兵を従える者
兵を従える者
abaudo;アバウド
丸焦げになった黒服の男を通り越して、もうそこにある出口を見て、安堵していた。
「よし、さっさとここを出るぞ!」
やっとここから出れる。
その時、出口の寸前の所で、足元が崩れた。
「...はぁ!? またかよ」
そして俺たちは、落ちた。
「役に立たない野郎達め...俺が直々に来てやるわ」
筋肉もりもりで厳つい顔をした濃い髭の男が、俺たちの事を軽蔑した目で見て来る。
そして、男が息を吐いた瞬間...とんでもない圧が積もった。
その瞬間、誰も動けなくなる。
俺は目だけを動かして、辺りを見回す。
...そう言えば美乃がいない。
「み...」
「口を開くな」
男の暗くて静かな声が、俺の体を地面に落とした。
鑑定眼を使って、男のステータスを見た。
しかし、何故か「除外」の二文字だけ見えて、ステータスも何も見えず、白い画面だけになった。
何十もの兵が周りに集まってきていた。
その兵たちは俺たちを見て嘲笑っている。
物凄く悔しい...俺たちは自己防衛の為に戦って、今までも自己防衛の為に抗っていた。
足掻いて生きていた俺が、こんな所であっさりやられるなど...いやだ。
「す...」
「んっ!」
更に俺の圧し掛かっている重力が重くなる。
「...」
声が出ない。
顔が潰されそうだ。
俺の目の前が、緑の閃光でいっぱいになる。
その時、走馬灯の様に目の前が光って、瞬きをするとセラが俺に話しかけて来た。
母も一緒だ。
「おかあさん...セラ...」
なんてのどかな景色なんだろう。
居心地がとてもいい。
「ラズ? 最近、調子乗り過ぎじゃない?」
無感情じゃない、いつも見ていた明るいセラの声。
「そうよラズ...あなたの決心は何処にいったのかしら?」
囁く様な母の声。
両方とも懐かしい...
「でも、俺も一応頑張ったんだよ?」
「あなたなら、もっと頑張れるでしょ...ふふ」
ふふって...本当に母は陽気だ。
「それにラズ、あなたは特別なのよ」
いつもはしない、真剣な顔をした母が、俺を優しくハグして言った。
セラも一緒にハグをしてくる。
「私にとっても、あの人にとっても、あなたは特別...だから」
母とセラは俺を離して、神々しい天に舞い上がっていった。
「待って...行かないでくれ」
「大丈夫、私たちは待ってるよ...あなたは頑張れる人だから、きっとここまでたどり着ける...」
言っている意味の理解が出来ない。いいから待って...
俺の悲痛の叫びも、声に出なくなってしまった。
セラ達はその言葉を最後に、俺の走馬灯の様な物は、泡のように消えてしまった。
<無詠唱・魔道感覚>
「俺のスキル...全部解放して、終わらせてやる」
身体には硬くて青いシールドを展開させて、俺の周りには鎌なり火の矢なり、水なり風なり閃光なりと戦闘に使える殆どのスキルも展開した。
次から次へと込み上げて来る魔力と力が、俺を支配し始めた。
視界では見えない魔力の通り道が、俺にはわかる。
魔力が俺に到達するまでのルート。
「仙岩」
小さな岩が、俺の心臓に向かってきている。
その一コンマのスピードでも、予知すれば容易く避けられる。
「次はこっちだ」
俺が敵を冷たい目で睨みつけた時、数十の敵と厳つい男に直撃した。
辺りは蒸れて舞い上がる業火に見舞われて、見るに堪えない情景と悲鳴が聞こえて来る。
紅い...あの日と同じだ。
「まだだな...それじゃ俺は倒せないぜ」
葉巻をくわえた厳つい男が、俺の真っ正面に立った。
「九条達が苦しそうに悶えている、スキルを解け」
「スキル? そんなものは知らんが?」
「知らないだと?」
確かに、魔道感知でもスキルを使っている様子が見えない。
まさかこいつ...




