前将軍・菊峯義酉(きくみねのよしとり)
矛は鬼人を斬り、盾は悪魔を欺いた。
abaudo;アバウド
それは、雪の降る日だった。
その時のハルカは、将軍・菊峯義酉の護衛の一人として、共に候児の地へ向かっていた。
朝早くから出た事もあり、雪が高く積もっていてなかなか進まない状況のなかで、将軍様は寺で少し休むことを提案した。
ハルカ達はその提案に従って、近くの寺で暫くの休憩をとっていた。
それから休憩を取っている間に、風が強くなり、猛吹雪になってしまった。
もしあの時、進み続けていれば危険だっただろう。
そう思い、皆は安心して、ここで一泊することを決めた。
ハルカは何としても、この任務を遂行させなければいけなかった。
これは出発する前日、菊峯 嬰凪と約束をしたから。
嬰凪の敬愛する父親と、生きて戻ってくるという事を...
ハルカと嬰凪は、子供時代からの主従関係であり、ハルカは嬰凪に対して忠誠を誓っていた。
だからハルカは将軍様を守り切って見せると、意気込んでいたのだ。
しかし、地獄は突然始まった。
何やら外が騒がしい。
近くに村もないし、夜のはずなのに外は夕日があるかのように明るい。
なにかがおかしい――
ハルカは胸騒ぎを感じて、急いで将軍に報告をした。
しかしもうその時には遅かった。
「うぉあああ!」
入り口近くで張っていた兵の叫び声だ。
それから廊下をドタバタと何十の何百もの足音が響く。
なにやら暑い。
もしかして...
「将軍様、正体不明の鬼が...あぁぁぁ!」
報告をしに来た兵が、後ろから来た巨体の鬼に刺されて倒れた。
「鬼一家の呪い...引き起こしたのは将軍、お前だ」
急に入ってきて、この鬼はなにを言っているんだ。
でも、鬼からは将軍に対して強い殺意が感じ取れた。
ハルカは腰の刀を抜き取って、鬼の前に出た。
「なんだ? 俺様の邪魔をしようってのか?」
「ここから先は通させない!」
初めて会う鬼に、ハルカは恐怖を隠し切れず、刀を持つ手が勝手に振るえて、力が入らなくなってしまう。
「今直ぐ逃げてください!」
ハルカは将軍様にそう言ったが、将軍様はそこから座禅を組んだまま一歩も動かない。
「将軍様!」
すると将軍様はいきなり笑い始める。
そして将軍様は言った。
「ハルカ...嬰凪の事を頼んでもいいか?」
「何を言っているんですか!? そんな事よりここから離れてください!」
「もう...私の時代は終わったのだ。 あとはお前と嬰凪に託させてくれ」
そう言うと将軍様は鬼の目を光で潰して、その間にハルカを気絶させて窓から落とした。
下は雪で覆われていて、ハルカは傷一つとして追わなかった。
最後に将軍は、この寺にいる生き残り全員を避難させて、寺に一人だけ残って、敵に立ち向かった。
「正直に言えば、私はもう疲れたのだ...あの二人ならこの国の全てを任せてもいいだろう」
勿論、一人で鬼の部隊を倒すことなど出来ず、劫火に包まれて虚しく最期を迎えた。
目を覚ましたハルカは、跡形も無くなった寺を見て絶望した。
急いで都の城に帰って、嬰凪に報告した時、嬰凪はあまりのショックの大きさに倒れてしまった。
後にハルカはあの鬼の過去や、現在の状況を調べて、あの鬼が盛天道子だという事を知る。
幸いにも嬰凪はハルカの事を恨んでなどいない。
しかし前将軍の死は自分の失態だとして、必ずしもあの鬼をこの世から消し去るとせめてもの償いとして決めたのだった。
次回、過去の失態は、あなたの為...
お読みいただきありがとうございます!
鬼の過去、復讐したが為に出来た、ハルカの過去。
復讐を復讐が生んで、どうなってしまうのか。
是非、鬼編を最後まで楽しみに!
それとブックマーク・評価していただけると大変助かります。
それではこれからも“あらゆるスキルの保持者、創造と破壊の魔術”をよろしくお願いします。




