癒し
癒し
abaudo;アバウド
「はぁはぁ」
なんて恐ろしい女なんだ。
九条が片手の神剣を素早く振って、腰にぶら下げている鞘にしまった。
「ぐぁ...はぁはぁ、はぁぁ」
俺は剣を持ったまま、地面に倒れる。
上半身の服が、汗でぴっちりと身体に密着している。
砂の地面に顔を着けることを全くためらわない。
「どうした? こんなもので無動斬撃刃を使いたいなんて、甘々過ぎるぞ」
「いやぁ...はぁはぁ...使いたいとは言ったけど...この練習法はあまりにも」
「なに弱音を吐いている...神剣を避けながら、私に認識の出来ない速度で剣を十回以上振るだけよ」
九条は簡単に、いとも単純に言った。
でも普通の身体の構造をしていたら、九条の様な動きは出来ない。
それでも、俺は命じられた事を成し遂げるためには仕方がない事なのだ。
成し遂げねばならない...だって、俺は知ってしまったから。
「さて、息も整っただろ? それじゃ、まだまだやるぞ...」
「おっけ。 よし来い!」
俺が少し余裕を見せると九条は、全くの手加減を知らずの勢いで切り付けてきた。
船から降りた後~
「待っておりました」
なんて綺麗な人なんだろう。
目元は布で隠れて見れないけど、その上からでも綺麗な顔をしているのがわかる。
「どうされました?」
「あ、いや! な、なんでもない」
将軍である彼女は、口元の表情を変えずに、俺に手を差し出した。
俺はその手を強く握る。
なんてやわらかい肌なのだろうか。 しかも吸い付いてくるようだ。
「ちょっとラズ? デレデレしすぎ...」
「わ、悪い...」
俺の斜め後ろにいた美乃が、顔をプクーッと膨らませていて、将軍の後ろについているハルカからは殺したそうな視線が飛んできていた。
反射的に俺は手を後ろに引いた。
「あら?」
将軍様は口を開けてキョトンとしてしまったことに、俺は自分が粗相を犯してしまったと気付く。
「わ、わる...」
「申し訳ありません将軍様...私がこんな時にラズを驚かしてしまい」
俺の代わりに、美乃が頭を下げる。
え? 美乃って、謝れるの!?
そこに一番気がとられて、肝心の俺が将軍に謝る機会を逃してしまった。
「どうぞ心配はなさらないでください。 私なら大丈夫ですので」
「しかしそれでは...」
「将軍様が大丈夫と言っておられるのだ」
...九条?
九条は慎ましい表情で、将軍様に跪いた。
「あなたもいたのですね。 それでは皆様...」
うん? なんかあそこの草むらが揺れたような。
「ラズ様?」
「あ、いや...なんでもない」
将軍様は振り向いて、馬車に向かって歩き出す。
「そうでございますか...」
「この後皆様には、宿屋を手配していますので、そこで一日を過ごしてください...あ、九条様は...」
ハルカが九条に寄って話しにいった。
俺が一歩前に歩き出した時、将軍様がくるっと振り返って、俺の耳で囁いた。
「この後、あなた様は私の部屋に来て下さい」
「え?」




