胡玲
胡玲
abaudo;アバウド
ハルカの言った言葉が、頭の中で反響する。
「は?」
「聞こえなかったのかしら...それとも、あまりの頭の悪さに言葉を理解できなの? この豚が!」
「...」
ハルカは頭を掻きながら、咳ばらいをして反省の顔をする。
「ひ、日欄虞幕府・菊峯様 直通陰部隊、第一課偵察スパイ隊長...維瀬 遙よ」
凛々しい立ち振る舞いで、硬い表情の中には、たっぷりの自信が詰まっている様だ。
男はまた葉巻を取り出し、笑い声を上げながら言う。
「そっちのとこのキクミネ様がうちの王を怒らしてくれたおかげで、民は皆大変だったよ」
遙はため息を一度つくと、ギロリと強い眼差しで男を睨みつける。
「...ふっ、冗談だよ...まぁ、結果的に仲直り出来たからいいじゃないか...」
「ふん! 最初から変な事を、私の前では言わない事ね...これだから偉そうな奴は」
遙の言った言葉に男が反応して、静かに声をかける。
「なんだ、俺と殺りあいてぇってのか?」
「私とあなたの個人的な戦争...殺し合いならしてあげてもいいわ...ただし、私と対等に戦える相手なんて、神の力を持った猛獣ぐらいしかいないけどね」
「はっはっは...その勇気と自信、砕いてやるよ」
正直俺はこいつらを信用したくない。
でも多分こいつらに頼るしか、他に道はないだろう。
最悪な奴らを仲間にしなきゃならないのか...
俺は絶望感と虚無感でいっぱいになって悲しかった。
「ん? ちょっと待て、仲直りとはどういうことだ?」
九条が不審な顔をして、二人に聞いた。
すると、忍者の者たちが、焦りを込めて言う。
「真耶お嬢様...実は日欄虞と魏樂は、休戦協定を結び、黒蓮堂および人間軍の喰い止め等の協力関係であります」
忍者達は頭を下げて、謝罪をした。
「ふむ。 そうだったのか...」
いや、ちょっと待て...だったら俺達、逃げる必要とかなかったんじゃないか?
俺と美乃はともかく、九条の立場があれば自然と出られたはずだ。
「それと、謝らなければいけない事がございます」
「...なんだ?」
九条は組んでいた腕を下ろして、忍者を見て聞いた。
「勝手な事に、我々たちはお嬢様を試させていただいていました...大変、申し訳ございません...」
「うん? それは一体どういう...ことだ」
以外ながらも落ち着いた様子でいる。
「この世界は弱肉強食...この人たちの部隊に入るに相応しいか、確かめさせて頂きました...」
「そうか...その、それはいいんだが...私の切った者たちは、どうなったんだ?」
九条は優しく、それでいて威厳を一つも零さない。
そんな九条の表情に、一瞬のぶれがあるかのように悲しさが表に出て見えた。
忍者達は、そんな九条の表情を見てか、迷いを見せて、結局首を横に振っただけだった。
「そうか...すまなかったな」
「いえ、我らこそ...無礼を働いてしまい、申し訳ありません」
「いいのだ」
悲し気な表情が、妙に儚く見えて、同時に美しくも見えた。
「全部こわれちゃえ!」
その時、美乃が壁を突き破って俺に激突して来た。




