01.最後の晩餐
初投稿作品です。
小説を書くこと自体初めてなので色々と勉強しながら書いていこうと思っています。
未熟な点が多々出てくると思いますが暖かな目で見守ってくれると嬉しいです。
あと、この次から結構重めな描写を書く予定です。
苦手な人は、1章まで飛ばして読むことをオススメします。
「せーの、ソラ! 6歳の誕生日おめでとー!!」
月明かりに照らされた山奥の木造の家に、明るい祝福の言葉が響き渡る。
大きなチキンに森で取れた山菜と大きなケーキなど、色とりどりで豪華な食事に、祝われた黒髪短髪の少年"ソラ・リミルド"が目を輝かせ、ソワソワと待っている。
「じゃんじゃん食えソラ! こんな豪華な料理滅多に食えねえぞ!」
父親"カイル"が快活な笑顔で少年の頭をわしゃわしゃとなでながら言う。
黄蘖色の短髪で琥珀色の力強い瞳を持ち、白いシャツが膨れ上がった筋肉に張り付くほどの筋骨隆々の大男だ。
「ひどーい、毎日手間隙かけて作ってるのに 明日からあなたのおかずだけ1品減らそうかしら」
母親"イルミナ"は、纏った黒いローブを揺らし、そっぽを向きながら拗ねたように言う。
腰まで長く伸ばした美しい黒髪をふわりとまとめ、目尻が下がりゆったりとした黒い瞳を持ち、透き通るような白い肌と尖った耳が幻想的な雰囲気を醸し出している。
「間違えたソラ、母さんの手料理はいつも最っ高に上手いからな! たくさん食って大きく育つんだぞ」
「もう、調子がいいんだから」
カイルは、そのガタイのいい体に似合わぬ困ったような笑顔をイルミナに向ける。それがおかしかったのか母親とそれを見ていたソラまでもがクスッと笑う。
「お母さんの料理はいつも美味しいけど、今日は一段と美味しそう!」
「そうだ!たんと食えよ! そして俺みたいなムキムキになって一緒に狩りにいけるよう早く大きくなるんだぞ!」
「あたしは嫌よ、ソラがあなたみたいにごつくなるなんて。せっかく可愛い顔してるんだしスラッとした好青年が理想ね」
ソラがチキンを目の前に膝に手を置いて、ソワソワと待っていると話が将来の事で盛り上がっていく。
よく論争になる話題のひとつで、ソラの子供特有の柔らかい頬が軽く引きつる。
「おいおい、男たるもの力がなきゃ戦士にはなれないぞ?」
「いいじゃない、私の子だから魔術の才能もあるだろうし魔術師になれば筋肉なんていらないわよ」
「いやいや、俺の戦士の才能も受け継いでるはずだ。生かさなきゃもったいないだろ」
「戦士は最前線で戦わなきゃいけないし危ないわよ」
「いやいや、男たるものそんなのに怖がってちゃいい女は寄ってこないぞ」
「あなたみたいなムキムキになる方がモテなくなるわよ。その見た目で頭が良ければまだマシなのだけれど…見た目通りだしねぇ」
「なんだとぉ!」
息子の将来の話になると、この2人は熱を上げ闘論し続ける。夫婦喧嘩とも見える絵面だが2人にとってはこの口論も嗜みの1つなのだ。
「僕どっちにもなるよ! 魔術も剣も使えるすごい大人になる!」
ソラはお預けを食らっている目の前の豪華な料理に待ちきれず、熱くなってる両親を止めるために思いついた事を口に出す。
「おお、魔術剣士か! 良いじゃねぇか! 昔戦った事があるが、ありゃあ手強いし何より戦っていてすげぇ楽しかったな!」
「魔法と剣の両方の才能がないとなれないんでしょ? それにその両方の才能を磨き上げないといけないし、無難に魔術師の方が良いと思うのだけれど…」
「俺たちの子だぜ! 父さんの剣の才能と母さんの魔術の才能どっちも継いでるはずだ! それに才能の1つや2つ鍛え抜くぐらい余裕だろ? なぁソラ!」
難しい話になってソラにはよく分からなかったが、話がまとまりそうで軽く安心と両親の期待がうれしく、少年は元気よく答える。
「うん! よく分かんないけど僕、父さんと母さんみたいな立派な大人になるよ!父さんみたいな勇ましさや母さんみたいな頭のいい凄い人になるんだ!」
「あらあら」
「な、なんだよ照れるだろ…たくっ」
カイルは頭を書きながら照れくさそうに、イルミナは頬に手を置いて嬉しそうに、そして我が子の頭を優しく撫でる。
「とても嬉しいけどソラ、別に立派にならなくてもいいのよ?ソラが笑っていてくれてれば私たちは幸せなんだから」
「そうだぞ!親だから期待はしちゃうが無理に答えなくてもいいんだぞ?ソラが幸せならそれで俺たちは十分なんだ」
両親二人とも優しい笑顔でソラに諭すように言う。
過剰な期待が、重荷になってしまうことを稀有したようだった。
「そんな簡単なことでいいの?じゃあ僕すごい幸せだからお母さん達も幸せだね!」
「ふふっそうね、私達も幸せよ。けどこの幸せってね。凄い難しいことなのよ。ソラがぐうたらしてるとすぐにどこかに行っちゃうんだから」
「そうなの? じゃあ僕頑張る!」
「ええ、立派な大人になるよりも幸せになるように頑張ってね。私たちはソラの幸せが1番なんだから」
(幸せなのに難しい…?)
ソラは意味が分かっていなかったが両親が心配しているのを雰囲気で感じ、理解はしていなくとも快活な返事をした。
「…? よくわかんないけど分かった!!」
「もうソラったら」
「なんか変な空気になったな、飯が冷める前に食おうぜ!」
「そうね、せっかくのお祝いなんですもの」
「食べていい? 食べていい? いただきまーす!」
「いいって言う前に食べちゃうんだからこの子は」
「こういう所は俺に似たな」
「フフッ、そうね」
少年は頬がパンパンになるまで頬張った。
山奥の家に3人の陽気な笑い声が響き渡る。
綺麗な月明かりに照らされる夜に、この明るい笑い声が鳴り響いたのは
この日が最後となった。
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