歪な不安の象徴
歪な不安の象徴
abaudo;アバウド
ハルカは鬼の首に、頭より上から剣を振り下ろした。
もうだめか...
と俺は反射的に目を瞑ってしまった。
「...何をしているの?」
なんだ...今の声は?
ハルカの拍子抜けた声に恐る恐る目を開くと、ハルカの振り下ろした刀が、盛天道子の首寸前の所で、美乃によって受け止められていた。
美乃は手から少量の血を流していた。
その血が手のひらの窪みを伝って、盛天道子の頬に数滴落ちる。
「美乃...?」
「ラズが嫌がる事は、私がさせない...」
「何を言っているのかしら? これは感情がどうとかの話ではないのよ。 言っておくけどこの鬼は今までに何百の悪魔を殺しているの」
「それでも...ラズが嫌がる事なら、私が止めて見せるの!」
ハルカは重たいため息をついた。
その表情には、全くとして感情が無かった。
「さっきも言ったけど...」
「やめて!」
ハルカの言葉を遮って美乃は言った。
手から血を流しているのに、美乃は力を込めてハルカの刀を鬼から遠ざけている。
「やめなさい」
「ハルカこそ...ラズの嫌がることはしないで」
「カハッ!」
辛そうにしていた鬼が、詰まっていた息を吐き出した。
それからまたしも悶えて苦しんでいる。
「おい...盛天道子、大丈夫か?」
盛天道子は言葉を返してこない。
聞こえてないのか...それとも言えないほどに苦しいのか。
「良いから...そいつを殺しなさい!」
何故だ。
何故ハルカはそこまで必死になる?
「そいつは...そいつは...」
そして何故そんなに苛立っているんだ?
「ハルカ...お前、どうした?」
ハルカはだんまりとしたまま、力を込めて刀を握っている。
しかし美乃はその刀を動かないように、固く掴んでいた。
力が互角か、もしくは美乃の方が強いという事に気が付いて、ハルカは手を放したよ。
そして、凄い形相のまま...俺たちを睨んで言った。
「前将軍を殺したのは...そいつなのよ!」
次回、前将軍・菊峯義酉




