霊伝後
霊伝後
abaudo;アバウド
あれから俺たちは盛天道子との契約を交わし、今は皆で元いた団子屋まで戻っている。
「そういえば将軍はなんでここに来たんだ?」
「実は...最初から尾行してまして...その時倒れている女性が、ラズ様達が危ないと教えて下さったので...」
女性? なぜその女性が俺たちの事を知っていたんだ?
「因みにその女性は?」
「団子屋の店主だったと思います」
ああ! あの人。
「だからお店にもいなかったのね」
どうやら俺が連れ去られた直後に助けを求めに行ってくれてたらしいな。
ありがたい。
「待てラズ!」
盛天道子の声に気付き、後ろを振り返ると...
「これを!」
盛天道子は青色で先の鋭利な槍を持ってきていた。
盛天道子は俺の前まで飛んでくると、その槍を振って見せる。
「どうしたんだ!?」
「ふぅ...この槍は“日欄号”と言ってな、俺様が見つけた伝説の武器だ」
「伝説の武器?」
「それは!」
「ほら、一振りするだけで風が巻き起こる」
盛天道子が槍を振ると、小さなつむじ風が巻き起こる。
「もう一度振ると...」
「おぉ...」
言った通りもう一度振ると、今度はそのつむじ風が高い所まで吹き、荒れ始める。
その風はどんどん強くなり、やがて空から雨が降り始めた。
「ちょ、ちょストップストップ!」
流石にこれ以上は災害レベルだから!
「え?」
「止めて! 今直ぐ止めて!」
「えーっと...止め方わからねぇんだよな...はは」
「嘘だろ?」
災害が起きて足止めを喰らったら笑いごとじゃないぞ!
「その刃を掴み、精神を集中させて...刃の言葉を聞いてみてください」
真面目な顔をして、将軍は刃の先端部分を指でさす。
それから持ち手をもっと刃に近づけるように指示をした。
「何をいって...」
すると、風はだんだん緩やかになり、次の瞬間日欄号は光を放って盛天道時の中に入って行ってしまった。
「あら? これは興味深い...」
「は!? なんだよこれ? 何が起こったんだよ?」
盛天道子は自分に槍が入ってしまい動揺している。
「それは共鳴みたいなものですかね? あなたは一体その槍を何処で見つけましたか?」
「...候児の...崖下だったか?」
「なるほど、それは“あなた”がみつけたのですか?」
「はぁ? 当たり前だろ? そんな事よりこれどうするんだよ」
将軍は沈黙をして、俯いて声を唸らせた。
「異例ですね、少し研究が必要なようです。 これから私について来ていただけませんか?」
盛天道子はまたもや不思議そうな顔をして、次に嫌そうな顔をした。
「...なんで俺様がそんな事...」
「もしかすると、あなたが本当の力に目覚めるかもしれませんよ?」
「本当の...力?」
「その力は独りで国を滅亡出来るかもしれないほどに......(確証は全くありませんが)」
「独りで国を滅亡!?」
「どうですか?」
多分独り国を滅亡できるというのはでたらめだな...
なんならちっさな声で言ってたし...
それになんで盛天道子はそんなに食いついてんだよ...
「いいだろう! いいとも! 今からか? 今直ぐだな!?」
「...盛天道子、お前村は良いのか?」
「まぁラズ! そうカリカリするなぁ...俺様の村は俺様無しでも全然、全く生きていけるよ...むしろ俺様がいない方が良く回るんじゃないのか? あっはは!」
それ...自分で言ってて悲しくならないのだろうか...
「まぁいいか。 それよりも、早く九条達の元へ戻らないとな」
そうして俺たちはふもとへと下って行った――
「耀京! 待って...耀京!」
彼は血で染まった刀の先を私に向ける。
その刀の先端から、ぽろぽろと血が落ちていく。
暗く染まってしまった彼の顔。
それが最後に見る景色だと、私は悟った。
でもそれでいい。 最後は私の友人であり家族に様な人に見届けて欲しい。
彼に心があるのかはわからない。
でも私の心は彼にわかってほしい。
「いいよ」
両手の指を後頭部の髪に絡め上げ、首を斬りやすいように下を向く。
これでいいの。
「さぁ、早く」
このままでは、あいつらが来てしまう。
来てしまったら、きっと耀京が殺されてしまう。
「...くっ...ぅ」
地面に水滴がぽちゃんと落ちる。
振り始めた雨か。 それとも耀京の刀の血か。
いや、どれも違う。
それは...
「耀京!?」
涙と、自分を斬った血だった――




