秘められた地
秘められた地
abaudo;アバウド
「ラズ...が...」
風呂場の恰好のまま、おっさんは美乃たちのいる部屋に駆け込んだ。
おっさんは、頭から血を流し、その場で倒れた。
「どういう事!?」
「連れ...去られた」
この言葉に、場の空気が凍る。
そしてこの状況に、美乃がパニックになってしまう。
「ラズが? 連れ去られた...どういう事...ねぇ、どういう事!?」
「落ちつけ...まずは風呂場を見て来よう、何処から侵入したかわかるはずだ」
冷静沈着な九条は、美乃の腕を引っ張って風呂場へと向かう。
それまで落ち着いていた九条だったが、風呂場についた途端震え始める。
「嘘...だ。 こんな大穴、一体どうやって...」
「この大穴、鬼の部類か?」
突発的に言葉を放ったハルカに、九条は微かにわめく。
そうやら鬼という言葉に反応したみたいだ。
九条は少し震えながらも、大穴の近くを入念に観察し、一滴の紫の液体に気が付いた。
それでわかったのは、悪魔に近しい生物であるという事。
詳しく言えば、悪魔とは微妙に違う性質を持った生物であるという事だ。
とりあえず、さっき起こった出来事を団子屋の女性に話に向かった。
しかし、何処を探してもその女性はいない。
「どこに行ったのかしら?」
「わからない。 でも、ラズ殿が連れていかれた方角は大体わかった」
「それってどこ!?」
「あっちの山の方角だ。 山の奥、もしくは頂上の辺りだろう」
「あの山...結構遠くに見えるけど...」
「あれは京の山ね、という事は盛天道子が絡んでいるかしら」
ハルカは顎に指先を当てた。
「二人で行って来てくれ、私はこいつの面倒を見ている」
九条は怪我を負ったおっさんを布団に寝かせて言った。
「わかったわ」
それを聞いて安心するように、鼻息を放った。
そして美乃たちは、京の山の方面に走り出した。
まだ日も暮れて浅い時間に...




