孤独
孤独
abaudo;アバウド
「おや? 目が合いましたね」
美乃と同様の白髪が、腰まで伸びていて、頭の上には二つの大きめの耳がぴょこぴょこと動いていて、顔はおしとやかで優しそうな雰囲気で、色鮮やかな花の刺繡が施された着物を着た狐の少女が俺にのしかかっていた。
俺の腹の上で、何やら楽しそうな表情をしている。
狐は嬉しそうな顔をしていたが、直ぐに目を逸らした。
「いや、やっぱり気のせいですね...私の事が見えるわけありませんし」
今度は悲しそうな顔で、耳を垂らして俯いてしまった。
その目には灯りが灯ってない。
「...見えてるよ」
言葉をかけてあげると、耳が立ってピクピクと動く。
「見えてるんですか?」
「あぁ、見えてる」
彼女は一度は嬉しそうに笑みを見せたが、やっぱり悲しそうな表情に戻ってしまった。
それにしてもこの耳、美乃と同じ部類なのか?
美乃は神の末裔だけど、こいつはどうなんだろう。
まだ見たことないけど、獣人属というのはいるのだろうか。
いや、おそらく魔界には獣人がいるだろう。
今まであった者達が美乃を見た時、耳とか全く気にしてなかった。
そう考えれば、美乃や美乃と似た姿の人間、または悪魔がいるのだろう。
暫く考え事をしていれば、急に狐の少女が立ちあがり、「さよなら」と言って部屋を出て行く。
「ちょ、待て...」
俺の言葉なんか聞き入れず、去って行ってしまう。
その時見えた後姿が、どことなく悲しみに満ち溢れていて、自分の過去を体現するように見えた。
俺は思わず、狐少女の腕を掴んだ。
「待って...」
「あの...私が見えてしまうのなら、この手をお離しになってください」
どっちにしろ、この子が九尾である事はわかっている。
「いや、君が話を聞いてくれるまで、俺は離さない」
「これはあなたの為に言っているのです。 この手を離してください」
「俺の為を思うぐらいなら、話の一つや二つ聞いてくれてもいいだろ?」
俺がしつこいせいか、少し強気になって言う。
「やめてください! これは、私に対する罰なのです...あなたを巻き込むわけには...」
この子も盛天道子と同様に、過去に何らかの“闇”を抱えているのだろう。
それでなきゃ、こんな泣きそうな顔はしない。
「話してほしい、君の過去に何があったか」
「嫌です。 きっと話してしまえば、あなたはがっかりしてしまいます」
「それでもいい」
俺は盛天道子の一件から感情で動いてしまっている、でも...
...飽くまでこれは、情報収集の為だ。




