魔界へと繋がるダンジョンと神詠の図書の謎
魔界へと繋がるダンジョンと神詠の図書の謎
abaudo;アバウド
「...終わった」
そう、私の人生は終わった。
聖徒全員が知っている男に、聖徒全員をまとめ上げる私が恋をしている事を、私は自分で、自分の口で言った。
「そ、そうか...じゃあ皆で、永咲を探すってのはどうだ?」
「それいいね!」
木下君や白垣さんは楽しそうに、私の今後についてみんなで話し合っていくように指揮をとり始める。
萩 怜火さんが、自分の眼鏡をして落ち着き、皆にばれないようにか教室を出ようとする。
しかし、木下君に捕まって、話し合いに入れられた。
「み、みんな? 後五分で授業始まっちゃうよ?」
とりあえずみんなが私と永咲の事について話すなんて、とても耐えれない。
そんな話、目の前でされちゃ死んでしまう。
「別にいいよ!」
なんで萩さんがそれを言うの!?
いつも静かにして、意見もあまり言わないような内気な子なのに...まさか! この子、恋に目が無い系の女子!?
「そうだよなぁ。 残り五分しかないのなら五分で決めちまえばいい」
決めちまえばいい? もしかして木下君は、暇つぶしに参加してない?
私の恋をそんなに甘く見ないで!
私は心では強く言ったが、声に出すことは流石に出来なかった。
「おいお前ら! さっさと準備しろぉ...五分前行動だ、こら」
「っち...しゃーねーか」
「そうね...」
「せっかく面白い話が聞けると思ってたのに...」
そう言って皆がぞろぞろ帰っていく。
ありがとう、いつも厳しいレジン先生。
厳つい極道顔なのに、生徒も聖徒も愛してくれるいい先生だと私は信じてたよ。
今は彼の姿が輝いて見える。
「あぁ? 何見てんだ?」
「ごめんなさい」
やっぱり怖...
流石にあの二人も...いない!
「お? コウサキ? 連れの二人はどうした?」
「ごめんなさい! 何処か行ってしまいました!」
「そうか...まぁ、いい」
良かった...怒られないで済んだ。
「後で三人、マリアード先生に報告しておくからな」
なんだ私まで!?
しかもマリアード先生って...学園一怖い女教師じゃん。
終わった。
「流石にお前まで行かせるのは可哀想だし、歴史の悪魔編を読んだら許してやる!」
「は、はい!」
私は急いで教科書を開け、予め予習して置いたページをめくり、分厚い本の中から瞬時に悪魔編を見つける。
そして私は、自分の為、なによりあの二人のせいで単位が落とされるのが許せないから。
「えぇ、悪魔は聖を崩落させ、故に自らを一番と、なんの許しもえず定める。 我らは神に、奴らは自分を信じた。 奴らを下にひっくり返し、我らは勝ったのだ。 奴らも我らをひっくり返すが、我らにそれは関係ない。 我らには聖の使いがいる。 ただ、奴らには悪の使いがいる。」
「よし、そこまでで結構だ」
「はい」
そう言って私は座ろうとした。
しかし、寸での所で私を止める。
「コウサキ、ここに出て来る“使い”とは何かわかるか?」
「えーっと...魔物、でしょうか?」
先生は頷き、悠々と話し始める。
「そうだ。 この魔物は、人間界と魔界で種類が異なる...人間界に近い魔物は、殆ど人間には害がない...しかし、下の階層に行くにつれて、人間に害のある強い魔物が多くなる。 これを“ジャクレア”と呼んでいる。」
皆はあくびをしたり、真面目に授業を受けて頷いたりしている。
「悪魔側は人間界に近づくにつれて、人間界の魔物に対して強いと感じることにしよう...そう、人間と逆だ。 じゃあ、これはどうだ? 魔人と人間の交配で出来た子供、“ハフメリア”はどうなると思う?」
ハフメリアだとどうなるか?
考えたことも無い質問に、皆一同戸惑う。
確かにどうなるんだろう。
色んな考察が出来るけど...どれも一概に合っているとは思えない。
「コウサキ...お前はどう思う?」
「はい、多分どちらにも耐性か何かを得て、どの階層も楽に進めるのではないでしょうか...それとも、どちらに近くても魔物が強く、近づくことも出来ないとか...」
「...凄く良かった。 ただ...」
ただ?
私は息を吞み込む様に、彼を見入る。
「ただ、どうとも言えない...そもそもハフメリアは伝説上の生き物としか言われてないからな」
急に明るい顔をして、彼は笑い始める。
えぇ...
なんか無駄に緊張したのが無駄に思えてきた。
「よろしい、座っていいぞ」
その時、先生の真横の扉が開く。
「すみませーん。 遅れました」
「ごめん...なさい」
餅付さんと、シリア...
「おい! お前ら、どこ行ってたんだ!?」
まぁ、そうなるよね...
「ごめんなさい、それよりこれって何て読むんですか?」
そう言ってシリアが片手に持っていた本は、“神詠の図書”と書かれた美しい色の本だ。
その本の中身が、前に近い私だけ少し見えた。
何あの文字...見たことない。
「お前ら、この本何処から“盗って”来た?」
先生が凄い形相をして、二人を睨みつける。
「さっきここ歩いてた男の人が落としたんで...」
「読んだのか?」
「いえ、読めませんよこんな文字」
「そうか...席に着け」
そう言って、先生は教室を出て行った。
その後、男の人の悲鳴が聞こえたけど、皆何も触れなかった。




