで止める。
「何か言わないと分からない。きちんと答えなさい。」
今度は先生のように問う。
「・・・別に。対戦の授業で負けただけです。」
しばらく間が開いた後彼はそう答えた。
そんなことは言われなくてもわかっていた。これがもしイジメなどだったら大問題だ。
そういう答えを聞きたかったのではなくどうして負けたのかを聞きたかった。上級生に勝ち、学校の教師にすら勝てるのに、なぜ負けたのかと。
今の彼に聞いても答えてくれそうにないのは明らかだった。
私は心の中で溜息をつく。
「シャワー浴びていきなさい。とても汚いわよ。」
私がそういうと彼は自身の体を見渡して突然服を脱ぎ始めた。
「ちょっと!何でここで脱ぐ、」
私が何でここで脱ぐのか聞こうとした時、彼の裸を見て言葉止まってしまった。
彼が服を着ているときは気づかなかったが胸に何かしらの封印魔法の跡があった。
普通、封印魔法は黒く魔法陣が残るのだが彼には残っていなかった。
どうして気づけたのかというと私が学生の頃専攻していたのが封印魔法だったからだ。
「・・・すみません、水は流してもらってもいいでしょうか。」
私がどうして封印魔法の跡があるのかを考えていると、彼がボソッと私に尋ねてきた。
「ええ、いいわ、」
いいわよ、と言おうとした時に彼の体に他の跡がないか見ようとした時に私は彼の股を見てしまった。
一気に顔が熱くなるのが分かる。
「わかったから、は、速くシャワールームに行きなさい!」
誤魔化すように彼の背中を叩いてシャワーへ促す。
最近の子供は、大きいわね。それが私の感想だった。
ここのシャワールームことを思い出していたら余計なことまで思い出してしまった。
彼は私が封印魔法の跡に気づいているとは知らないだろう。
今日のように、何度かロコの魔力について聞いたことはあったが、すべてはぐらかされてしまう。
彼とはもうすぐお別れだ。卒業してしまうのだから。だから、それまでには彼の封印を解いてあげたい。
それが私のここ3年間の目標だ。




