ハルカ
ハルカ
abaudo;アバウド
「見えた、あれが魏樂よ」
あれから三日と経ち、俺たちはやっと大きな町についていた。
ダートの道の奥に、赤木や金で飾られた華やかな門が目に入る。
全長約8メートル近くあり、その門の前に数人の兵士が立っていた。
「止まってください。」
兵士の一人が俺たちの馬車に近づいてきて、俺と美乃の顔を一瞥し、その一瞬で道を開けるように命じた。
「申し訳ありません。どうぞお通り下さい」
そう言われ、俺たちは門を潜り、華やかできれいな街並みを目にした。
一方に繋がる道の遠くに、城の様なものが見える。
その道の横に、一定の間隔で道があり、民は皆笑いを隠さず楽しそうでいる。
平和でいい街並みだ。
「ねぇ、ラズ?」
「ん、どうした?」
「暫くここに留まることになりそうよ」
「...なんでだ?」
美乃はある一点を指し、そこに目を向けると、とんでもない光景が見えた。
「は?」
そこには大きな広間の噴水の前で、一人の暴君が周りの人を巻き込んで、一般市民に向かって喧嘩を申し込んでいた。 無理矢理にでも何か問題を起こそうとしているのか、今度は俺の乗っている馬車に向かって叫んでくる。
「ここは俺の土地だ、入ってくんじゃねぇ...おう? お前ら別の国から来た奴か? 丁度いい、一万ベラ置いていけ、そうしたら許してやる」
めんどくさそうなのに絡まれて、俺と美乃はため息をつく。
おおよそのステータスを見た所、あのダンジョンの小物ぐらいの力しかない。
「どうする? 美乃...」
「倒せば早いけど、後々面倒になりそうだし、それに相手は奴だけじゃないわ...」
「ん?」
美乃は指を指していく。
まずは暴君の後ろの方にいる厳つい男、次に困り顔をした一般市民、そして路地裏にいるローブを被った怪しい奴ら。
俺は一人一人のステータスを見ていくと、普通の一般市民より少し強いという事が分かった。
それに、ローブを被っている奴らに関しては、魔道具と言う物を所持していることまでわかる。
「何か、私達問題に巻き込まれたわ」
「まぁ、いいんじゃないか?」
「おい! お前ら何こそこそしてんだ! さっさと降りてこい」
そう言って暴君が馬車を蹴り上げる。
車体が傾く。 しかも木が割れた音がした。
これには俺たちも黙っていられず、二人で馬車を降りる。
「降りてきやがったか...さぁ、金だしな」
ったく、ここまで潔く言われたら、渡してもいいかなって思う。
でも、絶対あげない。 逆に修理費払ってもらわなきゃいけない。
「あらぁ、この部分凹んでる...しかも完全に折れてるわ」
「なぁ、この馬車っていくらするんだ?」
「知らないけど、多分三十万ベラぐらいじゃない?」
俺は暴君に向かって指を指し、
「そうか...払ってもらうぞ?」
と、堂々と言ってやった。
「は? お前死にたいのか?」
「お前じゃ俺を殺せないだろ?」
はっきり言ってこんな奴らは余裕だ。
狐鎌鼬や鳥の時と比べれば、なんの不安もない。
しかし肝心の暴君は、突然笑いあげて言った。
「おいハルカ! こいつ死にてぇってよ...」
暴君が後ろに振り返って、挑発気味に“ハルカ”と言う人物を呼ぶ。
すると、奥から青髪短髪の白い肌の女が入って来た。
「また...人を殺せる//」
薄い生地の透けた黒い服を着た“ハルカ”と言う女は、照れ顔で手のひらサイズのナイフを取り出した。
俺はステータスを見なくてもわかった。
完全な感でしかないが、こいつ...人を何人も殺してる。
それも数え切れないほどの人を。
隙は目立っているが、それを感じさせないような莫大な殺気。
目に近づいて来た冷や汗を瞬きで流すと、次の瞬間もうその女の姿は見えなかった。
...後ろにいる!?
そう思った頃には、首にナイフを突きつけられている。
「ラズ!」
「おっと、ねぇちゃん...動いたらこいつの首は無くなるぜ?」
美乃はその言葉を聞いて立ち止まる。
「まぁ、動かなくても切るけどな?」
暴君が自分の首を親指で切るジェスチャーをすると、女が首に押し当てていたナイフで、俺の首を飛ばした。




