2 憂鬱な朝
「ロコもう起きろ、学校に遅れるぞ。」
親父の声が聞こえて目が覚める。
はぁー、とでかい伸びをしてベットの上から降りる。
俺が降りようとするとミシミシ音がする。学校に入学する日に買ってもらったベットだ。
俺のベットはリビングの端に適当に置いてある。
家は1dkという間取りで1つだけ部屋がある。その部屋は親父の部屋だから俺にはないようなものだ。
「ロコ、もうすぐ卒業なんだからしっかりしろ。俺はもう行くぞ。」
親父が玄関の扉の前でそう言ってくる。
「はいはい、早く行け。」
親父は溜息をつくとすぐに出て行った。
俺はダイニングテーブルの上に置いてあるパンを食べる。
毎日のことだけどパサパサのパンだ。
ここ2,3年は毎日のこんな感じだ。
前日にバイト帰りに売れ残りの味のないパンを買う。
3年前に母が死んでからは家事をする人がいなくなった。それからは飯はバイト先のまかないとこのパサパサのパン。因みに親父が何を食べているかは知らない。
母が死んで半年ほどは親父に活力がなかった。
その期間だけは、家より学校の方が好きだった。
母がいたころの親父は何でも熱い人だった。
俺の勉強に関しては特に何も言ってこなかったけど、対戦に関しては熱心に付き合ってくれた。俺が何度やめたいと言っても引き止め、励まし、向き合ってくれた。
けど、母が死んでからは顔を合わせるのは朝のこの時間だけになってしまった。
別にそれは構わない。
ただ、あの頃の輝いていた親父と重ねてしまう自分が嫌だった。
こんな事を考えている場合じゃないな。
早く学校に行かなくちゃな。・・・憂鬱だ。
それから味のしないパサパサパンを水で流し込み、適当に身支度をし、家を出た。
「おい、もう学校に来る必要ないだろう、お前。」
俺が学校に着いてから木刀を取りに行こうとする時にアインツに話しかけられる。
このアインツは貴族では名家らしい。俺は平民のためその辺に詳しくないがいつも下っ端みたいなやつがいる。というか、この学校で平民は俺だけだ。
「そうかもしれませんね。」
めんどくさいと思いながらも返事をする。
「なら、ここには来るな。七光りが。いや、今は親さえも落ちぶれたんだっけな。」
アインツが言うと周りの連中が笑い声をあげる。
こんな感じのことは毎日のようにある。正直何も感じなくなってしまった。
悔しい、うざい、そういった感情すらわかなくなってしまった。
「そうですね。今の俺は七光りですらないですね。ただの落ちこぼれです。」
取り合えず同意する。親父のことをバカにされているがどうでもいい。事実だから。
「チッ、貴様はプライドすらなくなったのか。」
プライド?そんなものいらないだろ。
「いいか、卒業の前にある騎士団対戦は私の父上が勝利を収める。貴様の父ではない。」
なんだ、そんなことを言うために話しかけてきたのか。
「ええ、俺もそう思います。」
この質問が母が亡くなる前だったら俺は反発して、俺の親父が勝つ!と言ったのだろう。
「そうだ。貴様の父、スカイは終わりだ。そして、ロコ貴様もだ。」
親父の名前はスカイ。
以前は平民初の騎士団長だった。しかし、今はもう。
「俺は親父と違って貧弱ですので。」
「もうよい!速く俺の前から去れ。」
何なんだ。そっちが話しかけてきたんだろ。
アインツはかなりイライラしているので早々と立ち去ることにした。




