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あらゆるスキルの保持者、創造と破壊の魔術 ~俺だけ悪魔~  作者: abaudo:アバウド
神詠の図書の記録
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一定の時の価値

一定の時の価値

abaudo;アバウド


私達は三人は、授業中に出された特別課題を休み時間の間にこなし、今は全ての行事が終わった放課後、罰の雑巾がけをする為、三人で掃除の用意をしていた。

聖徒の皆は、私の恋路を手伝ってやるとか、ありがた迷惑な事を放課後にするそうだ。

私の事は私一人で考えさせてほしい

っていうか、みんな暇すぎよ...

長い廊下の壁に、奥へ奥へと続いている窓から茜色の光が漏れて映っている。

私は一人、掃除道具の詰まった部屋を出て、黄昏て空を窓から見つめ、何処か遠くを見ようとした。

だが、いくら望んでも、いくら見つめていても、そんな遠くは見えなかった。

自然とため息が出て、自分のため息なのに...そのため息は氷のように冷たい。

「メグミ、早く掃除終わらせよう?」

餅付さんのいつもの声が、私の中で明るく変換される。

常に無表情を纏って、それでいて美しい彼女が、やけに楽しそうに見えた。

いつの間にか、私は彼女の事を認めている。

最初の頃とは大違いのよう。

今はシリアと同じように...

「どうしたの? メグミ?」

餅付さんの後ろから本当にシリアが出てきた。

「って言うか、さっきからなんで下の名前で呼んでるの?」

最近全く二人が私の事を名前で呼ばなくなっていたのに、今になって優しく名前呼びをしてくる彼女たちに、少し苛立ちを覚えた。

「いやぁ、だって私達三人でいる時間もう長いし? しかも周りに誰もいないから、別に名前呼びでも恥ずかしくないかなあって思って...えへへ」

餅付さんは全く笑ってないのに、私には元気に笑っている女の子の姿が見えた。

そんな可愛い餅付さんに、私は少しだけ心を開いて...私も彼女たちと同じように、餅付さんに名前呼びをちょっとだけしたくなった。

「餅付...沙奈...サナちゃん、私もサナって呼んでいい?」

なんだか恥ずかしいけど、言いたくなってしまう。

彼女の事を名前呼びするのは、むずがゆい気持ちだ。

餅付さんは顔を真っ赤にした。

そして顔を隠した。

「...ちょ、メグミ...やめて欲しい...いや、やめて欲しくはない...けど、恥ずかしすぎる//」

「ふふっ、私もサナって呼んじゃお...サナ、サナ、サナ...うん! やっぱりこっちの方が響きがいい」

「ちょっと、シリアまで...名前呼びされるのは、恥ずかしい...」

「えー、別にいいじゃない。 サナだって私の事“シリア”って呼んでるんだし...」

シリアは自分のご令嬢スキルをふんだんに使って、見たこともない攻め方を餅付さんにした。

「ね? サナ...いいでしょ? 私、餅付さんの事、サナって呼びたいな」

私もシリアの勢いに乗って、今まで素直になれなかった分、少しだけ調子に乗って言ってみた。

「え! メグミまで...えぇ...そんな、下の名前で友達に呼ばれたこと無いし」

焦りに焦りを重ねて、何度も言葉を詰まらせながらも彼女は、“表情を変えなかった”。

だが、本当に困っているのか、眉だけは八になっている。

どうして彼女が表情を変えないのか、私にはわからないけど、笑わない彼女でも私は充分。

何時に無く真面目な重さを出したシリアが、彼女に寄り添っていった。

「サナにどんな悩みがあって、たとえ伝えられない様な事があったとしても、私達は絶対に味方になるから...ちょっとずつで良いから、教えて欲しい...それが間違っていたら正すし、間違ってなかったなら、私たちが心強い仲間として一緒に戦うよ」

