りんご飴
「ねぇポニテ、りんご飴って美味しい?」
「私好きよ、お祭りの屋台で見ると必ず欲しくなるの。」
「そっか…。」
「それより銀髪ちゃんだって、まだ食べるの?さっきフランクフルトも食べてたじゃない?まだここに焼きそばもあるんだよ!」
「ポニテと一緒、屋台で見たら欲しくなるし、とりあえず全部食べてみたくなるんだよ。全て調査しなくては!!」
「じゃぁレポートよろしくねっ。」
「ラジャー!!」
2人はコロコロ笑いながら誰もいない教室で買ってきたものを平らげていった。
「私ね実は…。」
ポニテと銀髪ちゃんは同じ高校の2年生。2人とも部活などは入ってない。今年になって同じクラスになって、たまたま席が前後になってから話すようになったのだ。ポニテは可愛いものが好きだった、私服や雑貨はラブリーなものが好みでやや高い位置に縛ったポニーテールは彼女のアイデンティティと言って良い。
銀髪ちゃんの透き通るようなサラサラの銀髪は人間離れしていた。青い瞳も相まって近寄りがたい美少女としてクラスでは人気というより崇める存在となっているほど。
要するに2人とも容姿端麗ということだ。例えば休み時間に2人が教室で話していると他所のクラスの男子が見に来るほどである。
「今度の席替えは窓際ゲット!」
私は席替えで窓際の席になって嬉しかった。窓際なら退屈な授業も外を見て気を紛らすことができる。窓を開けたら風が入って新鮮な空気を吸えるのもいい。そして、前の席は銀髪の少女だった。
「私はポニテ、銀髪ちゃん宜しくね!」
それ以降、銀髪ちゃんとはよく話すようになった。あの髪色に青い瞳ということは外国人だろうか、顔立ちは日本人だからハーフ?クオータ?そんなことを想像していた。面白いのが日本文化に強い興味を持っていることだ。まるで調査でもするように知ろうとする。私はそんな知りたがりによく付き合うようになっていくのだった。
最近は日本のお祭りにご執心だ。特に夜店と呼ばれる屋台の食べ物には惹かれているようだ。近々お祭りがあるから一緒に行く約束をしている。
「後ろの席のポニーテールの子、すっごい美人さんだなぁ…」
つい独り言が漏れたけど誰にも聞かれてなかった。すると後ろからすぐに話しかけられた。
「私はポニテ、銀髪ちゃん宜しくね!」
驚いたけど、仲良くしてくれそうなら大歓迎だ。それ以来ポニテとはよく話すようになった。私が変なものに興味を持ってもそれにとことん付き合ってくれる。夜店のB級グルメに興味を示していたら今度お祭りに誘ってくれた。とても楽しみにしている。
2人で恋バナをすることもある。学校中でポニテの想い人を知っているのは私だけだろう。何を隠そう、彼女は世界史の教師に恋心を抱いている。確かにイケメンで面白い授業には定評があり人気教師と言える。新任教師というわけではなく、控えめに言っても若いとは言えない。しかし、妻帯者ではないので止めたりはしない。恋愛は自由なのだから。ポニテの秘密は私だけが知っている。私の秘密を打ち明けたらポニテはどんな顔をするだろうか…。困ってしまうだろうか、受け入れてくれるだろうか…。
私は今日、銀髪ちゃんと2人でお祭りに来ている。びっくりしたのは銀髪の食欲だ。さっきベビーカステラを食べたのに今は牛串を買っている。夜店の全てを食べ尽くすつもりだろうか。あの細い体のどこに入るのだろうと不思議に思いながら並んで歩いていた。
「今から学校に忍び込まない?残りは教室で食べようよ!」
銀髪ちゃんが提案してきた。夜の学校には入ったことはなかった。見つかったら怒られるのだろうか。銀髪ちゃんはさらに言った。
「話したいことがあるの…。」
どうやは人には聞かれたくないことみたいなので、とりあえず学校に向かった。
2人はこっそり教室に入った。買ってきたものを机に並べて宴の始まりだ。次々と平らげる銀髪ちゃんをみていると気持ちよくなる。ひと息ついた時、銀髪ちゃんが深刻そうに口を開いた。
「私ね実はりんご飴なの…。」
「どういうこと?」
「外側は甘い飴でコーティングされているけと、中身は全然別物。」
「今まで猫をかぶってたってこと?」
「違うの。この姿は本当の私じゃないの。」
意味のわからない突然の告白にりんご飴を舐めたまま固まってしまった。どうにか理解しようと頭をフル回転させているが思考が追いつかない。
「まさか整形のカミングアウト?」
銀髪ちゃんはさらに言った。
「ポニテ、私地球人じゃないの。地球に観光に来る宇宙人に地球の良いものを伝えるために来たの。」
「なにそれ!面白すぎ、さすがにそうくるとは思わなかったわぁ。」
私は全く取り合ってなかった。その事実はあまりにも想定外だったからだ。
「じゃあ窓を見て。」
窓を見るとバチバチと光る物体が飛んでいるのが見える。物体ひとつひとつは数十メートルくらいの大きさはあるだろうか。これはいわゆるUFOに違いない。
「何これ…。」
私は思わず声が漏れた。
「これが私の秘密。ポニテが受け入れてくれるならこれからも友達でいて欲しい。私は地球のPRをするだけ、仲良く遊びたいの。どう…かな…?」
びっくりしたけど私は全く問題ないと思った。今までも友達だったし、これからもきっとそう。
「もちろん大丈夫!こちらこそこれからもよろしくね。」
私の秘密をついにポニテに伝えてしまった。やはり驚いてたな…でも受け入れてもらえた。これからもよろしくと言ってくれた。こんな嬉しいことはない。お腹はいっぱいになったし、これで地球のPRをどんどん行うことができる。たくさんの宇宙人が地球に訪れるだろう。女子高生は特に人気が高いからなぁ…。
ポニテちゃんの無事を祈ります…。