3 アインツ
アインツside
相変わらずイライラさせてくれる。
僕は昔、といっても2,3年ほど前までは彼、ロコとは仲が良かった。
僕の憧れはロコの父、スカイだったからだ。
小さい頃はスカイのことが嫌いだった。
僕の父、アルベルが小さい頃の憧れだった。
その父がスカイより下の副団長だったからだ。
スカイは当時、史上最年少の騎士団長だった。
スカイが貴族であったなら僕が嫌うこともなかっただろう。しかし、彼は平民だ。
父は貴族。それも名家。周りの声が聞こえてしまう。どうして名家が2番手なのか。何をしているんだアルベルは、と。
スカイを嫌いになるのも当たり前のことだった。
だが、2番手でも仕方ないと思わせる出来事があった。
それが騎士団対戦だ。
この騎士団対戦は騎士団の中、トーナメントを事前に行い最終的には国民の前で勝ち上がった騎士が戦うというものだ。
この制度は僕が学校に入学するときにできた、新しい制度だ。
小さい頃の僕はこの制度によって、勝ち上がった父が団長になると考えていた。
今この制度ができたのは貴族たちの力だということがわかる。
おそらくスカイが騎士団長になったことが気に食わない貴族がこの制度は考えたのだろう。
なぜなら、本番勝ち上がった騎士100名の一斉対戦が始まった瞬間スカイ対99人だったからだ。
圧倒的だった。
そう、手も足も出なかった。
スカイは剣だけで99人を倒してしまった。
貴族は魔法を使うことが出来る。魔力が平民に比べて高いからだ。
逆に平民は基本的に身体強化という魔法しか使えない。
試合開始と同時に始まったスカイへの一斉魔法攻撃は彼の手に持った剣によってすべて切られた。
魔法は目に見えないほど速いというわけではないが、かなり速い。
それを1つ1つさばきながら、1人を気絶させ、また1人を気絶させと徐々に数を減らしていく。
そして最後の1人、僕の父であるアルベルを気絶させて終わりを迎えた。
スカイはこの試合で傷一つなかった。そして彼は剣王と呼ばれるようになった。
僕がスカイを憧れの人と思うようになったのはこの時からだ。
会場の盛り上がりは凄かった。
1人づつ減っていくたびに、歓声が大きくなっていたのだから。
それから毎年ある騎士団対戦はスカイのお披露目会になってしまった。
貴族たちがこれからは毎年やるとスカイが優勝する前に発表してしまっていたからだ。彼のような平民のイレギュラーをなくすためだろう。
残念なことにこの発表がスカイの騎士団長の立場を確立させてしまった。
毎年、スカイの圧倒的な勝利で。
しかし、3年前に遂に僕の父アルベルが優勝した。
スカイはというと予選敗退。
3年前からは僕の父上が騎士団長の立場を確立させた。
逆にスカイは落ちぶれて行った。
僕が学校に入学してから対戦の授業でスカイの息子、ロコと出会った。
初めは分からなかったがある授業で身体強化を教わった時に分かった。
ロコの身体強化は周りとは比べ物にならないというのが目でわかったからだ。
身体強化は見た目に変化が出ることはない。
しかし、ロコが身体強化をした瞬間に彼の皮膚は少し黒くなり目が赤くなっていた。
この現象はスカイと一緒だ。
周りは一斉に質問攻めをした。
スカイの息子なのか。それはどうやったらできるようになるのか、など。
ロコは困ったような顔をしていたので、僕が貴族の立場を使って彼を連れ出した。
ロコは助かったような顔をした後、ありがとうと言った。
僕は当然のことをしたまで、少し照れながら言い、それから質問攻めにした。
ロコのうんざりした顔は忘れられない。
この日から僕たちは仲良くなった。
ロコは何に関してもまじめだった。勉学、対戦、彼は何でも1人でこなした。
しかし、3年前から彼は手を抜くようになった。
授業の時間は話を聞かずにふて寝をし、対戦の授業では身体強化を使わなくなった。
身体強化はロコが唯一使える魔法だというのに。
それを使わなかったら僕たちは一方的に彼をやつけることになってしまう。
みんなが彼に使えと怒っていた。勿論僕も。
しかし彼は、何も言わずにやられるだけだった。
今までロコに勝てた人はいなかったが逆に負ける人がいなくなってしまった。
それからはロコの対戦授業はひどいものだった。今まで彼に負け続けて怒りがたまっていた生徒がこぞって彼と対戦し始めた。
彼は断ることなく毎度、魔法を食らってボロボロになっていた。
そんな彼を見ていられず、いい加減にしろと僕は彼に怒った。
しかし彼は表情一つ変えずに無視していた。
それからだった。僕と彼の関係が悪くなったのは。
不愛想に返事してくれるだけでもましな方だ。
今は僕の憧れであったスカイも、友であったロコもただの嫌いな人になってしまった。




