謎多き者
それは先日の出来事のように
abaudo;アバウド
ロウソクの淡い光に照らされる。
その光は、ロウソクの小さな範囲を強く光らせて、まるでロウソクを強調させているようだ。
隙間から風が入ってきて、たまに火が震えるのを見ていると心が落ち着いて、火の燃える音も静穏を表しているかの様に感じた。
壁のように四枚配置されたふすまの向こうで、美乃と将軍が二人きりでいる。
「あはは!」
なにやら騒がしい声がこっちに届いている。
いいなぁ...
俺は心のどこかでそう思いながら、天井を見上げた。
こうして二人を待っていると、俺は一体何をしているのだろう、という...仲間外れにされている気分になってしまうからなのか、虚無感を感じた。
「ねぇ菊峯、この浴衣着ていい?」
「いいわよ...」
俺の耳が自然に研ぎ澄まされる。
「えっと...ここはどうやったらいいんだろう?」
「ここはね、こういう風にやって...」
「失礼します」
ふすまの奥の、また奥のふすまが開く音。
「あぁ、よく来たわねハルカ」
「将軍様のご要望であるなら...」
「んもう、ここでは将軍は堅苦しいからやめてって、それに菊峯って呼び捨てにしてもいいんだよ?」
「しかし...」
「ダーメ、同い年なんだし...堅苦しかったら楽しめないじゃない」
「...はい」
向こうがどうなっているかわからないが、俺にはわかった。
完全に俺の事なんか忘れて、女子会を開こうとしているってことを...
「わ、これきっつ...」
「大丈夫よ美乃、ちゃんと似合ってるから」
くそ...忘れられてるのは腹が立つけど、ここまま聞いていたい気も...
やばい!? 気づかないうちに俺は、変態オヤジになっているんじゃ!?
いやでも、これはこれで...
俺はふすま越しに耳を当てて、三人の会話を聞くことに背徳感を感じながらも、そのまま聞くことにしてしまった。
「ハルカもそう思うよね?」
「は、はい! とても綺麗です!」
「えぇ、そうかなぁ...えへへ」
「そうだよ...でも、やっぱり外国の人は大きいなぁ...しかも耳可愛い...耳触ってもいい?」
「い、良いよ」
あのお淑やかで少しお堅いイメージの将軍が、こんな女の子っぽい声で、美乃のケモ耳を触っている光景を想像すると、あぁこれはいいものだわ。
目を閉じれば想像が出来る。
「ひゃ、ななななななに!?」
「おっぱい本当におっきいですね...一体どんな食事をしたら」
「おっきいって、別にそんなんじゃ...ぅっ!」
この後、俺は千里鑑定眼と言う神スキルを持っていたことに、気付かなかった俺を恨んだ。
「はだけて...きてる、、あっ...やめて...てば」
「お、良い声出すぅ...じゃ、ここはどうかなぁ?」
「あん...いや、しょ、しょこはぁ...だ...め」
一体何が起こっているのだろうか。
一体どこを触っているのだろうか。
このふすまの向こう...そこには俺の望んでいる光景が...楽園が...
「か、肩は弱いのぉ...」
カタ!?
なんだ? カタが弱い?
まさか...隠語か?
俺の知らない、カタと言うえっちぃ部分なのか?
開けていいか?
開けてもいいよな?
「こしょ...ばい...も、だめぇ」
その時、ふすまがこっちに倒れてきた。
勿論ふすまにくっついて聞いていた俺は...潰された。
将軍は一つ段差の上で、正座をして咳ばらいをした。
「...ラズ様、あなたを呼んだ理由は、その五千年の刻印の事です」
「五千年の刻印?」
また隠語か?
将軍は俺の目を見ると、明らかに目を逸らし...うっすらと苦笑いをした。
「そ、そうです...あなたには五千年の呪いがかけられております」
「呪い?」
一体なんの事だ?
将軍の奥深さを含んだ真剣な顔から察するに、隠語でもなんでもない雰囲気だ。
「あなたにかけられた呪いは......本当に特別なもので...多分この世のものでは作れない物かと」
「この世のものでは作れない?」
「ラズ様、あなたはスキルを持っていらっしゃいますか?」
「...うん」
「そのスキルは一体どうやって?」
どうやってって...
「レベルあがったら普通にガチャを引いて、確率でスキルが出るけど」
「ガチャ?」
この場にいる皆の視線が氷ついた。
「あなた...人からスキルを貰ったりとかしたこと無いの?」
「スキルを貰う? 無いけど」
「は? じゃ、一体何のスキルを持っているのよ」
ハルカの質問に、俺はスキルを表示して一つ一つ正確に答えて言った...
「...で最後だ」
二人が目を見開いて、驚愕していた。
「そのガチャ...って言うのは、一体どんなものですか?」
「ガチャか? ガチャはそうだな...緊張感があって、そのスキルポイントを犠牲にしているから、良いの来ると嬉しいし...うーん...あんまりうまく語れないな」
将軍はなんだか嬉しそうな顔をして言った。
「それでは、そのガチャを今ここで使えますか?」
「いや、ああ...使え、るはず!」
「...お願いします」
俺は言われるがままに、AIさんにガチャを引くように頼んだ。
俺がガチャを引き始めると、将軍は直ぐに話しかけてきた。
「今、何見えます?」
「今は...雲のように大きな亀が見える...黒色の」
黒色の亀を見ていると、その亀が虹色に光りだした。
「おっ!」
「どうされました?」
「光った! 確定演出...」
「カクテイエンシュツ?」
「そう。 これが出ると絶対にいいスキルが」
そしてスキルの画面が開いた。
イレイド
青い閃光を放ち、周囲の敵に攻撃力×50%の範囲ダメージを与える。
その後、敵全体にデバフ効果を与え、ステータスを下げる。
暗黒のスターダスト
幾千の星屑を空から落とす。
セヘル∞オーバー
体力ゲージの70%を犠牲に、一定の時間魔力が無限になる。
治癒速度上昇
治癒魔法の速度を少し早くする。
リヅリー
条件を満たすと、全てのスキルレベルを倍まで上限値を上げる。<レベルup条件解放>
俺の視界がもとに戻った。
美乃やハルカが不安そうに見ていた。
しかし俺は、確定演出の嬉しさに興奮していた。
「スゲー!」
「何が手に入りました?」
もうわかったかのように、微笑んで状況を聞いて来た。
「セヘル∞オーバーって言う...体力のほとんどを犠牲に、一定時間魔力が無限になるっていう、強そうな奴が当たって、しかも今自分を強化できるようになったから、やっていい?」
「どうぞ?」
よっしゃ、リヅリー発動!
<*以外全てのスキルのレベル上限が二倍になった>
*(錬金術・サイマス・allhigh・リヅリー・チャレンジャー・サバイバー)
特典、三回以内の戦闘で得られる経験値5倍。
:戦闘は個人戦・集団戦問わず、敵一体を倒す事で一つカウントされる。
「こうしてはいられない...ちょっと、敵倒してくる」
「あ、ちょっと? ごめん、私も行ってくるね」
そう言って美乃とラズは外に出て行った。
「あ~、まだ話終わってないのに...」
「あの、五千年の刻印と言うのは?」
「それ? それはね...ゴニョニョ」
「え...」
この時、ハルカが聞かされたことをラズが知る時には...戦争が終わっていた。