どんどん話が脱線していっているけど、シリアはやっぱりすごいな。

サナが窓に目を向けると、空に揺れていた雲はないが、太陽はまだこっちを見てくれている。

「やっぱり、シリアは凄いな」

外を見たのと同時に、サナは呟いた。

「私が消える雲なら、シリアは太陽なのだと、勝手に妄想をしてしまった」

サナの言葉に、私も同じような事を思っている。

「シリアは目に見えない所さえ凄いけど、私は目に見える所に凄いことはない」

「でも、私は輝けなくても努力はする」

その時、輝かしい瞳のシリアが、情熱を言葉にするように立ち上がって言った。

「私はたまに自分のちっぽけさが恥ずかしいと思えるけど、それに釣り合うぐらいいい所がある」

シリアの力強い視線に圧倒されて、私はさっきまで考えてた不安やら苛立ちやらが、全てスッキリ吹き飛んだ気がした。

初めはブルーだった気持ちも、なんだか和らいだ感じがした。


その後、シリアが気晴らしだと言って、皆で神詠の図書探しが始まった。

サナもすっかり元気を取り戻して、サナって呼ばれることにも慣れていたようだった。

「これじゃ効率が悪い...三人で別れて探そう」

丁度、十字路が見えた時サナが案を出した。

当然、私もシリアもその提案を受け入れ、私が左、シリアが正面、サナが右を探しに行くと位置的に決まった。

そして三手に分かれ、それから暫く長い廊下を走り続ける。

幸い、今の時間は誰も通らない様で、誰にも会わない。

奥まで進んで、やっと図書室の看板が見えた。

この学園には図書室がいくつもある。

その中の一つにやっとたどり着いた。

中に誰もいないよね?

私は中の様子を、ドアの隙間から覗き見る。

よし、誰もいない。

その時ドアを開ける直前、急にドアが重くなった気がして、中の様子をもう一度見ると、なんと血まみれの男が獣と中で戦っているのだ。

獣は恐らく虎?

虎は私の視線に気が付くと、竜巻を生み出して視界を遮る。

その竜巻が消えた時、その部屋に残っていたのは、一冊の本だけだった。

なに...今の?

白昼夢っていう奴なのかな?

中に入って状況をよく確かめに行くが、不思議な事にこの一冊の本というかノートだけが残っていたのだ。

辺りの棚には何も入っていない。

床にポツンと、整えられて置かれている。

もしやと思い、私はその本を拾った。

この本...こっちが表かな?

私がそうやって本の中身を開こうとした瞬間、後ろから声を掛けられる。

「やぁやぁ...ここで何してるの?」

「ひゃっ!」

だ、誰? あれ、似てる? いやでも違うかな。

後ろに立って話しかけてきた女の人を見た瞬間、私は頭にある人に似てると錯覚した。

「あぁ、そうだったね...自己紹介がまだだった」

女の人は咳ばらいをして、一回つま先立ちで背伸びをした。

「私は世界一強い...胡玲だよ!」

ふ...フーリン?

「その様子じゃ、全くわかってないようだね...まあいいや。 はい、その本...返して」

「返して?」

フーリンと名乗る女性は、私の持っているノートを指さした。

「いや、でもまだ神詠の図書かわかってもないし...」

「それは神詠の図書であってるよ...でも、どうせあなたちじゃ読めないからね、はい」

そう言って手を差し出した。

でも、これをそう簡単に渡すわけには...いや、でも返してって事は、元々この人のもの?

「ん~...じゃ、その物語の中に一つだけ読み上げてあげるから、それを渡して、ね?」

フーリンさんは私から強引に奪い取ると、その場で適当に選んだページを読み上げる。

「錬金術...それは人ではない。それは生物ではない。それは物ではない。

それは神聖では無く、邪像でも無い。

生まれたのは太古であった。

あらゆる化学を進化させた者が、限界を示すために起こした。

称賛されて、否定されて...

それは誰の為でも無く、勿論自分の為でも無かった。

死に場所を探した、欲のない物が考えた。

そして、滅亡した。

全てが傾き、変わった」

この話を聞いた時、一瞬私の中で何かが崩れていった。

多分、私は今、酷い顔をしているだろう。

フーリンさんは、窓から飛だし、天空へと消えて行く。

「それじゃ、さっき私が話したことは、誰にも言わないでね」

なぜだろう。

私はその場で、絶望という高台から落とされた気がした。

そして私は、この時の出来事が夢なんだと思うようにした。

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