開幕の入学
開幕の入学
abaudo;アバウド
俺と美乃と赤髪だけしか乗っていない馬車は、南西の方角に向かって、進み続けている。
途中、馬車が大きく揺れたりしたせいで、美乃が酔ってしまっていた。
「ま、まだ? ...うぷっ」
「おいおい、ここでは絶対に辞めてくれよ...」
普段は強さが取り柄の美乃が、こんな弱々しい表情をしているなんて、普段からは考えられない。
俺は珍しいこの美乃の顔を目に焼き付ける様に見つめていた。
「あぁ~...もう、ぅ...だめ」
「我慢しろ、後もう少しだから」
「でも、なんか上がってきてるよ~」
その時、大きく車体が「ガタッ」と傾いた。
「う、ぁ...うる...ぐるるる...おぇ...ヤバッ」
「おおおおおお抑えろ?」
美乃が本気で口に手を当てるようだから、流石に俺もふざけてはいられず、焦ってしまう。
こ、これ以上は本当にヤバそうかも...
「あの、一応止めてもらっても...?」
「無理です」
何故この赤髪の人はキッパリと言えるんだ。
しかもこの清々しい顔...
まさかとは思うけど、楽しんでいるとか無いよな?
「大丈夫か? 美乃...」
「ふぅふぅ...ちょっと待って? ...ほ、ほほ本当にやばいから」
目に色がない!
息も荒いし、死にかけだよ!?
「一回、一回でいいですから!」
「あの...まじで、大きな声は...ぅ、やめて」
「ごめんなさい」
赤髪の人は、美乃を見て......清々しい笑みを浮かべる。
なんなんだ、その顔は?
一体何を考えている。
いや、この女。
多分...違う、絶対に今の美乃を見て優越感に浸っているよ!
なんて陰湿な…しかも、なんかさっきからおかしいなと思ってたけど、あの人毒性の何かを巻いてるし...
なんなら俺は耐性があると気付かれているのか、耐性のない美乃さんが完全な標的として攻撃される!
「あぁ...だめだ」
「あ、ああ!」
その時、俺はわかった。
この赤髪の女...Sだ!
「はぁ...やっと着いたわね...」
「なんか...いっぱい終わってるけどな」
「なんかスッキリしたわ!」
「俺は今、心がどんよりしてるよ!」
毒攻撃されったとはいえ...
普通あんなに...なるか?
まぁ、いい。
俺が水魔法使いを持ってて良かったとしか、今はいう事がない。
それに、美乃を責めても仕方が無いし...
「それじゃ、セントイル学園にようこそ」
俺たちの目の前には、大きな時計塔、それに繋がる壁。
そのすべてが高級そうなレンガで出来ており、一目して触れるのが怖くなる。
「ここが...か?」
「そうです、本当は魔王候補だけが入れる学園なのですが、今回は特別にあなた達を招待します」
「魔王候補!?」
「そうよ、ここには凄腕の悪魔たちが勢ぞろいしているの...だから、あなたにとってここに入る事は決してマイナスではないと思うわ」
美乃は何か見透かして目で言った。
確かに美乃の言う通り、マイナスな事は無いと俺も思う。
でも、何と言うか...俺が入っていいのか?
「あなた達は、一応招かれた客人の扱いです。とりあえず学園長の所まで案内させて頂きます」
「は、はい」
この時の俺たちはまだ知らなかった。
これから俺たちがさせられる任務の事を...
「あんたらには...日欄虞にいってもらう!」




