魏樂と日欄虞と黒蓮堂(着航)
魏樂と日欄虞と黒蓮堂
abaudo;アバウド
「みんな集まったわね...それじゃ、世界情勢について少しだけ話すわ」
俺と九条は真剣に、美乃とおっさんは間抜けた顔で鼻をほじりながら話を聞く。
ハルカは俺達全員の前に置かれた黒板に、わかりやすくまとまった文字やグラフを並べていく。
「えーっと、このグラフで見たらわかると思うけど、日欄虞と魏樂の間には小さな島があって、その島での鉱産物の取り合いが始まったわ」
夕照石...夕日の様に輝く赤い鉱石。 内に大量の魔力を秘めており、魔力の密度が高いほど透けるその秀麗な見た目は、多くの富豪に好まれ取引がされる。
「この鉱石が非常に高値で取引されることから、大争いになってね...何せその島には大量の夕照石が取れるし、新種の魔物まで出るとか噂が出まわっちゃって...一番双方の勢いが激しい時なんか海が割れるほどだったわ...」
俺はこの数日と言うか、この船に乗った時にもう感ずいていたが...ハルカって話好きだな。
だって話している時のハルカ...スゲー楽しそうだし。
まぁ、聞いてるこっちも楽しいからいいんだけど。
「でも、将軍様が変わって今の将軍様になった時、その将軍様が直ぐにその島の権利を渡しちゃってね...そりゃあその時国民には非難されたわ。 でも、その...スカッとしているというか、なんていうんだろ...素直な所が、今の将軍様のいい所で...まぁ、その将軍様のおかげで今回は助かったのよ、皆も感謝すべきよ...」
あー、なるほど。
ハルカって、その将軍にベタ惚れか。
あの時、俺たちをマジで殺そうとしていたが...あれがスパイだって事がバレれない為の演技。
将軍様に絶対に恥をかかせないという忠誠心に基づいたものだと考えればうなずける。
するとハルカは話が脱線して言っていることに気が付いたのか、顔を赤くして一度咳ばらいをし話を戻す。
「...えと、そのつまり今の将軍様のおかげで戦争が治まり、遂には先日の対談で国交が完全回復したわ」
鼻をほじっていたおっさんがいきなり手を上げた。
「一つ訊いていいか?」
「なにかしら?」
「その...日欄虞には...」
おっさんは何か気持ちの悪い笑みを浮かべる。
「うへ......かぁわうぃいこって...ずずっ...い、いるのか...へへ」
息を荒くしながら何訊いてるんだ...このおっさん...
案の定、この場にいる全員の女子に軽蔑の目を向けられる。
だがおっさんは、その視線が嬉しいかのように喜んだ。
そんなおっさんにハルカは、優しい笑顔で腹に五発入れた。
「...眠っててもらえるかしら?」
「ぐえぇぇぇぇぇぇぇ」
見事おっさんは沈着し、次にハルカは俺に視線を向けて来る。
「な、なんだよ?」
「いいえ...もし変な事言ったら、このおっさんみたいになるってことを視線で伝えて見ただけよ」
「...ハハ...そうですか」
流石に俺もこの場ではふざけない様にと、魂に刻印された。
「もうそろそろ着きますよぉ!」
操縦席の船員が窓から身を乗り上げて言った。
船の向かう方に確かに大きな島が見えて来た。
その島の所々で小さく光る斑点が見えている。
あれが日欄虞か。
「...まぁ、まだ話足りないけど、各自着港の準備をして...後、将軍様には絶対に粗相がないように!」
「「は~い!」」
そう言って皆、自分の部屋の方面に向かっていく。
遠い海の向こう、そして日欄虞の山の向こうに、微かに太陽が身を出している。
その美しい風景と共に、俺たちは日欄虞に着いたのだった。




