紅魂ノ斬印
紅魂ノ斬印
abaudo;アバウド
更に山の奥に行ってしまったのか?
千里鑑定眼でも全く見つからない。
そう言えば化け狸は...流石にもういなくなってしまったか。
いやいや、そんな事よりも先に九尾を見つけることからだ。
何か見つける為の痕跡とかないのか?
「ラズ? どこに行こうとしてるのかな?」
呼ばれて後ろを振り返ると、相当苛立っている様子の美乃がいた。
美乃は貰ったばかりの浴衣を着たまま、直ぐに俺を追って来たのだろうか...裾に泥が着けている。
「や、やぁ...美乃」
「やぁじゃない! どうしていつも黙って行っちゃうの!?」
やっぱりそのことか...
この間の件もあるし、言い逃れは出来そうにない。
これはもう、本当の事を言うしかないのだろうか。
「それにラズからは...臭い匂いがする!」
「......」
なるほど、俺って臭かったんだ。
不意に泣きそうになるのをこらえた。
「他の女の匂いがするもん」
あ、あぁ...そっち?
「それで、美乃は俺を追いかけてきたのか?」
「だってその女に変な事でもされたら、私死んじゃうから!」
「重っ!」
「そういう訳で、ラズは独り行動禁止!」
美乃は俺の直ぐ近くに来ると、もう離さないと腕を絡めてきた。
まぁ、結局俺が皆を置いていく理由なんか...美乃にとってはどうでもいい事か。
「あーはいはい! 分かったよ!」
美乃は俺を守りたいのだろうけど、俺は美乃を守ってあげたいと思ってることなんか...
「それじゃ美乃、その女の匂いって、何処に続いているのかわかるか?」
「うん、わかるよ! えーーっとね...あっちかな」
美乃は山の奥を指さして、明確な場所を言う。
「多分山の頂上辺りじゃないかな? 私の勘がそう言ってる」
「本当か?」
「絶対本当だよ!」
美乃はドヤ顔で、強く言い張った。
俺は頂上の方を千里鑑定眼で探すと、九尾の物らしき白い毛を、数本見つけた。
そのあたりをくまなく探してみると、本当に九尾を見つけた。
動きやすそうな露出の高い浴衣に着替えていた。
胸はそこまで大きくはないが、この浴衣はそれを逆に引き立てているような...
その胸に目を向かせるような華の柄だ。
白とは逆の黒を基調にした豪華な浴衣に、少し見惚れてしまう。
「ラズ?」
「あ...」
そんな事をやってると、やっぱり美乃に怪しまれた。
「今ラズ...エッチなのを見る時の目してた」
「......チ、チガウヨ」
「やっぱり、なんかやましい事隠してる」
「なぁ美乃?」
「...変態」
美乃は話どころか、俺と目も合わせてくれなくなった。
それから俺は美乃をどうにかなだめて、山の頂上まで一緒に行くと約束をした。
夜の山道は何だか不気味だ。
盛天道子の時は、なんだかにぎやかだったから気にならなかったけど...
やっぱり灯りの一つもない山は静かで不気味だ。
まぁ隣に美乃がいてくれるだけで、なんだか内側のエネルギーが沸いてくるような気がするんだけどな...
それから二人で、暫く頂上に向かって黙って歩いた――
一歩一歩、歩くたびに気が抜ける様な、気持ちの悪さを感じながら――
「どうも、こんばんわ」
「なんだ!?」
急に後ろから話しかけられたと思うと、そこにはさっきまで探していた九尾が立っていた。
九尾は俺の後ろから、真っ赤な閃光を放つ日本刀で、俺の背中から貫通させるまで突き刺した。
一瞬何が起こったかわからなかった。
でも、見下ろすと...
自分の腹から刀身が飛び出している。
その瞬間に心臓に圧力がかけられた気がして、倒れ込んだ...




