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周りが最強すぎる  作者: ノロ
4/6

4 アインツの意図

 あれから木刀を取ってから対戦の授業で普段は使われている対戦場に行く。

 生徒は誰もいない。それもそのはず。

 今は春休み期間なのだから。

 なぜ俺がここに来ているのかというと親父に言われたからだ。

 親父が若い頃は毎日木刀を振っていたと小さい頃に言われた。それからは暇な時は素振りをしている。

 素振りは小さい頃からしているからか好きな方であった。

 しかし家の周りでは振る場所がないし、そもそも木刀がない。だから、わざわざ学校に来ているのだ。

 好きなことをするために、嫌いな場所に来なくてはならないとは皮肉だなと思う。

 それからひたすら素振りを続け、正午の鐘が聞こえてきて集中が途切れる。

 時間にして3時間強、無心に振り続けていた。汗びっしょりになっていた。

 仕方ない、水浴びに行ってそのままバイトかな。

 この学校には水の魔力石が常備されていて魔力を流すことで生徒たちはいつでも汗を流すことが出来るのだが、俺は今魔力を流すことが出来ないのでただの石でしかない。

 この学校は俺のような生徒に適していないのだ。

 「普通魔力を流すことが出来ない奴なんていないけどな。」

 自分に向けてボソッと言う。

 「その格好でバイト行ったら流石に迷惑でしょ。」

 俺が支度をしているとアン先生が言う。

 「びっくりさせないでください。いつからいたんですか。」

 「いや、正午の鐘がなったから。今日も真面目に素振りしているかの確認をね。」

 確認、か。

 「はぁ、先生が暇ならその若さを生かして男でも捕まえたらいいのに。どうせ彼氏もいないし、家に一人でいても寂しいから来たんでしょ。」

 「ちょっと、そんな真っ直ぐ言わないでよ。」

 やっぱり合ってるのかよ。

 アン先生は俺のような若い男子生徒には目に毒な体をしている。

 凹凸が激しいからだ。

 顔も普通に整っている。

 アン先生は保健室にいる先生だ。俺が対戦の授業でボコボコにやられるようになってからは傷ついた体をよく直してもらったものだ。

 2,3年ほぼ毎日会っていたらいつの間にか話せるようになっていた。

 「あなたも変わっているわね。家でゆっくりしていたらいいのに。」

 「そんなことを言われても。それで、今日は何ですか?」

 春休みに入ってからはちょくちょくアン先生は俺の様子を見に来ていた。

 本当に暇だからなのか。それとも、俺のことを心配してくれているからかは知らない。

 「本当に様子を見に来ただけよ。それに学校にはあなたぐらいしかいないでしょ。」

 「いや、今日はアインツと会いましたよ。」

 「意外ね。何か話したの?」

 「特に何も。ただ俺と親父が終わりだと言っていました。」

 アインツの話は確かこんな感じだったはずだ。別にどうでもよかったのであまり覚えていない。

 アン先生は俺の返事を聞くと一人で考え込んでしまった。

 「どうかしたんですか?」

 俺がそう聞くと、アン先生は言うか言わないか迷ったようなそぶりを見せて口を開いた。

 「あの、スカイさん。今回の騎士団対戦は予選を勝ち上がったらしいわ。」

 「・・・は!?」

 意外過ぎることに変な返事をしてしまった。

 親父は母が亡くなってからの3年間は全て予選敗退だった。しかも、1回戦。

 それが急に本戦出場なんて。

 毎日朝しか会っていないが変わったところはなかったはずだ。

 「だから、アインツ君はあなたに話したのでは?」

 そういうことか。

 確かに春休みに入ってからアインツを見たのは初めてだった。

 しかし、親父が勝ち上がってきたということは俺に宣誓布告しに来たのだろう。アインツの父、アルベルが勝つと。アインツよ、来るなら一人で来いよ。取り巻きかわいそう。

 「そういうことですか。・・・あぁ、親父だけじゃなくて俺も終わり。そういうことか。」

 「そういうことだと思うわ。・・・頑張って、ね?」

 「そこで疑問形ですか。死にはしないでしょ。」

 アインツが宣誓布告したのは親父にだけじゃない。

 要するに親父をアルベルが、俺をアインツが潰すということだ。

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