強さだけを求めて
強さを求めて
abaudo;アバウド
さて、まずはどんな魔物を倒しに行くか。
月と蛍の光に照らされ、虫の声が聞こえる道の真ん中で止まった。
普通の悪魔達では経験値入らないし...出来るだけ多くの経験値を貰える奴が...
月の光も蛍の光も薄すぎて辺りが全く見えないおかげか、妙に周りに敏感になって、うしろから来ている美乃に気が付いた。
「ちょ、ラズ? 一体どうしたのよ」
「あ、ついて来てたのか...」
新しいスキルを試したいという思いと、早くレベルを上げたいという欲望で相当な興奮状態だ。
「経験値が五倍も貰えるから、なんか戦闘がしたいなぁって」
「経験値が五倍? またよくわからないことを...まぁ、経験がしたいなら...ドラゴンとか?」
「ドラゴン...強そうだし、なんか怖いなぁ」
美乃は頭をつついて考え込み、俺は腕を組んで倒し方を考えていた。
「ドラゴン程強くは無いけど、普通よりかは強いモンスターはいるか?」
「ドラゴン程強くないけど、普通と比べて強いモンスター...うーん」
そうして唸り声をあげた後、ぱっと何か思いついたかのように明るい表情をした。
「ワイバーンとかどう?」
「ワイバーンかぁ...」
その時、美乃の後ろから枯れ葉を踏む音が聞こえ、それと同時にハルカの声が聞こえた。
「この国にワイバーンなんていないわよ」
美乃は耳で反応を示し、また考えるように頭を指でつついた。
「経験値が欲しいんでしょ?」
ハルカは俺に、微笑みを見せて聞いて来た。
「あ、あぁ...」
なんだか嫌な予感がする。
「教えてあげるわ...教えてあげるけど」
なんて楽しそうな笑みを浮かべるんだろう。
絶対良くない事いわれそうな気がする。
ハルカは歯を見せて、近くの蛙に杭を投げて殺した。
「そこに這いつくばって...ハァハァ...お嬢様、この豚めにご奉仕してください...ハァハァ...って、足を舐めながら言いなさい?」
息を荒く、顔を赤らめてなんてことをいってんだ...
見ているこっちが恥ずかしくなってきた。
「さぁ、どうなの? やりなさいよ...っていうかやれ...クソ豚」
そうだった、こいつそういうキャラだったんだ。
今になってやっと思い出した。
「わかったよ...」
ハルカの足に顔を近づようと這いつくばり、俺は舌を伸ばした。
っていうか美乃はこんな俺を見てなんとも思わないのか?
俺は舌を伸ばしながら、横目に美乃を見ると......ものすごく爆笑していた。
「おじょうしゃま、こにょふたへにほほうししてくらひゃい」
「...この薄汚い豚が、そんなんで私の気を引こうなんて八千年経ってもおこがましいわ?」
なんていい笑顔なんだろ、俺にこんな事させてそんなに楽しいのかな?
「さあどうしたの? この豚...一体どんな事から教えて欲しい?」
「お嬢様、これをどうぞ」
美乃が幻影から作った椅子を、ハルカの後ろに置いた。
美乃の作る幻影は特殊で、触れることが出来る。
「え、あ...ありがとう」
だからハルカは少し困惑はしたものの、直ぐに座ってまたプレイを再開した。
「さぁて、私の靴を舐め続ける限り、質問することだけは許してあげるわ」
俺は気付いてしまった。
美乃が何故わざわざ椅子を置いたのかに...
「えーっと...その」
勿論、このエスイッチの入ったハルカは偉そうな態度をとり続ける為、勿論座り方も偉そうにする。
それを狙ったトリックとも気付かずに...
そう、この大勢...ハルカが足を組んでいる大勢...見上げればハルカのおパンツが見放題なのだ...
「美乃さん最高!」
「は? 何言ってんの? とうとう頭が壊れちゃったかしら?」
ははは、こいつは今そんな辱めを受けているかに全く気が付いてない...
「私はあなたを認めているわけじゃないわ」
さっきまでとは一変して、ハルカの表情は楽しさを失い、本気で蔑むような視線を降らせる。
「はへ?」
「あなたには常に警戒しているし、その気になれば何時でも殺そうと思ってるわ? だからあなたが今どんな事を考えているのかわかるし、今後あなたがどんな行動するかなんてお見通しよ...」
ハルカは俺に冷たい視線を送って、立ち上がり背中を向けた。
「あなたは私を殺せない...そんな奴に黒蓮堂を倒すことなんて出来ない...帰るわ」
「ちょ、ちょっと待て...」
立ち上がり、ハルカの腕を掴んだ。
ハルカは俺が腕を掴んでも反抗はせずに、ただ真顔で城を見つめていた。
もう夜も更けかけていて、山の向こうの光がうっすら伝わってきている。
「離してくれないかしら...離さないなら叩き切るわよ?」
「いや待って...どうしても、どうしてもその魔物の事を教えて欲しい」
「あなたからは何の誠意も見えない...あなたは強くはなれない...諦めなさい」
ハルカの辛辣な言葉に、あのダンジョンの辛辣さを思い出す。
でも、あんなに辛辣なダンジョンでも、願えば進めた。
願えば、光がさした。
「頼む...俺が強くなるために...教えて...くれ」
「涙なんか見せても...」
「俺は...死んだ母さんやセラの為に、誓ったんだ...俺の村を...俺の大事なもの全てを壊した人間たちに復讐するって...」
「死んだ...復讐...」
男として恥ずかしいが、あの日の出来事を思い出すと...涙が止まらない。
「あなたはそれをして何の得があるの?」
「得なんて...無いけど。 何もしないで...割り切れるわけ...ないだろうが...」
俺の叫び声が、太陽がと同時に、彼方へと届いた。




