反逆の乱
村を治める所以
abaudo;アバウド
俺と鬼には完全なる力の差があるのかもしれない。
それが殺せなかった理由。
ターゲットを仕留める時に、俺は迷ってしまった。
運が重なって、確実に殺せた。
だが、俺は殺せなかった。
仕方なく俺は、また殺せる機会を伺って、鬼についていく事にした。
飽くまで殺す為に...だ。
今は山の頂上へ向かって、北へ向かっている。
「そう言えば、俺様はあんたの事、なんて呼んだらいい?」
「...別に、ラズでいいよ」
慣れ合うつもりは更々ないが、無下にする必要もない。
普通の会話程度だったら...
(...せ...殺せ)
「くっ!」
「どうした?」
今一瞬、頭の中で何か流れた。
「...何でもない」
「そうか」
気持ちが悪い...なんださっきのは...
少しでも気を紛らわそう。
「そういえば、あの子たちはなんでここにいるんだ?」
「あれか...あれらは」
それから鬼の昔話が始まった。
さっき俺を止めた女の子は、濃登と言う京の山から更に北へ降りた先の街の姫だったらしい。
生まれて直ぐご令嬢として育てられた女の子は、全くとして自由が与えられなかった。
外を見れば同年代の子供たちが遊んでいる、でも女の子は遊ぶことおろか外にすら出られなかった。
領主である父親は地位を守る為、自分の反対側の意見を持った者を片っ端から罪人扱いし、それは母親も例外ではなかった。
父親は母親を殺した。 女の子も父親に歯向かえば殺されるかもしれない。
父親の気を使う息の詰まるような生活が、女の子には七年ほど続いたという。
その途中で、女の子は父親のとんでもない隠し事に気付いてしまう。
父親は人間世界と繋がる黒蓮堂の、資金源として活躍をしていて、時々人間を連れ込んでいることが発覚したのだ。
人間は悪魔を殺し、悪魔は人間を殺す。
そんな伝説だけ知っている女の子は怖くなってしまった。
十歳になった日に、女の子はとうとう家出を決意した。
決して容易い家出ではなかったが、女の子は身を削って自由を手に入れた。
しかし、父親は諦めない。
領地の者達に女の子の捜索をさせる。 一週間以内に見つけられなかったら、住人を一人ずつ処刑していくと言ったのだ。
女の子は戻るしかないと思った矢先、盛天道子に出会った。
盛天道子は全て知っていて、領主の男をどうにかしてやると女の子に言った。
その代わり、俺様の村に来いと言ったそうだ。
女の子は素直に受け入れ、その後その男は盛天道子によって殺された。
このことを女の子が知ると、女の子は静かに盛天道子の浴衣の裾をつまんで、黙っていたという。
盛天道子はあの男を殺していいのか迷ったそうだが、殺さなければ女の子が殺されていたという。
女の子は暫く悲しんだそうだが、少しすると納得できたのか明るくなってくれたらしい。
それから盛天道子を慕うようになったらしい。
「これが、あの女の子との昔話だ」
「...そうか」
思っていたよりも黒蓮堂の闇は、深くてドロドロしているのかもしれないな。
「ここにいる皆は、あの女の子と同じような生活を送ってここにいるのか?」
「そうだ、大体は同じで、皆暗い過去を持っている。 鬼化した俺様と同じでな」
「鬼化?」
「そうだったな、俺様が鬼なった所以も話してなかったな」
それから、盛天道子が鬼化するまでの経緯を聞いた―
...嘘だろ...なんだよその過去...
ハッキリ言って気持ちが悪い。
「それで、俺様は幕府の連中を恨んだ」
「...」
「悪いな、暗い過去の話をしてしまった。 だから俺様は、あいつらを守ってやりたいんだ」
さっきよりも盛天道子の華やかな浴衣がゆっくりと揺れている。
「あっ、この浴衣の花...母上が花好きでな、人間界で好きだった花なんだ...長女である俺様の事がさぞかし可愛かったんだろうな。 母上は俺様に人間界の色んなものを教えてくれた。 ちなみにこの花は背中の奴が撫子で、腕に描かれてる奴は芝桜って言うらしいぞ」
どうしてこんなに楽しそうなんだろうか。
俺なんか、母親の事を思い出すと...今でも泣きそうになるのに...
「...どうかしたのか?」
「...いや、なんでもない」
俺は、一体誰を殺そうとしていたんだ?
不意に俺はターゲットを見失ってしまう。
すぐ隣にいると知っているのに...
「そうだ、ラズは俺様の...俺様達の作戦に加わってくれるか?」
村の灯りが見えたその時、改まった様子で盛天道子が言って来た。
「...なんの作戦だ?」
「それはな、“幕府殲滅、反逆の乱”だ」
次回、惨事の引き金
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