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魏樂と日欄虞と黒蓮堂(出航)

魏樂と日欄虞と黒蓮堂

abaudo;アバウド


「まずは黒蓮堂の説明をするわ」

ハルカを囲むように一同は座って、中心に立っているハルカは勇ましい恰好で話を始めた。

「黒蓮堂は、人間...悪魔して悪魔ならざるもの。 悪魔を裏切って人間と交流し、聖にひざまついた愚か者たちの集団よ」

その実を知らなかった全員が、顔を見合わせてざわついた。

「ったく、前から変な連中だと思ってたが、まさか人間と繋がりがあるとはな...」

そう言えばあいつら、聖水だとか言って飲んでたな。

悪魔がそんな事をすれば自殺行為なのに、わざわざあんな事をするという事は、恐らくハルカの言っている事は本当だ。

ハルカは一つ咳ばらいをして、床を蹴って一同を静まらせる。

「話は最後まで聞くのものよ?」

そしてもう一度咳ばらいをする。

「...そして私が得た最高の情報としては、彼らは...“錬金術”を研究してるわ」

「は!?」

衝撃で思わず声が出てしまった。 変な冷汗が止まらない。

「どうしたのかしら? この豚が、話は最後まで聞くと教えたはずよ?」

「いや、その...錬金術って...」

「錬金術...」

俺の真後ろにいる九条が、真剣な声で話し始めた。

「とある狂った人間の学者が、天と地を結ぶ...とか言って作り上げた、とんでもない力よ...」

「あら、よくそんな情報を知っているわね...そうよ、錬金術という力は、大昔にこの魔界を作り出したとんでもない力...今でこそ無いと言われてる術だけど、かならずその力はあるわ...ってどうしたの?」

ハルカは俺の事を怪しい物を見る目で、静かに前に立った。

「...さっきからあなた...」

「ねぇ、ハルカ...錬金術の事なんだけど、もっと詳しい情報はないの?」

俺を心配してか、美乃が助け舟としてハルカに質問をする。

一瞬怪しげに思っただろうが、ハルカは気を取り直して質問に答えはじめた。

「そうね............これはただの推測なんだけど、錬金術はこの世にある魔力じゃ発動できないかもしれないわ...かと言って、人間が使うただの聖力でも使えないはずよ...」

魔力も聖力も使わない?

「じゃあどうやって動か...」

「いい質問ね、それはエルフの力よ...」

「「エルフの力?」」

皆して首を傾げた。

「そう。 メレイドの伝説では、“この世の対立した力がぶつかり合い、もう一つの強大な力が牙をむく”と書いてあったわ。 私はあまり伝説や伝承に興味はないけれど、調べれば調べるだけ情報の出て来る伝説で、行きついた先がエルフだったわけ...メレイド伝説は、色んな解釈が出来るけど、私の中ではこの説が一番濃厚ね」

妙に楽しそうに話すハルカが、今度は深刻な表情をした。

「大事なのは、黒蓮堂の奴らがその力を手にして、一体何をしようとしているかよ」

「あの、一つ訊いていいか? もし黒蓮堂の連中ではない奴が錬金術を持っていたらどうするんだ?」

ハルカは暫く考えて、うーんと声を唸らせて言った。

「無理ね...そもそもスキルの概念としては、他人から受け継ぐ物よ...もしこの世界の片隅に錬金術所持者がいたとしても、錬金術を作った学者と同じ末路を辿って、とっくに死んでいるわ」

「でも大昔の学者は錬金術を作ったって言ったよな、それはどうやって?」

「それを黒蓮堂が研究しているのよ...そんな黒蓮堂でもわからない様な事を、ただのスパイである私が知っているわけないじゃない」

その時、船が大きくぐらつく。

「なるほどね...了解了解ぃ!」

操縦席の上に赤いチャイナドレスを着た、あの時の女性が物騒な矛を持って笑い叫んでいた。

「あ、あの時の!」

美乃がそうやって手を振ると、彼女も美乃に対して手を振り返す。

ハルカは、まるで自分を疑っているかのような顔をし、更にぶるぶると何度も震えていた。

「胡玲!?」

「あー。ハルカっち、話は聞かせてもらったよ...いやぁ、まさかスパイだったとはねー...まぁ、いいか、ハルカっちは大切な友達みたいなもんだし、上には黙っておくよ...」

彼女は、遂に膝を地面につける。

何かが彼女を苦しめている様に見えた。

「でも、錬金術には関わっちゃ...だーめ!」

その時、彼女の目から涙が零れ落ちた。

「じゃね、それじゃ行ってらっしゃーい...」

「え? ちょと、お礼言わせて?」

美乃が呑気に近づいて行くと、彼女はフフと笑って、空へ飛びあがって行った。

「あ、出航!」

空に飛び上がった彼女は、そう呟いた。

そしてまた、こうも言っていた。

「さぁ、悲劇を...見て回りなさい...自分の目でね...え・い・ざ・き・くん///」

次回、魏樂と日欄虞と黒蓮堂(航路)

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