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東京赤羽で昔ながらの焼き鳥①~ぶらり一人飲み~

作者: Sの人間模様

俺は今年で28歳、いわゆるアラサーのサラリーマン。

仕事はエアコン・冷蔵庫などをリースで契約してもらう営業をしている。

趣味・彼女なし。

日々増えていくエンゲル係数と悪戦苦闘しながら、家計をやりくりすることが日課だ。


近年、「高級焼き鳥」なるものが流行りらしい。

雑誌を立ち読み中、そんなものもあるのかと感心していると、次の日には同僚がその話題を振ってきた。

そんな話をしていると、無性に焼き鳥が食べたくなる。

夏のジリジリと迫ってくるような暑さの中で食べるのもいいが、夏から秋にかけてのこの時期に食べる焼き鳥もまたうまい。


つまり、うまいものはいつ食べてもうまいのだ。

そんなことを考えていると、早く仕事を終わらせて一杯やりたい気持ちがさらに高まってくる。

今日は何がなんでも定時で帰ろう。

そう固く決意した。


キーンコーンカーンコーン――

17時の終業のチャイムが軽快に鳴り響く。

定時退社できるよう既に机の周りは片付け、PCの電源も落としてある。

「お先に失礼します!」

足早に会社を立ち去り、山手線に乗り込む。


さっそく赤羽駅で降り、徒歩で店を探し始めた。

できれば、入り口はガラガラと音を立てるような引き戸で、のれんがかかっているような「昔風」の店がいい。

彼女がいた時は、「食べるログ」にしょっちゅうお世話になっていたが、いつからか直感でその日の店を選ぶようになった。

この店を選ぶ時間も含めて「飲み」なのだ。

人それぞれ流儀は異なると思うが、町の雰囲気を肌で感じるにはこの方法が一番だ。

見つけた。

今夜はこの店で飲むとしよう。


ガラガラ――

「いらっしゃいませ!お好きなお席にどうぞー!」

見たところ客の入りは6割程度、店主の手さばきが見え、なおかつ初めての店でも座ることが許されそうな席……。

店主の斜め前が本日の正解だ。


よし、まずは席を確保したぞ。

なにはともあれ、とりあえずビール。

「すみません、生一つください」

「はーい、少々お待ちください」


――ゴトン

「お待たせいたしました。生です」

きたか。

注文して30秒程しかたってないが、すぐ生を提供してくれるその心意気よし。

キンキンに冷やしたグラスに注がれた金色に輝く液体。

徐々に汗をかき始めるその姿はなんて官能的なんだろう。


――ゴクゴク

あー、うますぎる。

この時のために毎日ストレスをためて仕事しているんじゃないだろうか?

それだけ破壊力のある味だ。

ジョッキは最初の一口でまず半分飲む。

後の半分は店主が鳥を焼く姿を見ながらゆっくり飲むとしよう。


使い古された焼き場には高温の炭が所狭しと並べられており、その上で焼かれる鳥たちは煙で燻されながら一気に焼かれていく。

じわりじわりと汗をかくように肉汁がたれていく姿がたまらなく愛しい。

アツアツの焼き鳥とキンキンに冷えたビールのマリアージュを早く味わいたいものだ。

あれは俺の串かな?

っと、いけないいけない。そういえばまだ注文してなかったな。

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