鬼一家の末路
鬼一家の末路
abaudo;アバウド
私の家系は、父が悪魔で母が人間、そして私と兄と妹がいわゆるハフメリアと言う生物だった。
母が人間という事は、私達以外誰も知っちゃいけない。
もし知られたら、母は魔王候補である菊峯の軍に連れていかれてしまう。
そんな事から慎ましく貧しい生活を強いられているけど、私たちは何も不憫には思わない。
だって一家全員が幸せなら、それでいいと思っていたから。
しかし、ある雨の日。
母は家に並んだ数体の武士に身柄を拘束され、私達は成す術なく連れていかれる様子を見ていた。
母が遠く離れて行く。
雨の中母が消えて行く。
私も妹も怖くて泣いてしまった。
父と兄が慰めるように、暖かな胸で抱きしめてくれた。
「大丈夫、お母さんはきっと帰って来るよ」
と優しい言葉を囁きながら...
でも、もう母は帰ってこなかった。
数日後、父は飛脚の人から手紙を受け取って、その手紙を置いて寝処に行ってしまった。
私と兄は、好奇心からその手紙の内容を覗いてしまった。
その手紙には、“婦人が人間であると告発するなら身柄を解放する”とだけ書かれた手紙だった。
私は字が読めないから兄に読んでもらおうと思ったが、兄はそこから何か感じたのか泣き出してしまい、私と妹をまた強く抱きしめてくれた。
それから寝処から帰ってきた父は、「その手紙を読んだのか?」と兄に聞くと、兄は頷いて父は泣き出して兄を抱きしめた。
それから十数年後...
母はまだ帰って来ない。
皆大きく成長して、妹に関しては十五を迎える頃だった。
妹は母に似て、とっても綺麗だった。
周りの村人達は、私たちがハフメリアであるという事は知らないから、妹は村のマスコットとして人気を得ていた。
そんなある日、妹が失踪してしまう。
今日は妹の誕生日だから、父がすこし豪華な食材を用意してくれていた。
もう少しすれば帰って来るだろうと、待っていたが、一時間二時間経っても妹は帰って来ない。
兄と父は心配で村中を探し始め、私はいつ帰ってきても分かるように家で待っていた。
村の者たちは一緒になって探してくれた。
この日は一晩中探したが、結局見つからなかった。
日が明けて間もない頃、妹はなんと家に帰って来た。
姿はボロボロで、何かに襲われた後の様だった。
「どうしたの? 何かあったの?」
私が妹に聞いても、妹は小さく頷くだけ。
きっと辛い事があったのだろう。
父と兄は村中の者に感謝の言葉を伝えてから、私と妹の所へ帰って来た。
私が聞いても、誰が聞いても、妹は小さく頷くだけ...
それから間もなくして、妹は“自殺”してしまった。
父はあまりのショックに寝込んでしまう。
兄はそんな父を見て、少しでも私を心配させないようにといつも笑顔で仕事をしていた。
そんなある日、兄は真剣な顔で私にこんな事を言って来た。
「もし、俺が幸子がああなった事を知っていたどうする?」
幸子とは妹の名前、あの子は喋らなかったから、どうやっても情報を知りえることは出来ないはず...
もしかして兄は悩んでいるのかもしれない。
私はそう思い、兄に真っ当な意見を言った。
「私なら聞きたい」
「そうか...」
そして次の日、兄はこんな手紙を置いて朝早くに出かけて行った。
手紙の内容は...こんな物だった。
“幸子はきっと嬉しかったのだろう。 自分の誕生日を祝ってもらえるこの日が。 だから幸子は恩返しの様に山菜を取って驚かそうとしていた。 しかし、山に入った直ぐ、誰かに襲われた。でも、それは山賊じゃない...雇われた浪人だ。 幸子はそいつらに酷い事をいっぱいされた。 俺はそれが許せない、自分の妹がこんな運命だなんて...”
この手紙を見た時、私は察してしまった。
これから兄が何をしようとしてるか、でも私にはもう止められない。
父にも言えない。
私はこうやってここで、兄が死ぬのを待つだけだった。
それから兄は帰って来なかった。
山奥で兄は顔と四肢を切断されて、それぞれ別の木の枝に突き刺さった状態で見つかったという。
それから父は、とうとう壊れてしまった。
私の事を母だと思い込んでしまうようになった。
そして家の何もない所を見て、幸子が泣いてるぞとまで私に言ってくる。
それから父は病にかかってしまい、約十日ほどで口も開けなくなった。
どんどん衰弱していく父を見て、私はとうとう終わりだなと悟った。
「美弥、愛しているぞ...」
父はその言葉を最後に、死んでいった。
その日から私は変わった。
私は誓ったのだ。
あんな武士どもに...将軍どもに私達...俺様たちの世界を荒らさせない。
それが母さんの、兄さんの、幸子の、父さんの最後の願いだ!
俺様は鬼になって、変えてやる...
この世界の設計を!
それから俺様は怒りで鬼に変貌してしまった。
元の名前は...美弥は大切に自分の胸にしまって...
俺様はこれから“盛天道子”として生きていくと決めたのだった。




